日本生命 統合報告書 2022 menu

社外取締役対談 社外取締役対談

社外取締役による対談〜サステナビリティ経営、人材戦略、コーポレートガバナンス等、
今後の成長戦略について語る〜

当社は、幅広い経験・見識を有する者を社外取締役として招聘しており、客観的な視点から経営への監督や助言を受けることで、当社経営の透明性の確保に努めています。

社外取締役の三浦惺、濱田純一の両氏に、当社コーポレートガバナンスの取り組みへの意見、今後の発展へ向けた課題などについてお話しいただきました。

三浦 惺(社外取締役)
濱田 純一(社外取締役)

お客様本位の業務運営

Q1
中期経営計画において根幹に位置付けている「お客様本位の業務運営」を推進していくにあたり、何が重要だとお考えでしょうか。
A
あらゆる機会を通じて、お客様からの声をよく聞き、お客様から学ぶ。
三浦
まずは、総代会や総代懇談会、ニッセイ懇話会などを通して、お客様の声を聞き、そのうえで、グループ全体で、さまざまな商品ラインアップ、販売チャネルを揃え、お客様のニーズに応えていくことが重要でしょう。
さらに、デジタル化による顧客利便性の向上と、営業職員のコンサルティング力の強化に加えて、単に法令やルールを守るということではなく、真摯で誠実な対応により、お客様に信頼いただくことが最も重要だと思います。
濱田
役員・職員全員が「お客様に対する長期にわたる保障責任を全うする」という思いを持ち続けることこそが、「お客様本位の業務運営」の根幹だと思います。
その際に重要になるのが、近江商人の「三方良し」の考え方です。お客様のことを考えながら、自分たち企業のことも、世の中のことも考え、それら三者にとって望ましいことが重なり合い、しっかりとしたサイクルで回ってこそ、長期にわたる「お客様本位の業務運営」が実現すると言えるのではないでしょうか。
さらに、現場の営業職員の皆さんのコミュニケーション力のさらなる向上も重要だと考えます。その際、留意すべきは、「お客様から学ぶ」という姿勢、すなわち、お客様と向き合うことによって、自分たちも成長していくという意識を持つことです。そのうえで、現場と経営陣が、「お客様本位の業務運営」を軸にしっかり連携を取り続けていくことが必要だと思います。

サステナビリティ経営

Q2
もう一つの根幹として位置付けている「サステナビリティ経営」を推進していくにあたり、何が重要だとお考えでしょうか。
A
これからも社会に先駆けた社会課題解決へ取り組む。そして、機関投資家としてESG投融資を通じて社会の持続可能性への貢献が求められる。
三浦
日本生命は30年ほど前から、“ニッセイの森”での植樹、育樹活動での森林づくりなど、現在のSDGsにつながる取り組みを率先して行ってきました。現在、カーボンニュートラルを含めた気候変動の問題、生物多様性の保全の問題、ダイバーシティや人権の問題など、さまざまな社会的課題がありますが、今後も、ESG投融資なども通じて、社会に先駆けて課題解決に取り組んでほしいですね。
濱田
まず、生命保険事業そのものが、持続可能性という理念と深くつながっていますから、その事業を誠実に行っていくことが、社会のサステナビリティに貢献することになると思います。それから、日本最大規模の機関投資家として、ESG投融資をはじめ、社会のサステナビリティにつながる取り組みを行っていく責任があるでしょう。この二点は、日本生命という会社の大きな特徴だと思います。

人材育成

Q3
「お客様本位の業務運営」や「サステナビリティ経営」を推進するにあたり、どのような人材育成が求められるでしょうか。
A
未来を見据えることができる、タフでグローバルな人材が求められる。組織は多様な人材が集まることで強くなる。
濱田
長期にわたる契約を扱う日本生命の場合、まず、長期的視点から安定的な経営を行う能力を発揮できる人材が、基盤として必要です。それは、20年後、30年後の社会の構造、お客様の価値観の変化も意識しながら、次世代の保険のあり方を考えられる人材ということです。
また、タフでグローバルな人材も必要です。タフとは、挑戦ができる人材、グローバルとは、国際性だけでなく、「多様性」という意味であり、自分たちが日ごろ接していない人や社会と広く関わり合いを持つことで、自分自身を成長させ業務に反映させることができる柔軟性のある人材です。
「お客様本位の業務運営」という観点から、お客様のさまざまな悩み、不安もしっかりと受け止めて、お客様と一緒に考えていくために、こうした人材が必要だと感じています。
三浦
そのとおりですね。企業にとって、人材は最も重要な要素です。日本の企業では、これまでゼネラリストが求められる傾向にありましたが、変化が激しくイノベーションが求められている現代では、多様な人材が必要です。ジェンダー、国籍、そして専門性等の多様性です。日本生命でも、商品ラインアップが増えてきていますし、アセットマネジメントも手がけ、フィンテックという取り組みも進めています。専門性を持ちながら、同時に全体にも視野を広げることができる人材の育成が重要になってくると思います。
また、組織は、多様な人材が集まることにより、チームとしての力は強くなります。安定感のある人材だけではなく、尖った人材も必要でしょう。

