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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第121回 2019年、日経平均株価が3,600円上昇

2020年3月2日

1年ぶりの上昇

 アベノミクスが始まった2012年から年間で上昇し続けていた日経平均株価。2018年は下落したため、上昇はいったん6年連続で止まりましたが、2019年は再び上昇して終えました。しかも、20,015円(2018年末)から23,657円(2019年末)と、1年で3,642円と大幅な上昇となりました。

※第97回 日経平均株価6年連続上昇。

図表1 日経平均株価の推移

(資料)日経Needsより筆者作成。2020年1月末まで。

3つの要因

 2019年に日経平均株価が大きく上昇した主な要因は3つあると考えています。

 まず1つめは、前年である2018年に世界経済の減速懸念などから株価が下落したため、2019年のスタートの段階で日経平均株価が20,000円と低い状態になっていたことです。実際に1月から4月にかけて、前年に懸念されていた世界経済の減速が払拭されるとともに、日経平均株価は22,000円台まで上昇しました。

 2つめは、外部環境が好転したことです。2019年は1年を通じて米中の貿易問題に注目が集まりました。5、6月や8月などは問題の深刻化や長期化が懸念されたため、日経平均株価が20,500円を下回る場面もありました。それが秋以降は米中の貿易問題の進展期待が台頭し、実際に進展しため、日経平均株価は大きく上昇しました。特に、12月に米中貿易交渉で第1段階の合意がなされると、2018年10月ぶりに一時24,000円を超えました。

 3つめは、株式市場で日本企業の業績改善期待が大きくなってきたことです。2019年度に入って、日本企業の業績は厳しい状況が続いていました。日経平均株価の一株あたり利益をみると、直近の予想で2019年度決算は前年度と比べて減益となっていることからも、そのことが分かります。しかし、秋以降は外部環境が好転したこともあり、日本企業の業績もそろそろ底打ちし改善してくるのではと期待する投資家が増えたことも、株価を押上げる要因になりました。

図表2 日経平均株価の一株あたり利益の推移

(資料)日経Needsより筆者作成。2019年度は2020年1月末時点での予想
2012年度から2018年度は、各年度とも翌年5月末時点での前期基準

2020年の日経平均株価は?

 では、2020年はどうなるでしょうか。2019年の大幅上昇した3つの要因と対比して考えたいと思います。

 まず1つめに、2020年初の株価は23,000円台と、バブル経済が崩壊した1991年以降で最も高い水準でのスタートとなります。年初時点で日経平均株価がすでに高値圏にあることを踏まえると、2020年は一筋縄では行かないかもしれません。

 2つめの外部環境についてはどうでしょうか。今年の秋にアメリカで大統領選があります。これまでトランプ米大統領が様々な問題の発端になってきましたが、大統領選までは金融市場を混乱させるような行動をしないのではという期待感があります。ただ、米中の貿易問題はまだ根本的な解決には至っておらず、年明け早々に中東情勢や中国で発生した新型肺炎など新たな問題も出てきています。やはり、常に外部環境が株価の追い風になるとは限らないため、注意する必要があるといえるでしょう。

 3つめの企業業績についても、これから本当に投資家が期待しているほど企業業績が改善してくるのか分からない状況です。もし企業業績が上向いてこなければ、先行する形で株価が上がってきただけに、その分、下落することも考えられます。

 以上から、2020年も2019年のように日経平均株価が大きく上昇する展開を期待したいところですが、実際にはなかなか難しい状況にあるのではないでしょうか。

(ニッセイ基礎研究所 前山 裕亮)


筆者紹介

前山 裕亮(まえやま ゆうすけ)

金融研究部 准主任研究員
研究・専門分野:株式市場・資産運用