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第7回 若返る高齢者 〜高齢者のイメージを捉え直そう

2017年4月3日

身体能力は約10歳若返っている

 日本人の平均寿命は戦後から毎年伸び続けていることは、よく知られていると思いますが、“若返り”ながら長生きできるようになっていることをご存知でしょうか。今と昔の高齢者の体力等を比較すると、今の高齢者が“若返っている”ことが、いくつかの調査研究結果から明らかとなっています。

 今の高齢者の若返りを明らかにした代表的な研究に、健康・生活機能・死亡の予知因子であることが知られている「通常歩行速度」を、1992年と2002年で比較した「日本人高齢者における身体機能の縦断的・横断的変化に関する研究」があります。その結果(数値)を見ると、2002年の高齢者は1992年の高齢者よりも“約10歳程度”若返っていることが確認できます。例えば、今75歳の高齢者は昔の65歳と同じ身体能力を有しているということです。

図表1 通常歩行速度の差異

 出典:経済産業省「長寿社会における成長戦略 参考資料」(平成23年6月22日、事務局)

出所:鈴木隆雄他「日本人高齢者における身体機能の縦断的・横断的変化に関する研究」
(第53巻第4号「厚生の指標」2006年4月、P1-10)より引用)

若返り傾向は近年まで続いている

 スポーツ庁が実施している「体力・運動能力調査」でも、今の高齢者の若返りの状況が確認できます。65〜79歳までの高齢者(男女)について、新体力テストの項目である「握力」「上体起こし」「長座体前屈」「開眼片足立ち」「10m障害物歩行」「6分間歩行」の総合成績を示す合計点の年次推移をみても、男女ともにどの年齢層でも毎年ほぼ結果が上昇してきています。

図表2 新体力テストの合計点の年次推移(高齢者65〜79歳)

資料:スポーツ庁「平成27年度体力・運動能力調査」より作成

高齢者のイメージを若返らせよう

 このように“いまの高齢者は若返っている”という事実から何を考えるべきでしょうか。様々な視点がありますが、年齢や高齢者に対する考え方(イメージ)を個人と社会全体が捉え直すことが必要ではないでしょうか。このことに関連深いこととして2017年1月、日本老年学会・日本老年医学会は「高齢者の定義と区分」について、画期的な提言を発表しました。以下のように、65〜74歳を「准高齢者、75〜89歳を「高齢者」、90歳以上を「超高齢者」として区分することを社会に提言したのです。

新たな「高齢者の定義と区分」

 この提言の背景には、日本の高齢者の身体能力の“若返り”が確認されるなかで、個人差はあるにせよ、特に65歳以上の人の中で比較的体力的に若く、活動的な人を高齢者と定義することやされることに違和感を抱いていた人が少なくないこと、また65歳以上の人を「一括り」に高齢者として定義することへの違和感が世の中に潜在していたことがあります。この提言は、実態を的確に捉え、そうした違和感を払拭する的確なものであったと思います。

 以上のことから、長寿化が進むのに合わせて高齢者の「若返り」も進み、必然的に活動的に過ごせる期間も延びていることを踏まえた高齢期の人生設計を行っていただくことが大事であることが分かるかと思います。お一人おひとりが抱いている高齢者のイメージを若返りさせながら、是非、自らも若々しい高齢期を過ごしていただきたいと思います。

(ニッセイ基礎研究所 前田 展弘)

筆者紹介

前田 展弘(まえだ のぶひろ)

株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員
研究・専門分野:ジェロントロジー(高齢社会総合研究)