外国人労働者が急増している背景には、国内の人手不足があります。日本銀行「短観」の雇用人員判断D.I.を見ると、多くの産業で数値がマイナスとなっていることが分かります。これは、人手不足の現状を示すものであり、とりわけマイナス幅の大きな建設、宿泊・飲食サービス、対個人サービス(医療・介護などを含む)などでは、人手不足が深刻な問題となっています。貴重な労働力として、外国人労働者への期待が高まっているのです。

(注)全規模・四半期データの平均値。
(資料)日本銀行「短観」をもとにニッセイ基礎研究所作成
政府は人手不足の深刻化に対処するため、2019年4月から「新たな在留資格制度(特定技能1号および2号)」を創設しています。この制度では、特に人手不足が深刻とされる14業種を選定し、今後5年間に最大34.5万人の外国人労働者を受入れることを見込んでいます。
初年度となる今年は、新たな領域で3.3万人から4.8万人を受入れることを想定しています。ただし、制度開始までの期間が短かったこともあり、試験日程が決まらないなど、受入準備が十分にできているとは言えない状況です。初年度については、想定より少なくなることもありそうです。
一方で、対象業種については、今後拡大していくことも考えられます。検討初期に5業種(介護、宿泊、建設、造船、農業)に留まっていた対象業種は、業界団体などの要望を受けて14業種まで拡大しています。
また、新たな資格(特定技能1号)へ無試験で移行できる技能実習も、これまで対象職種を広げてきました。今後、皆さんが働く業界でも、外国人労働者の受入れが進んでいくかも知れません。
ここまであまり触れて来ませんでしたが、新たな在留資格制度には課題も多くあります。中でも、外国人労働者との共生をどのように実現するか、という課題は大変重要です。労働者としてだけでなく、生活者としての外国人をどのように受入れていくのか。これからも試行錯誤を続けていく必要がありそうです。

(資料)各種報道をもとにニッセイ基礎研究所作成
(ニッセイ基礎研究所 鈴木 智也)