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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第136回 注目が高まる「健康経営」健康経営度調査回答企業数は7年間で約5倍に増加

2021年6月1日

健康経営とは

 「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点から捉え、戦略的に実践することを指します(※1)。もともとは、生産年齢人口減少や少子高齢化を迎えた日本社会の課題解決の取組みの一つとして始まりました。企業が従業員の心身の健康保持・増進に取組むことで、従業員一人一人の活力や生産性が向上し組織の活性化を促し、結果的に将来の業績向上や企業価値の向上、更には日本社会の持続可能性へと繋がることが期待されています。

(※1) 「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。

健康経営に興味を持つまたは取組む企業は確実に増加

 健康経営推進の一環として、経済産業省は大規模法人向けに「健康経営度調査」を実施しています。図表は健康経営度調査回答企業数の推移です。直近2020年度(調査期間:2020年8月〜10月)の回答企業数は全体で2,523社と、初年度と比較して約5倍に増えました。健康経営に興味を持つまたは取組んでいる企業は確実に増えているようです。

図表 健康経営度調査回答企業数の推移(大規模法人部門)

(資料) 経済産業省「健康経営選定企業紹介レポート」から作成

 「健康経営度調査」は経済産業省による顕彰制度である「健康経営優良法人(大規模法人部門)」等(※2)の選定に加え、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施している東証上場企業の中で健康経営に優れているとされる「健康経営銘柄」の選定にも使用されています。アンケート結果から、選定された企業は「自社内での意識の高まり」や「企業イメージが向上」する効果が期待できることもあり、健康経営度調査回答企業が増加していると思われます。

 実際に健康経営度が高い企業は「離職率が低い」、「有給休暇取得率が高い」、「特定検診実施率が高い」といった傾向がでています(※3)。働く側から見ても健康経営に積極的に取組む企業は魅力的なため、就職先を選ぶ際などにも重視されるようになってきているのではないでしょうか。

(※2) 中小規模法人を対象に「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」の顕彰制度も実施されている。
(※3) 経済産業省 2020年9月「健康経営の推進について」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html新しいウィンドウ

従業員の心身の健康管理の重要性は一段と高まっている

 2020年は新型コロナウイルス流行をきっかけに、テレワークの普及など働き方が大きく変わるなか、企業にとって従業員の心身の健康管理の重要性は一段と高まっています。従業員一人一人の健康増進・維持に取組むことは、組織の活性化、そして将来の企業業績や価値向上へ繋がると期待できるため、健康経営に対する注目は今後も高まっていくでしょう。

(ニッセイ基礎研究所 森下 千鶴)

筆者紹介

森下 千鶴(もりした ちづる)

株式会社ニッセイ基礎研究所、金融研究部 研究員
研究・専門分野:株式市場・資産運用