相互会社ならではのコーポレートガバナンス

Q4
お二人の考えるコーポレートガバナンスとは、どのようなものでしょうか。
A
守りと攻めのバランスが大事。お客様・社会・企業の三者が調和し発展していく経営を行ってこそ、健全なガバナンスが実現。
三浦
約20年前、コーポレートガバナンスというものが議論されるようになりましたが、当時はリスク管理やコンプライアンスを主とする「守りのガバナンス」が中心でした。しかし近年、より多方面のステークホルダーに配慮しつつ、中長期的に企業価値を増大させていく「攻めのガバナンス」の必要性に主な焦点が当たるようになってきました。これは、どちらが主ということもなく、コーポレートガバナンスでは「守り」と「攻め」のバランスが大切だと感じています。
濱田
コーポレートガバナンスというと、まず、コンプライアンスが前面に出てくるわけですが、それはあくまでベースであって、その上にさらに豊かなガバナンスを目指すべきだと考えています。短期的な視点だけでなく、より長期的な視点で、お客様の利益、企業の利益、企業で働く人々の利益、社会の利益、それらが調和し発展していく経営を行ってこそ、健全なガバナンスが実現するのではないでしょうか。
Q5
相互会社ならではのガバナンスの取り組みについて、どのように評価されていますか。
A
お客様の目線は、株主以上に多様かつ厳しい。生命保険会社にとって、中長期的な取り組みが重視される相互会社形態は適している。
濱田
相互会社という形態は、「お客様本位の業務運営」を実現する基盤であり、日本生命の強みになっていると思います。お客様の目線は、ある意味、株主以上に厳しく多様です。経済的な合理性だけでは割り切れない要望や不安を抱えていらっしゃいます。この点、総代会や総代懇談会、ニッセイ懇話会などは、お客様が持っている多様な考え方や価値観、それらの変化の可能性といったものを日本生命がしっかり感じ取っていくための、非常に良い仕組みであると感じています。
三浦
同感です。一般論として、株主の意見というのは、どうしても企業価値、すなわち、株価を含めた短期的な成果を求めるものになりがちです。しかし生命保険会社は、本来、中長期的にさまざまなお客様に対して役立つ事業を目指しています。その点、相互会社である日本生命の場合、総代会で出てくるお客様の意見を踏まえて経営が行われることにより、必然的に、中長期的な取り組みが重視されることになります。ですから、相互会社というかたちは、生命保険事業に非常に向いているのではないでしょうか。
また、総代会は、地域、ジェンダー、世代等の面で多様な総代で構成されており、さまざまな意見を活発に出していただいていると感じています。

社外取締役として果たす役割

Q6
日本生命の社外取締役に就任し、気づいた点や認識された課題をお聞かせください。
A
取締役会はより多様性のある構成を目指すべき。リスクを許容する覚悟、20年後・30年後を見据えた議論を深めるべき。
三浦
社外取締役に就任する前は、日本生命に対して非常に安定的であまり変化のない会社というイメージがあったのですが、実際には、さまざまな新規事業や、海外を含めたM&Aにも取り組んでいます。デジタルの活用も他社に先駆けて進めている等、先進的な取り組みを積極的に行っている会社だと感じました。また、取締役会は、幅広い役員構成により、活発な議論がなされていると感じています。欲を言えば、女性を含めて、より多様性のある構成を目指していくべきと思います。
濱田
全く、同感です。また、私のこれまでの組織経験でも、社外の目というのは大切だと実感しています。組織の中の人間だけだと、どうしても現状を当たり前だと思ってしまいがちです。外からの目で評価を受ける、あるいは、アドバイスをもらうということは、組織の体力を一層高めることにつながるでしょう。
三浦
課題としては、今後、少子高齢化等に伴い、既存の商品・サービスだけでは、お客様のニーズには応えきれなくなるリスクがあります。それをカバーするために新たな商品・サービスを提供し、事業領域を広げていくことが必要でしょう。また、海外では、地域事情を勘案しつつ、通常のリスク管理はもちろん、カントリーリスクも負いながら展開しなければなりません。そうした中で、グループ経営やグループガバナンスが、ますます重要になってくると思います。
濱田
私は社外取締役に就任して、日本生命はリスクシナリオをとても丁寧に考えている企業だと感じました。ただし、同時に課題として、リスクを許容する覚悟がやや見えにくい、という印象も受けました。それはこれだけ規模が大きく安定した企業であるだけに、大抵のリスクには耐えることができてしまうからでしょう。しかしこれからの時代、もう一歩踏み込んで、どこでどのようにリスクを取るのかという議論をしておく必要があるのではないでしょうか。
今後、社会がどういう変化をしていくかが見えない中ではあるものの、20年後、30年後を考えた議論を、さらに深めていくべきではないかと感じています。
Q7
2022年7月に行われた、機関設計の変更(監査等委員会設置会社への変更)について、ご意見をお聞かせください。
A
さまざまな角度から議論を深めるとともに迅速性にも留意。経営と現場との連携と緊張感が重要。
三浦
今後、海外を含めた新規事業の展開により、意思決定が必要な事項がさらに増えていきます。今回、監査等委員会設置会社への変更に伴い、取締役会以外でも社外取締役全員で議論する場が設けられるわけですから、とにかくさまざまな角度から議論を深めていくべきでしょう。ただし、今回の機関設計変更の目的の一つは「変化に応じた迅速・果断な業務執行の実現」にあるので、あくまでも迅速性にも留意することが重要ですね。
濱田
機関設計変更後の取締役会では、やはり経営戦略の議論の深化と、業務執行の現場との間の連携と緊張感が重要になってくると思います。コミュニケーションはこれまで以上に大切になりますし、経営の方向性を決めていく取締役会の役割は、さらに大きくなるでしょう。そして、取締役会で経営戦略の議論を行う際、今まで以上に長期的な見通しをしっかり議論できる機会が生まれるのではないかと、期待しています。
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