第143回 子どもに身につけさせたい性質、日本では「従順さ」が51カ国中51位、「決断力・忍耐力」が51カ国中1位

3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

2022年1月18日

子どもに身につけさせたい性質、日本の特徴は?

 2021年3月、第7回「世界価値観調査(World Values Survey Wave 7)(2017年〜2020年)の結果が発表されました。(※1)世界価値観調査は、様々な国や地域において、人々の価値観や意識の変化を中長期に継続して調査する国際プロジェクトです。調査分野は政治観、経済観、労働観、教育観、宗教観、家族観など計290項目におよびます。

 子どもに身につけさせたい性質として、日本では、「従順さ」を重要とするとの回答率(重要度)が最も低く、51カ国中51位と最下位となっています。一方、「決断力・忍耐力」を重要とするとの回答率が高く、51カ国中1位になっています。また、「想像力・創作力」では日本は51カ国中4位、「節約心」についても4位、「自主性」は7位、「責任感」は8位、「利他性」は16位と相対的に高く、「マナー」についは29位、「寛容と敬意」は30位、「宗教的信仰」と「勤勉さ」では日本は50位となっており、重要とするとの回答率が低いです(※2)

図表1:世界価値観調査における日本の子どもに身につけさせたい各性質の重要度の推移

(資料)世界価値観調査第1回〜第7回の調査結果WVS Results By Countryより(※3)

 1981年から2020年までの時系列データからみると、日本では、「想像力・創作力」に関する重要度は1981年から上昇傾向にあり、「決断力・忍耐力」は上昇から横ばいになることが分かります。一方、「自主性」、「責任感」、「寛容と敬意」、「節約心」および「利他性」は1999-2004年の第4回調査を境に上昇傾向から低下に転じました。「勤勉さ」についてはやや上昇傾向も確認できますが、日本の順位はまだ最下位圏になります。「宗教的信仰」と「従順さ」は1990年から低下傾向にあります。

「勤勉かつ従順であるべき」という固定観念を払拭

 かつて勤勉、従順などは道徳や社会の規範として守られていました。しかし、時代の流れとともに人々の認識が変化してきました。それを裏付けるように、2011年11月、幻冬舎とトップアスリートが運営する「13歳のハローワーク公式サイト」で公表された中高生の「人気職業ランキング」の第1位は薬剤師でしたが、2021年11月の「人気職業ランキング」の第1位は外交官でした(※4)。国の代表として世界中で活躍し、堂々と自分の意見を述べ、発信するというところは中高生にとってかっこいい、魅力的だと感じているからでしょう。

「忍耐は美徳」いまだに健在

 普段の生活、仕事において、われわれはいろいろな局面で「決断力」が求められます。一例として、自然災害が発生した場合、避難するのかしないのかという決断は全く違う結果を導くかもしれません。「忍耐力」も災害時に重要な構成要素です。東日本大震災の際に、苦難を受けて立ち、自分の力で克服する被災者たちの姿勢が海外でも報道されていました(※5)。こうしたことから、今の時代においても、子どもたちの「決断力・忍耐力」が重要だと考える人が多いでしょう。今回の日本での調査は新型コロナウイルス感染症のパンデミックが人々の意識変化に与える影響を把握できませんでしたが、様々な制約を受ける中だからこそ、「忍耐力」がより必要とされているのではないでしょうか。

(ニッセイ基礎研究所 胡 笳)

筆者紹介

胡 笳(こ か)

株式会社ニッセイ基礎研究所、社会研究部 研究員
研究・専門分野:土地・住宅、中国不動産全般

Copyright © 日本生命保険相互会社 サービス企画部 文2021-394
今日と未来を、つなぐ。NISSAY 日本生命