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3分でわかる 大人のための長生き応援コラム

第5回 高齢期の「ゆとり」確保に向けて

2017年2月6日

「介護」への備え

 人生100年時代を生きていく上で、若いときから「備える」ことは重要です。何に備えるかは、前回(第4回)に述べた「お金」のことだけではありません。自分の「健康」のこと、「介護」のことなど、あらかじめ考え備えておくべきことは少なくないでしょう。今回は前回に引続き、高齢期を安心して過ごすために必要な「備え」について考えてみます。

 まず「介護」についての「備え」ですが、日本生命が行ったアンケート調査結果をみると(図表1)、「とても不安」「やや不安」と回答された方が全体の約67%を占めています。特に50代、60代の方、また女性は70%を超えています。介護に対して不安を持っている人が非常に多いことが確認されます。

図表1 将来の「介護」に対する不安意識(年代別・男女別)

資料:ニッセイ インターネットアンケート「介護」に関するアンケート調査結果(2016年11月9日)

 介護者(介護をする者)の年齢分布をみると、図表2の通り、「60〜69歳」が31%、「70〜79歳」が24.8%、「80歳以上」が12.9%と、60歳以上が7割近くなっています。高齢期を安心して、ゆとりをもって過ごすためには、自身の介護への備えはもちろんですが、親や配偶者などの家族の介護についても準備しておくことが重要です。

図表2 介護者の年齢分布

資料:厚生労働省「国民生活基礎調査(平成25年)」

 ここで、介護が必要になるきっかけについて確認してみましょう。図表3にあるとおり、男女で原因の割合が多少異なりますが、全体では(「その他不明・不詳」を除いて)、「脳血管疾患」が最も多く(17.2%)、次いで、「認知症」(16.4%)、「高齢による衰弱」(13.9%)、「骨折・転倒」(12.2%)が多い状況となっています。これらの原因を見たときに、「高齢による衰弱」など徐々に訪れるパターンは心の準備を含めて、比較的「備え」をしやすいところがあると思いますが、「脳血管疾患」や「骨折・転倒」など、“突然”介護が必要となるケースは、家族にとって準備ができていないことも多いのではないかと想像されます。できればあまり考えたくないことではありますが、いざ自身や家族の介護が必要になったときに、「どこで」「誰が」対応すべきか(できるか)、事前に家族内で相談するとともに、親の住んでいる地域の介護施設や利用できる介護サービスなどの情報をあらかじめ知っておくことも大切だと思います。そうやって「備える」ことにより、高齢期をゆとりをもって迎えることができるのではないでしょうか。

図表3 65歳以上の要介護者等の性別にみた介護が必要となった主な原因

資料:厚生労働省「国民生活基礎調査(平成25年)」

高齢期の暮らしの継続、自分らしい最期の実現に向けて

 また、他にも「備え」ておくことが望ましいこととして、「住まい」があります。例えば、エレベーターのない建物に住んでいた場合は、自分が高齢になって体力が低下してきたときに、日常的な困難が伴ってきます。また、子どもが独立して空き部屋が増え、大きな家が不要になるということも起こり得るかと思います。サービス付高齢者向け住宅など、高齢者向けの住宅や施設も多様に存在するなかで、最適な住まいに住み替えていくことを、元気なうちから考えておくことも大切です。

 次に、「移動手段」についても考えておく必要があります。特に地方などで、公共交通機関が少なく、自動車が日常生活に欠かせない人にとっては、自動車を手放す(免許を返納する)必要が生じた場合の対策を考えておくことが必要です。買物することを含めて自由に移動できることは、生活を営む上で大切なことですが、様々な理由でそれができなくなったときにどうするかは、個人にとっては大きな問題となります。利便性のよい所へ、早い段階で住み替えるということであったり、近年、高齢者の新たな移動手段として注目されている乗り物「超小型電気自動車」(カートのような車)を活用することなど、自由な移動手段の確保に向けて、あらかじめ考えておくことも大切です。

 また、「自分の意思や考えなどを家族などに残しておく」ことも「備え」の一つです。必要になるのは人生の終盤にはなりますが、その準備は早い段階に行っておくことに越したことはありません。認知症などによって、自分の意思を思うように家族などに伝えられないことがいずれ起こるかもしれません。終末期の医療措置のあり方や、葬儀の方法など、遺された人へ自分の意思を伝えることは大切です。例えば、近年普及している「エンディングノート」に記しておくなど、自分らしい最期を迎えるための「備え」も忘れないようにしたいものです。

 以上、ここでは一例の紹介に過ぎませんが、高齢期の安心した暮らしを継続するために、また自分らしい最期を迎えるために、早い段階から様々な視点からの「備え」を行っていただくことをお薦めします。

(ニッセイ基礎研究所 前田 展弘)

筆者紹介

前田 展弘(まえだ のぶひろ)

株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員
研究・専門分野:ジェロントロジー(高齢社会総合研究)