小額から始められ、積立投資も容易にできる投資信託。確定拠出年金やNISA(※1)で主な投資先になっています。金融庁が推進している「貯蓄から資産形成へ」でも、資産形成の中心的役割を期待されている金融商品といえます。
投資信託について、金融庁から気になる調査結果が発表されました。銀行29行を調査したところ、2018年3月末時点で投資信託を保有している顧客の46%が損失を抱えているとの結果です【図表】。
2018年9月3日
約半数が損している?
- (※1)詳しくは 第91回 年間40万円まで、「つみたてNISA」とは? をご覧ください。 https://www.nissay.co.jp/enjoy/keizai/91.html
(資料)金融庁公表資料より筆者作成。
投資信託は、銀行の預金などとは異なり元本が保証されている金融商品ではありません。まさに、元本が保証されていないことが如実にあらわれた結果といえます。約半数の人が損をしていたと聞くと、率直に投資は怖いなと感じた方もいると思います。
3つの要因
このような結果になった要因は3つあると考えています。
まず1つめは、この調査結果は2018年3月末時点で保有している投資信託のみが対象になっていることです。利益が出ていれば売却して、利益を確定させたい。逆に損失が出ていると、損失を確定させるのは辛いので、損失が縮小することを期待してそのまま放置(これを「塩漬け」といいます)するのが人の心理です。この調査結果では、その時点で保有している投資信託のみが対象となっています。どんなにそれ以前に投資信託を売却して利益を出していたとしても、調査結果には一切反映されていないのです。
2つめは投資期間です。金融庁の公表資料には具体的な数値などはのっていませんでしたが、投資信託の保有期間は短かったことが推測されます。保有期間が短いと、どうしても短期的な価格変動に左右されてしまいます。実際に調査結果では、投資信託の保有期間が長いほど損している人が少なかったことも報告されています。
最後の3つめは、過去に人気だった投資信託がここ2、3年低調だったことです。2015年、2016年は海外REIT(不動産投資信託)が人気の投資信託でした。しかし2017年以降、海外REITにとって厳しい環境が続いています。そのため、2015年、2016年に海外REITの投資信託を購入した場合、2018年3月末時点では損失を抱えていた可能性が高いと思います。
うまく活用している人もいる
損失を抱えている人が約半数いましたが、その一方で3分の1の方は10%以上利益を上げていました。現在の金利を考えると、銀行に預けて10%以上の利益を得るには、気の遠くなるような時間が必要です。投資信託を活用して資産形成に役立てていた人もいたことが分かります。
ぜひ皆さんも、過度に投資や投資信託を怖がらずに、ご自身の資産形成をしていくうえで投資信託も積極的に活用していただけたらと思います。
(ニッセイ基礎研究所 前山 裕亮)
筆者紹介前山 裕亮(まえやま ゆうすけ)
株式会社ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員
研究・専門分野:株式市場・資産運用
- ▼ニッセイ基礎研究所ホームページ(前山研究員)
http://www.nli-research.co.jp/topics_detail2/id=27924?site=nli