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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第104回 最低賃金の東京と地方の格差 月給ベースで3万5千円

2018年10月1日

最低賃金は2018年10月から全国平均874円に

 「最低賃金」という言葉を耳にしたことがありますか?働く人の生活を守るために、世界各国で、雇用主が支払わなければならない最低限の賃金が、法律により定められています。日本では「最低賃金法」という法律があり、働く人の生計費や企業の支払能力等を勘案して金額が定められます。2018年10月から、時給で現した最低賃金は、全国加重平均で874円になります。皆さんの給料も、必ずこの最低賃金を上回るように設定されています。万が一、下回っている場合は違法となり、刑事罰の対象となります。

6年間で時給125円アップ

 この金額は、毎年夏に、経済状況等に合わせて見直されるのですが、2012年12月に第二次安倍政権が発足して以降、15円以上の大幅な引上げが続いてきました(図表1)。同年度から2018年度までの6年間で、引上げ額は計125円になります。「125円ぐらい」と思うかもしれませんが、1日の給料で単純計算すると、1日8時間働くと想定して、1,000円アップになります。1カ月の給料で計算すると、月20日働くと想定して、20,000円アップになります(交通費や手当等を除く試算)。これは、とりわけ非正規雇用で働く人たちにとっては、大きな賃金改善です。

図表1 時給で現した最低賃金額(全国加重平均)と引上げ額の推移
(資料)厚生労働省のホームページより作成

東京都と鹿児島県の月給差は35,680円に

 それでは、これで喜んでばかりいられるかと言うと、そうではありません。実は最低賃金の金額は、物価の違いなどを考慮して、都道府県ごとに定められています。これまで全国的に大幅アップが続いてきたものの、細かく見ると、都市部の方がより引上げ額が大きく、地方の方がより小さい、という状況が続いてきました。その結果、都市部と地方の最低賃金の差額が拡大してきたのです。例えば、2018年度、最低賃金が最高の東京都と、最低の鹿児島県を比べてみましょう(図表2)。最低賃金が時給で現されるようになった2002年度、単純計算した東京都の月給は113,280円、鹿児島県の月給は96,800円で、差額は16,480円でした。しかし2018年度からは、東京都は157,600円、鹿児島県は121,760円となり、差額は35,840円に拡大しました。

図表2 東京都と鹿児島県の最低賃金による月給と2都県の差額の推移
(注意)1日8時間、1カ月20日働くと想定
(資料)厚生労働省のホームページより作成

最後に

 都市と地方の差額の拡大は、全国に見られます。皆さんは就職先を選ぶとき、自分の居住地にある企業と、東京や大阪にある企業とで月給に3万円以上の違いがあったら、どちらで働きたいと思いますか?個人の考え方によって地方を選ぶ方もいると思いますが、より給料が高い都市部を好む人も多いのではないでしょうか。これでは、地方から都市へと、人口流出が進み、地方の人口減少と人手不足に拍車がかかる恐れがあります。都市と地方の状況を考えたときに、最低賃金がどうあるべきなのか、じっくり考える必要があるでしょう。

(ニッセイ基礎研究所 社会研究部 坊美生子)

筆者紹介

坊 美生子(ぼう みおこ)

株式会社ニッセイ基礎研究所 社会研究部 准主任研究員
研究・専門分野:住宅政策、まちづくり、労働、社会保障