2020年は新型コロナウイルスによって自粛生活を余儀なくされ、多くの方の生活が激変したのではないでしょうか。金融市場でも、新型コロナウイルスに揺れる展開となり、株式などの金融資産の価格変動が大きい1年となりました。例えば日経平均株価は年初2万3,000円台で始まったものの、3月には一時1万7,000円を下回りました。ただ、3月以降は上昇基調が続き年末には2万7,000円を上回り、2020年1年間の変動幅は1万円を超えました。
2021年4月1日
意外にも投信販売は堅調
このように金融市場では先を予測するのが難しい1年になりましたが、そのような環境の中でも意外にも冷静に資産形成、資産運用を実行している方も多かったようです。実際に個人の資産形成の一翼を担っている国内での追加型株式投信(ETF:上場投信を除く。以後、投信)は2兆2,100億円の資金流入(設定額から解約額を引いた純流入)があり、2020年は投信の販売が堅調でした。
外国株式投信が販売を牽引
では、組入れている資産クラス別に2020年の投信の資金の動きをみますと、国内株式投信や外国債券投信からは資金流出しており、多くの方が売却していたようです【図表】。国内株式投信については、3月以降に株価が上昇するにつれて利益確定のため売却が膨らんだ印象です。また、外国債券投信については3月に世界的に金利が低下する中で、今後の低収益化を見越して売却する方が多かったのかもしれません。
※ Mornigstar Directより筆者集計。なお、「バランス型」とは複数の資産を組入れている投信。
その一方で外国株式投信には3兆5,500億円もの資金流入があり、多くの方が外国株式投信を購入していたようです。先行きに対して比較的、安心感のあった米国株式、特にハイテク株式などが消去法的かもしれませんが選好されたことに加えて、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)を意味するESGを考慮した外国株式投信も人気を集めました。元々、プロの投資家の間では関心が高かったESG(投資)ですが、2020年に個人が中心である投信市場でも注目されたといえます。今後、投信市場でESGに対する関心が続くのか、さらには個人の間にもESG投資が定着していくのか動向が気になるところです。
積立投資の浸透も追い風に
また、3兆5,500億円のうち9,600億円は「つみたてNISA」(※詳しくは第91回参照。)などで活用されている米国株式指数や先進国株式指数などに連動する外国株式投信への資金流入でした。それらの外国株式投信への資金流入は2019年が4,200億円でしたので、2020年は倍以上に増えました。そのような外国株式投信への積立投資が個人の間に浸透してきていることがうかがえます。コロナ禍で先行きの不透明感が高かった2020年ですが、投信の販売は意外と堅調だった背景には、価格変動に一喜一憂せず淡々と積立投資する人が増えたこともあるのかもしれません。
(ニッセイ基礎研究所 前山 裕亮)
筆者紹介前山 裕亮(まえやま ゆうすけ)
株式会社ニッセイ基礎研究所、金融研究部 准主任研究員
研究・専門分野:株式市場・資産運用
- ▼ニッセイ基礎研究所ホームページ(前山研究員)
https://www.nli-research.co.jp/topics_detail2/id=27924?site=nli