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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第137回 「世界の人口における割合は32%?世界的に注目されるZ世代はなぜ「Z」と呼ばれているのか」

2021年7月1日

Z世代という言葉を聞いたことがあるでしょうか

 Z世代という言葉を聞いたことがあるでしょうか。1996〜2012年の間に生まれた若者のことを指します。ネオ・デジタルネイティブスとして生まれた時からインターネットがあたり前のように存在し、SNSを始めとして日々膨大な情報を処理している過程の中で、彼らは社会の多様性に対する受容度が他の世代より高く、彼らの発信力が注目されてきました。特に2020年のアメリカ大統領総選挙においては、彼らの政治に対する意識がメディアで取上げられることも多く、日本においてもその名称を聞く機会は多かったように思われます。

2019年には、世界の人口におけるZ世代の割合は32%に達したという見方もあり、これからの消費を担っていく世代としても、世界的に注目を集めています(※1)。しかしそもそも、なぜ彼らはZ世代と呼ばれているのでしょう。

(※1) SankeiBiz「21世紀生まれ、Z世代が台頭 来年に世界の32%、ミレニアル上回る」
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180923/mcb1809231306003-n1.htm新しいウィンドウ(2018年9月19日)

名称:生まれた年 ベビーブーマー(米国):1946〜1964年 X世代:1965〜1980年 Y世代:1981〜1995年 Z世代:1996〜2012年 α世代:2010年代初頭〜2020年代中頃 (注)研究機関や書物によって年代は前後する

アルファベットによる世代の分類の始まり

 このアルファベットによる世代の分類はX世代が始まりとされていて、Z世代はその系譜を踏んでいます。X世代という名称は、写真家のロバート・キャパの造語に由来します。彼は1950年代に、第二次世界大戦後に成長した若者をテーマにしたフォトエッセイに「Generation X」というタイトルをつけました(※2)。“X”というアルファベットがつけられた理由ですが、“X”には未知という意味が込められています。未知の数量を表すために使われていたアラビア語「Shei」をギリシャ語に置換えると「Xei」となり、その頭文字である“X”を用いて、わからないものを示す単位や記号として“X”が付けられるようになったのです。例えば、SFテレビドラマの『X-ファイル』もそうですし、『X線』は、発見時にその性質が不明であったためつけていた“X”の名残であるし、遊星から飛来した謎の「物体」を題材にしたSF映画『The Thing』の邦題が『遊星よりの物体X』と訳されているなど、未知のモノを“X”に置換えたものは、私たちの身近に数多く存在します。

 このような背景のもと、現代の社会的文脈である1965〜80年頃に生まれた世代という意味でX世代という名称が使われるようになったのは、1991年にダグラス・クープランドの『ジェネレーションX -加速された文化のための物語たち』が国際的なベストセラーとなったことがきっかけです(※3)。その前の世代であるベビーブーマーと比べて「つかみどころがない」文字どおり“未知な世代”という意味合いで広く浸透していきました。

 その後X世代の次の世代である1980年〜1995年頃に生まれた“ポストX世代”のことをアルファベット順になぞってY世代と呼ぶようになります。この世代は2000年代に成人・社会人になることから「ミレニアル世代」とも呼ばれ、物心ついた時にはインターネットの環境が整っていた「デジタルネイティブス」でもあります。そして、Windows95の登場でインターネットが一般的に使用できるようになったことを境目に生まれた時からインターネットが存在していたネオ・デジタルネイティブスをZ世代と呼ぶようになったのです。

(※2) Ulrich, John Mcallister; Harris, Andrea L. (2003). GenXegesis: Essays on Alternative Youth (Sub)culture. p. 5.
(※3) Raphelson, Samantha. "From GIs To Gen Z (Or Is It iGen?): How Generations Get Nicknames". NPR. (6 October 2014)

次の世代は何と呼ばれていくのでしょうか

 これまでは、“X”の系譜を踏む形で惰性的に名称がつけられてきましたが、アルファベットの最後の文字である「Z」を迎えた今、次の世代は何と呼ばれていくのでしょうか。現状では、彼らポストZ世代は「Generation Alpha(α世代)」と呼ばれることで定着しつつあります。α世代は概ね2010年代序盤から2020年代中盤にかけて生まれる世代とされていて、2030年代から2040年代頃に社会に進出すると考えられています。2008年にマーク・マックリンドルによって考案された言葉で、ラテン文字の最後にあたる「Z」の次にギリシャ文字の最初にあたる“α”を採用し、新たな時代の始まりをイメージした世代名として考案されました(※4)。α世代の始まりが2010年代序盤である背景には、この年にInstagramとiPadが登場したことにあり、それ以前の世代と生活様式が大きく変化したターニングポイントとして位置づけられたからです。

 Z世代は「スマホ世代(iGen)」とも呼ばれ、スマートフォンを持ち、画面を見て操作する方法がIT利用の中心でした。しかし、α世代ではAIがより生活に密着していくのみならず、将来的には超小型のITデバイスの登場により身体へのインプランタブル(埋込み型)も期待されています。

 また、彼らの多くが2020年から世界を震撼させている新型コロナウイルスによるパンデミックを幼少期に経験することとなります。私たちは現状beforeコロナ、afterコロナのように生活様式をパンデミック前後と比較し、先行きが見えない中でwithコロナとして現状に適応する必要があります。しかし、α世代の中にはbeforeコロナの時代を知らない層も存在し、私たちが順応していくwithコロナの時代は、彼らにとってはあたり前のこととして価値観や行動様式が形成されていくと考えられます。

 呼び方は変化していますが、私たちが今後活躍する層を「Z」や“α”と呼ぶのは、ロバート・キャパが当時の若者を“X”と呼んだ本質と変わらず、彼らが未知の存在であり、それ故に彼らが担う未来に期待しているからではないでしょうか。

(※4) McCrindle, Mark; Wolfinger, Emily (2009). The ABC of XYZ: Understanding the Global Generations (1st ed.). Australia.

(ニッセイ基礎研究所 廣P 涼)

筆者紹介

廣P 涼(ひろせ りょう)

株式会社ニッセイ基礎研究所、生活研究部 研究員
研究・専門分野:消費文化、マーケティング、ブランド論、サブカルチャー、テーマパーク、ノスタルジア