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3分でわかる 大人のための長生き応援コラム

第2回 何歳になっても人生はこれから!〜長寿社会での高齢者観

2016年11月7日

高齢者(高齢期)のイメージは?

 人生100年時代を“より良く”生きていくには、後半の人生である「高齢期」を“より良く”生きていくことが大切です。その「高齢期」について、あなたはどのようなイメージをもたれているでしょうか。そのイメージを“明るく”展望できるかどうかによって、歳を重ねることへの意欲(前向きさ)も変わってくると思います。

 内閣府の「年齢・加齢に対する考え方に関する意識調査(2004年)」をみると、「高齢者のイメージ」を聞いた設問に対する回答(複数回答)で最も多いのは、「心身が衰え、健康面での不安が大きい」(72.3%)となっています。

 また、高齢者(高齢期)を思い浮かべたときに一般的に想起されやすいことに、「仕事からの引退(社会的立場の喪失)」、「家族・友人との別れ」といった“喪失”体験も挙げられます。さらに、社会保障制度への不安等、残念ながら、高齢者(高齢期)に対し、ネガティブなイメージを感じる方も少なくないかもしれません。

 しかしながら、これらは高齢者(高齢期)の一面を見ているに過ぎません。まず高齢者と言っても、例えば、65歳と90歳とでは様々な違いがあり、同じ年齢でも、健康面や経済環境等の違いがあります。また、高齢者は、健康状態、経済環境、家族構成、経験やキャリア、価値観においても極めて多様です。

 また、高齢期を展望するにあたり、ポジティブな変化も多いことを理解する必要があります。高齢期には、「豊富な自由な時間」、「新たな生活(ライフスタイル)を選択・創造できるチャンス」「豊かな経験と資源を活かせる機会」などが得られるとも言えます。

 若い頃は、仕事や子育てなどに追われ、したいこともなかなかできない状況が続いたかもしれませんが、定年を迎えたり子育てを終えることでひと区切りとなり、どこに住むか、何をするか、どのように楽しむか等、新しい生活創造にチャレンジすることができるとも言えます。人生において新たな“獲得”とも言えるのではないでしょうか。

正しい高齢者観とは

 高齢者のイメージをネガティブに捉えてしまうことが少なくない背景には、高齢者の実態が多様であるにもかかわらず、ひとまとめにして考えられてしまうことが多いことがあります。

 加えて、認知症や介護問題などのネガティブな一面がメディア等に取り上げられ、強調されやすいこと、さらに、潜在的な高齢者や年齢に対する先入観「エイジズム」(ageism:Butler,R.N創作語)が挙げられます。(エイジズムは、歳をとることへの怖れに根ざしたもので、病気や死への恐怖などに由来するものと言われています。)

 このような背景を踏まえ、私たちは、“高齢者の多様性”の実態を正しく知ることも大切ではないでしょうか。(※1)(※2)

 国としても、高齢者観を今日的に見直すことを提唱しています。政府が制定する「高齢社会対策大綱」(2001年、2013年改定)あるいは、内閣府が発行する「高齢社会白書」(2007年版)によれば、“高齢者自身も社会を支える貴重な人材であるとの意識改革の必要性”を提唱しています。

 日本は世界で最も人口の高齢化が進んだ「高齢化最先進国」として歩み続けていますが、“ポジティブに高齢期を生きる”、この考え方が、自分自身の将来、また日本の未来にとって重要になっていくのではないでしょうか。

(※1) 古谷野亘、安藤孝敏編著「新社会老年学」((株)ワールドプランニング、2003年)、p22-25
(※2) 東京大学高齢社会総合研究機構編「東大がつくった高齢社会の教科書」((株)ベネッセコーポレーション、2013年)、p67

(ニッセイ基礎研究所 前田 展弘)

筆者紹介

前田 展弘(まえだ のぶひろ)

株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員
研究・専門分野:ジェロントロジー(高齢社会総合研究)