第130回 2020年日本の子どもの幸福度 38カ国中「身体的健康」は1位、「精神的幸福度」は37位

3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

2020年12月1日

子どもの幸福度、日本の順位は?

 ユニセフ(※1)は2020年9月3日、先進国の子どもたちの精神的・身体的な健康と、学力・社会的スキルについて調査報告書を発表しました。日本の総合順位は38カ国中20位でした。その内訳をみると、身体的健康(子どもの死亡率の低さ、過体重・肥満の子どもの割合の少なさ)が1位、精神的幸福度(生活満足度が高い子どもの割合、自殺率)が37位、スキル(読解力・数学分野の学力、社会的スキル)が27位(※2)でした。

  • (※1)
    ユニセフは国際連合児童基金(United Nations Children's Fund,UNICEF)の略称で、世界中の子どもたちの命と健康を守るために活動する国連機関です。
  • (※2)
    ユニセフ報告書(2020年9月)「レポートカード16」「先進国の子どもの幸福度をランキング〜日本の子どもに関する結果」。本報告書は38カ国の5〜19歳の子どもに着目し、幸福度に関するいくつかの指標を報告しています。
図表1 子どもの幸福度―38カ国中、日本・米国の順位比較
(資料)UNICEF(2020)Worlds of Influence - Understanding What Shapes Child Well-being in Rich Countries.

 38カ国中、「身体的健康」の最下位は米国でした。「1人あたり所得」が同水準の国と比較すると、子どもの死亡率が高く、肥満率もワーストでした。日本の死亡率は低めの9位で、肥満率は一番低い結果でした。

 「精神的幸福度」の最上位はオランダで、最下位はニュージーランドでした。生活に満足している日本の子どもはわずか62%で、ワースト2位でした。エストニア、ニュージーランド、リトアニアの子どもの自殺率が並外れて高い結果でしたが、日本も高めの27位でした。

 「スキル」の最上位はノルウェーで、最下位はチリでした。日本の学力は高めの5位でしたが、新しい友達を作る能力がワースト2位でした(※3)

子どもの精神的健康、世界で低下傾向

 子どもの精神的健康が良くないことは、日本だけでなく、欧州も同じ傾向が出ています。WHO(※4)欧州地域事務局が2020年5月に発表した報告によると、ヨーロッパ地域の45カ国中、子どもの精神的健康は2014年から2018年にかけて、多くの国において低下傾向にあることが確認できました。2014年と比べ、約3割の国の子どもが学業のストレスを感じ、学校が好きな子どもの数が明らかに減少しています。

 同報告の結論をみると、2つのことに注目すべきだと考えています。1つは、8割以上の子どもはWHOが推奨している身体活動・運動レベルに達していないこと。もう1つは、6割以上の子どもが栄養素が豊富な食品を十分に食べていないことです(※5)。つまり、日々の生活習慣が子どもの精神的健康に大きく関わっています。

精神的健康の増進と望ましい生活習慣の形成

 それでは、どのような生活習慣が精神的健康に寄与しているのでしょうか?身体活動、食事と精神的健康の因果関係に関する研究は以下のとおり示しています。

 ハーバード大学公衆衛生学部とマサチューセッツ総合病院の共同研究によりますと、毎日の身体活動・運動、例えば15分程度のランニングあるいは1時間程度の散歩などをする時間が増加すると、うつ病になる確率が26%減少する結果が確認できました(※6)

 一方、南オーストラリア大学と王立アデレード病院の共同研究によりますと、野菜、果物、全粒食品、ナッツ類、マメ科植物の摂取量を増加し、不健康なスナックや肉の摂取量を減少し、同時に甘味飲料の摂取量を減少すると、うつ病の症状が1.68倍改善した結果が確認できました(※7)。簡単そうに見えますが、実は毎日続けることが難しいです。このような生活習慣を見直したら、精神的健康の改善にもつながるでしょう。

 2020年、新型コロナによる人々の暮らしが変化しつつあります。外出自粛により運動不足や、休校などによる子どもたちの身体・精神的成長の遅れが懸念されています。「Withコロナ時代」において、我々もいち早く新しい生活習慣を形成していくことが必要になるでしょう。

(ニッセイ基礎研究所 胡 笳)

筆者紹介

胡 笳(こ か)

株式会社ニッセイ基礎研究所、社会研究部 研究員
研究・専門分野:土地・住宅、中国不動産全般

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