1. 日本生命保険トップ
  2. 知る・楽しむ
  3. 新社会人のための経済学コラム
  4. 第146回 都内企業における2021年末のテレワーク実施率は56.4%

3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第146回 都内企業における2021年末のテレワーク実施率は56.4%

2022年4月28日

都内企業における2021年末のテレワーク実施率は56.4%

 新型コロナウイルス感染拡大への対応で、東京では「テレワーク(※1)」が急速に普及しました。東京都によれば、都内企業のテレワーク実施率は、2019年度の25.1%から2020年度の57.8%へ大幅に上昇しました。2021年も、緊急事態宣言の発令期間(2021年1〜3月、4〜6月、7〜9月)は60%台、それ以外の期間でも50%台と高い水準で推移しており、2021年12月の調査では56.4%となりました。(図表-1)

(※1) 情報通信技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと。自宅利用型テレワーク(在宅勤務)、移動中や移動の合間に行うモバイルワーク、サテライトオフィスやコワーキングスペースといった施設利用型テレワークのほか、リゾートで行うワーケーションを含む(一般社団法人日本テレワーク協会による定義)

図表-1 都内企業のテレワーク実施率(2021年)

(出所) 東京都公表資料をもとにニッセイ基礎研究所作成

 国土交通省「令和2年度テレワーク人口実態調査」(2020年度)によれば、雇用型就業者に占めるテレワーカーの割合は、いずれの地域も前年度(2019年度)から上昇しています。(図表-2左図)東京以外の地域でも、コロナ禍を経て「テレワーク」を導入する企業が増加している模様です。

 また、業種別にテレワーカーの割合をみると、「情報通信業」(66.1%)が最も高く、次いで「学術研究、専門・技術サービス業」(47.1%)、「金融・保険業」(34.9%)となっています。(図表-2右図)特に、「情報通信業」では、就業者の約3分の2がテレワークを実施しています。

図表-2 雇用型就業者に占めるテレワーカーの割合

(出所) 国土交通省「令和2年度テレワーク人口実態調査」をもとにニッセイ基礎研究所作成

テレワークの普及で変わる「働く場所」

 「テレワーク」が急速に普及したことで、「働く場所」が変わりつつあります。
森ビルの「東京23区オフィスニーズに関する調査(2021年)」によると、「フリーアドレス(※2)の導入状況」に関して、「既に導入している」との回答は、2019年の19%から32%に増加しました。

 また、CBRE「オフィス利用に関するテナント意識調査」によれば、働く場所(ワークプレイス)の形態に関して、「現時点(2020年10月時点)」では「全部固定席」との回答が最多(61%)でしたが、「今後の予定」では27%に低下し、「フリーアドレスと固定席環境が混在するハイブリット型」との回答が22%から34%に増加しています。オフィスへの出社人数が流動的となるなか、従来の固定席に変わってフリーアドレスを採用する企業が増加しています。

 また、通勤時間の削減や、執務環境が整っておらず自宅でのテレワークが困難等の理由から、自宅の近くで、「レンタルオフィス(※3)」や「シェアオフィス(※4)」、「コワーキングスペース(※5)」等のサードプレイスオフィスを利用する人が増えています。

(※2) 従業員が固定した自分の座席を持たず、業務内容に合わせて就労する席を自由に選択するオフィス形態。
(※3) 会議室などを共用部分に設置して共有し、専用の個室をそれぞれ持つ、いわば合同事務所のようなオフィス形態。
(※4) フリーアドレスでデスクを共有して利用するオフィス形態
(※5) オープンなワークスペースを共用し、各自が自分の仕事をしながらも、自由にコミュニケーションを図ることで情報や知見を共有し、協業パートナーを見つけ、互いに貢献しあう「ワーキング・コミュニティ」の概念およびそのスペース(コワーキング協同組合による定義)。

テレワークの利点と課題

 ところで、日本労働組合総連合会がテレワークで働いた人を対象に行った「テレワークに関する調査2020」によれば、「テレワークのメリットだと感じていること」に関して、「通勤がないため、時間を有効に利用できる」(74.6%)との回答が最も多くなりました。(図表-3左図)また、「テレワークによる生活面への影響」に関しては、「家族の会話が増えた」(29.5%)との回答が最も多く、次いで、「プライベートの充実につながった」(25.4%)、「趣味に費やす時間が増えた」(20.4%)との回答が挙がりました。(図表-3中央図)テレワークにより、通勤時間が削減したことで、家族との時間や自分自身の時間が充実したという人も多かったようです。

 一方、「テレワークのデメリットだと感じていること」に関しては、「勤務時間とそれ以外の区別がつけづらい」(44.9%)との回答が最も多く、次いで、「運動不足になる」(38.8%)、「上司、同僚とのコミュニケーションが不足する」(37.6%)、「業務の効率が低下する」(20.3%)との回答が多く挙がりました。(図表-3右図)

 テレワークでは、仕事のオンとオフの区別をつける難しさを実感している人が多いようです。また、パソコン画面を通じ連絡をとることが中心になるため、社内での気軽な相談や報告が難しく、コミュニケーションが不足してしまうことも課題となっています。先行研究(※6)でも、「テレワーク」の生産性について、「コミュニケーションの量」が重要な指標となるとの指摘があります。

図表-3 テレワークの利点と課題

(出所) 日本労働組合総連合会「テレワークに関する調査2020」をもとにニッセイ基礎研究所作成
(※6) 荻島 駿・権 赫旭『新型コロナウイルス以降の職種ごとの在宅勤務の持続可能性について』(独立行政法人経済産業研究所特別コラム、2020年5月)

おわりに

 公益財団法人日本生産性本部「働く人の意識に関する調査」によれば、「コロナ禍収束後もテレワークを行いたいか」という質問に対し、「そう思う」と「どちらか言えばそう思う」が合計で約8割を占めています。実際に多くの人が「テレワーク」を経験するなかで、業務上の支障を感じながらも、通勤時間がない、家族との時間が増えた等のメリットから、今後も「テレワーク」を取り入れた働き方を希望する人が増えています。

 以上の状況を鑑みると、コロナ禍収束後も、「オフィス勤務」と「テレワーク」を組み合わせた働き方が定着することになりそうです。「働く場所」については、自宅やサードプレイスオフィス、自社のオフィスの中でも、固定した自分の座席を持たず、業務内容に合わせて席を自由に選択して働くフリーアドレスの拡大が想定されます。

 新社会人の皆様には、自分自身で時間管理を行い、仕事とプライベートのメリハリをつけることや、社内の方と積極的にコミュニケーションを図ること等を心掛けて、フレキシブルな働き方に対応していただければと思います。

(ニッセイ基礎研究所 吉田 資)

筆者紹介

吉田 資(よしだ たすく)

株式会社ニッセイ基礎研究所、金融研究部 主任研究員
研究・専門分野:不動産市場、投資分析