日本生命 統合報告書 2022 menu

コンプライアンス部門、リスク管理部門担当役員インタビュー

日本生命を取り巻く環境について、リスク管理やコンプライアンスの観点からお聞かせください。

新たな経営環境の変化が生じており、リスク管理やコンプライアンスの重要性が高まっている。

これまで認識していた低金利や少子高齢化の進展に加えて、直近では、新型コロナウイルス感染症の蔓延などを引き金とした世界的なデジタル化の加速やインフレ高進、さらには地政学リスクの顕在化など、新たな経営環境の変化が生じています。

また、こうした環境変化に加えて、当社ではグループ会社やビジネスパートナーとの協働も広がっている中、リスク管理において求められる範囲や深さが拡大しています。お客様への保障責任を長期にわたり全うしていく観点から、リスクへの適切な対応と、2025年度に保険会社に対する経済価値ベースの規制導入が見通されていることを踏まえると、健全性確保の重要性もさらに高まっていると認識しています。

このように、大きく変化する環境下においても、最も信頼される生命保険会社を目指して、既存事業の強化・高度化や、新たな商品・サービスや事業の展開に加え、サステナビリティ重要課題としても挙げているコンプライアンスやリスク管理に係る取り組みを通じ、お客様や社会からの期待に応え続けることが重要だと考えています。

昨年度は新型コロナウイルス感染症の継続に加えて、
地政学リスクの顕在化などが生じた一年だったと思いますが、
振り返っていかがでしょうか。

顕在化した課題への対応を引き続き実施。
資産運用面では予断を許さない状況。

今回の新型コロナウイルス感染症が発生してからもうすぐ3年になりますが、このリスクを意識しなければならない状況は当面続くと考えています。この間、世の中やお客様ニーズの変化にあわせて対面でのサービス提供が困難となる中、活動モデルにデジタルインフラ・ツールを導入することなどを通じ、お客様対応や接点づくりに取り組んできましたが、未だ道半ばの状況です。

また、昨年度後半のオミクロン株の蔓延により、非常に多くの方々が新型コロナウイルス感染症に罹患されました。その結果、当社への保険金・給付金等の請求も増加したことから、人員の追加配置等、支払体制を強化してきました。今後の新型コロナウイルス感染症の再拡大も見据えつつ、さまざまな事態においても、お客様へ適切に給付金等をお支払いし続けるための事務・サービス体制を、引き続き構築していくことが必要と認識しています。

一方、資産運用面では、ロシアによる軍事侵攻という地政学リスクが顕在化しました。ロシアへの投資額は、グループ会社を含めて僅少であることから、直近では、影響は限定的と認識しています。ただし、新型コロナウイルス感染症による供給制約に加えて、エネルギーや食糧価格などの上昇により、世界的なインフレ高進のリスクも視野に入れていく状況になったと考えています。各国の中央銀行も、インフレへの対応として金融引き締めに動いており、投資先企業への影響を含めた金融経済環境の変化を、引き続き注視する必要があります。

また、2022年1月、当社が利用する外部委託事業者から、当社のお客様の情報が漏えいする事態が発生しました。加えて、このことによる当社の一部サービスの停止もあり、お客様へご迷惑をおかけいたしました。この点、深くお詫び申しあげます。今回の事態を踏まえ、外部委託管理のさらなる強化に取り組んでまいります。

特に重要と考えているリスクと、それに対する取り組みについてお聞かせください。

コンダクト・リスク、新型コロナウイルス感染症、金融経済環境などに対し、先を見越した適切なリスクマネジメントを実施。

現時点において、私が特に重要と考えているリスクは、大きく四つあります。

一つ目は、コンダクト・リスクを含め、お客様や社会からの信頼を失うことです。あらゆる業務がお客様や社会につながっていくという価値観のもと、全役員・職員がお客様本位の業務運営をこれまで以上に実践し続けることが必要です。とりわけ、冒頭で触れたとおり、当社を取り巻く経営環境が大きく変化しています。常に、社会やお客様の価値観と当社の認識が乖離していないかをあらゆる領域で確認していくことが重要と考えています。

二つ目は、新型コロナウイルス感染症が及ぼす影響です。これは、保険関係収支や資産運用面、お客様への事務・サービスの提供に対しても大きな影響を与えうるリスクであり、今後の感染動向を注視する必要があります。引き続き、新型コロナウイルス感染症の蔓延により変化したお客様のニーズ・価値観を適切に捉えた商品・サービス提供に取り組んでいくことが重要です。

三つ目は、金融経済環境の悪化です。世界経済は、地政学リスクの顕在化やインフレ高進を受けた各国中央銀行による金融引き締めなどを背景に、株価・為替が大きく変動するなど、先行きの不透明な運用環境が続いています。引き続き、ポートフォリオの不断の見直しを通じた長期安定的な運用収益の確保に加え、自己資本の積み増しや、金融経済環境を踏まえた保険商品の開発・提供も重要と考えています。

四つ目は、グループ会社の事業環境等の変化です。国内外のグループ事業が拡大している中、カントリーリスクを含めたグループ各社の事業環境等を把握したうえで、グループ各社とともに適切に対応していくことが重要と認識しています。

そのほかにも、気候変動対応を含めたサステナビリティ経営の遅れ、医療検査技術の進歩、先端IT・デジタル技術の進展に伴う競争激化なども重要なリスクです。当社では、地震等の大災害も含めて、さまざまなリスクを洗い出したうえで、収支・健全性等への影響を分析・評価するストレステストを実施し、財務基盤の強化などの検討に活用しています。

引き続き、環境変化を機敏に捉え、先を見越したリスクマネジメントを通じて、グループ全体のより強靭な収益力・財務基盤の構築を図り、社会的役割をさらに発揮することで、あらゆる世代が安心して暮らせる社会の実現を目指していきたいと考えています。

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