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3分でわかる 大人のための長生き応援コラム

第4回 人生100年時代の「お金」の対策

2017年1月10日

65歳までにいくら貯めればよいのか?

 人生100年時代を「安心して自分らしく」、より豊かに生きていくには何が必要でしょうか。その人により必要であり大切なことは異なると思いますが、ここでは、明るく豊かに長寿時代を過ごしていくために、生活するのに必要な「①備える」「②健康」、家族や社会との「③つながり」、そして「④生きがい」の4つのテーマを取り上げてみたいと思います。まず今回は、「①備える」の中でも、高齢期に備えるお金について、中心に考えてみましょう。

 “ゆとり”のある老後生活を営むためにはいくら必要かを聞いた調査結果をみると、月額の生活費として「35.9万円」(夫婦2人世帯の場合)という答えが確認されます(※1)。一方で、高齢者のいる世帯の月平均の実収入は「21.3万円」となっています(※2)。あくまで平均の数値ではありますが、それでも約「15万円」の開きがあります。個々の世帯によって必要な生活費もゆとりを感じる生活費も異なるわけですが、例えば、このゆとりのある暮らし(=35.9万円)を実現することを想定して、夫婦2人で65歳から85歳までの20年間そのゆとりを確保するために65歳時点でいくら必要かを計算してみると(※3)、約3500万円という答えが出ます。この金額を皆さんはどのように受けとめられるでしょうか。

 これから高齢期を迎える方の中には、「教育費や住宅ローンもあり、日々の暮らしで精一杯で、そんなに貯められない」といった方も多いのでは。実際、35-64歳の人に「高齢期に向けた『備え』ができているか」を聞いた調査結果をみると、3人に2人(67%)が“足りない”(少し足りない16.5%、かなり足りない50.4%)と回答しています(※4)。3500万円はあくまで一つの目安にはなりますが、老後生活におけるゆとりの確保に向けて、早くから準備しておきたいものですね。

(※1) (公財)生命保険文化センター「平成25年度生活保障に関する調査」
(※2) 総務省「家計調査年報(家計収支編)平成27年(2015年)(高齢者のいる世帯)世帯主の就業状態別1世帯当たり1カ月間の収入と支出」より、高齢夫婦世帯(夫65歳以上、妻60歳以上で構成する夫婦一組の世帯)の無職世帯を抽出」
(※3) (35.9万円-実収入21.3万円)×12カ月×20年間 ※運用利息などを考慮しないで単純計算したもの
(※4) 内閣府「高齢期に向けた『備え』に関する意識調査(2013年度)

ゆとりある老後生活を過ごすために
 〜金銭面でゆとりある老後生活で、精神面でもゆとりを確保〜

 では、高齢期のゆとりある生活のための資金の確保のために今から何ができるでしょうか。そのことを考えることが大切です。若いときからコツコツ「貯める(貯畜)」、また保険(個人年金等)などで「備える」ことを行っていくことは必要ですが、「貯める」「備える」以外の方法として何が考え得るでしょう。

 例えば、家賃や生活費等の支出を減らすというのもひとつです。また、“年齢に関わらず活躍し続けたい”、という方は、積極的に収入を増やすことでゆとりある老後生活の資金を確保できるかもしれません。実際、長く働きたいと思う人は増えています。「70歳くらいを過ぎても」が約3分の2、「働けるうちはいつまでも」という人は3割近くに上り(※5)、その一方、行政にとっても年齢に関わらず活躍し続けられる社会(=生涯現役社会)の実現は、重要な政策課題に位置づけられています。2016年度からは厚生労働省主導のもと「生涯現役促進地域」が拡大されつつあります(※6)。各自治体が中心となって、地域の中で高齢者が活躍できる場の拡大を進めています。2016年度は全国の15地域が事業実施地域として採択され、今後は全国に拡がっていくでしょう。

 こうした社会の変化に注目しつつ、一人ひとりが金銭的にも精神的にもゆとりある老後生活の実現に向けて早い時期から「備えて」いくことが、明るく豊かに長生き時代を過ごすことにつながっていくのではないでしょうか。

(※5) 内閣府「平成25年度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」
(※6) 前田展弘「生涯現役促進地域連携事業の本来の意味」(ニッセイ基礎研、2016.11.16)

(ニッセイ基礎研究所 前田 展弘)

筆者紹介

前田 展弘(まえだ のぶひろ)

株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員
研究・専門分野:ジェロントロジー(高齢社会総合研究)