健康で「病気になるリスク」が低いと考えられる人と、健康に不安があり「病気になるリスク」が高いと考えられる人を、保険会社が見分けることができない状況で、保険会社が両者をまとめて平均的に病気になる確率を計算して保険料を定めれば、その保険料は、健康な人にとっては割高なものになります。
その結果、健康な人はその保険に加入せず、健康に不安がある人の加入傾向が高まります。そうすると、保険加入者のグループの病気になる確率が高まるため、保険会社は保険料の引上げを行わなければいけなくなります。すると保険加入者はますます健康に不安があり「病気になるリスク」が高い人ばかりになってしまいます。保険市場におけるこのような現象を「逆選択」といいます。
「逆選択」は保険市場の中心的な課題ですが、実社会ではその現象が常に確認されてきたわけではありません。より病気やけがをするリスクの低い人が保険に加入する傾向が強いという「逆選択の逆」の現象もいくつかの保険市場で確認されており、「アドバンテージャス・セレクション」と呼ばれます。
日本の医療保険市場では、「病気になるリスク」が高い人の方が医療保険に加入しているのでしょうか(逆選択)、それとも「病気になるリスク」が低い人の方が医療保険に加入しているのでしょうか(アドバンテージャス・セレクション)。それを確認するため、2018年8月にニッセイ基礎研究所が実施したWEBアンケート調査をもとに、「病気になるリスク」が高いと考えられる人と「病気になるリスク」が低いと考えられる人の医療保険の加入率を比較したのが図1です。