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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第128回 電子商取引(EC)市場規模は19.4兆円(EC化率6.76%)に拡大

2020年10月1日

拡大する国内EC市場

 経済産業省が7月に公表した「電子商取引に関する調査結果」によると、消費者向け(BtoC)電子商取引(EC)の市場規模は2019年に19.4兆円と前年比+7.65%で拡大し、食品、家電、書籍などを扱う物販系分野のEC化率(すべての商取引額に占める割合)は前年6.22%から6.76%へ上昇したようです[図表1]。

 BtoC-EC市場の内訳は、物販系分野が10.0兆円、サービス系分野が7.2兆億円、デジタル系分野が2.1兆円であり、物販系分野が全体の51.9%を占めています。その物販系分野については、「衣類・服装雑貨等」、「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」、「食品、飲料、酒類」、「生活雑貨、家具、インテリア」、「書籍、映像・音楽ソフト」で市場規模が1兆円を超えています。

 サービス系分野については、「旅行サービス」が3.9兆円と最大ですが、伸び率では「理美容サービス」「飲食サービス」が高く、旅行以外にもインターネット予約が広がりつつあることが分かります。また、デジタル系分野については、「オンラインゲーム」が1.4兆円と約65%を占めていますが、2019年に最も成長したのは「有料動画配信」で、伸び率は前年比+62.76%となっています。若い世代を中心に定額配信サービスが定着しつつあるようです。

[図表1]日本のBtoC-EC市場規模の推移

(資料) 経済産業省「電子商取引に関する市場調査」よりニッセイ基礎研究所作成

スマートフォン普及とキャッシュレス化の進展による市場の拡大

 国内EC市場は、スマートフォンの普及と共に拡大してきました。スマートフォンが普及したことにより、消費者はECサービスを手軽に利用することができるようになり、事業者も消費者との接点を各段に取りやすくなっています。ネット利用時にスマートフォンを使用する割合は、2011年の16.2%から2019年には63.3%まで上昇し[図表2]、物販系分野におけるスマートフォン経由のEC市場は4.3兆円と、全体の42.4%まで拡大しています。年代によるスマートフォンの保有差も縮小しつつあり、今後、高年齢層におけるEC取引が増えることが見込まれます。

 また、キャッシュレス化もEC市場の拡大には好影響を及ぼします。購入から決済までをスマートフォンで完結することができるため、消費者の利便性が向上すると考えられるからです。国内のキャッシュレス比率は、2019年には26.8%と直近9年間で約2倍に拡大し、政策的な後押しもあって今後さらに上昇していくことが見込まれます。

[図表2]スマホのインターネット利用率とキャッシュレス決済比率の推移

(資料) 総務省「通信利用動向調査」、経済産業省「電子商取引に関する市場調査」「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会資料」よりニッセイ基礎研究所作成

新型コロナウイルス対策でネット利用の拡大が追い風に

 2020年は、世界的に新型コロナウイルス感染症が流行し、対面取引を前提とした商習慣は、非接触・非対面の仕組みに移行していくことを余儀なくされています。
総務省の「家計消費状況調査」によると、緊急事態宣言が発令された4月以降、ネット消費額が増加しています[図表3]。増加項目である「食料品」や「医薬品」は、これまでEC化率の低かった商品(※1)です。外食の宅配サービスや学習塾のオンラインコンテンツなどは、コロナ禍を機に拡大したデジタルサービスであり、これまでに無いサービスも登場し始めています。

 新型コロナウイルスは不可逆なデジタルシフトという変化を加速させており、デジタル消費の拡大はこれからも続いていくことが予想されます。私たちはその変化を機敏に捉え、自らの生活やビジネスに活かしていくことが必要になるでしょう

[図表3]インターネットを利用した1世帯当たり1か月間の支出の推移

(注) 顕著に増加した項目を抽出。支出総額は、インターネットを利用した22品目の合計。
(資料) 総務省「家計消費状況調査」よりニッセイ基礎研究所作成
  • ※1) 経済産業省の「電子商取引に関する調査結果」によると、2019年の物販系分野のEC化率は、「食品、飲料、酒類」(2.89%)、「化粧品、医薬品」(6.00%)、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(32.75%)、「書籍、映像・音楽ソフト」(34.18%)等、となっています。

(ニッセイ基礎研究所 鈴木 智也)

筆者紹介

鈴木 智也(すずき ともや)

株式会社ニッセイ基礎研究所、総合政策研究部 研究員
研究・専門分野:日本経済・金融