みなさんは『東証1部上場会社』と聞くと、どのようなイメージがあるでしょうか?日本を代表する会社、事業規模が大きい、従業員数が多い、安定した業績、ほとんどの人がその名を知っている会社、などが思い浮かぶのではないでしょうか。これらのイメージを持ちつつ、東証1部上場会社が2,000社を超えていると聞くと、意外と多いなと感じるかもしれません。
2019年3月1日
増えている東証1部上場会社
東京証券取引所(東証)全体では、2018年末時点で約3,600社が上場しています。その中でも東証1部に上場している会社は2016年末に2,000社を超え、2018年末で2,128社まで増えました。東証には他に東証2部、新興企業向けのマザーズ、ジャスダックといった市場がありますが、東証1部だけで東証全体の約6割を占めています。
上場基準緩和と大証との経営統合
近年、東証1部上場会社数が増えた大きな理由は2つあります。1つ目は2013年に東京証券取引所グループと大阪証券取引所(大証)の経営統合により、現物市場を東証に統合したことです。2つ目は2012年に東証1部の上場基準が大幅に緩和されたことです。従来よりも利益額や時価総額の基準を下げたことで、より多くの会社に東証1部上場への門戸が広がりました。
東証1部上場の「プレミアム感」
最近では、上場基準が緩和されたことによる弊害も懸念されています。以前と比較して規模が小さい会社が増加したことで、東証1部上場というプレミアム感が薄れてしまった、との声もあります。利益額や時価総額の基準が下がれば、会社は今までより目標を下げても東証1部に上場することができるため、結果として企業活動の低下につながりかねません。また、東証1部に上場する会社は多い一方で、退出がほとんど生じていないため、本来なら退出すべき会社が残ってしまっているのでは、との声もあります。
東証は2018年10月に「市場構造の在り方等に関する懇談会」を設置しました。2013年に東証と大証が経営統合した際は、混乱を防ぐためにいままでの市場構造が維持されました。経営統合から5年が経ち、東証1部、2部、新興市場の位置づけや基準についての課題意識が高まっています。今回の見直しをきっかけに、投資家が利用しやすく、会社にとっては上場することが企業価値向上につながる市場、すなわち、投資家と上場会社の双方にとってさらに魅力的な市場になることが期待されています。
(ニッセイ基礎研究所 森下 千鶴)
筆者紹介
森下 千鶴(もりした ちづる)
株式会社ニッセイ基礎研究所、金融研究部
研究・専門分野:株式市場・資産運用