ANNUAL REPORT 2021 menu

コンプライアンス部門、リスク管理部門担当役員インタビュー

日本生命を取り巻く環境について、リスク管理やコンプライアンスの観点からお聞かせください。

少子高齢化や超低金利の継続、デジタル技術の進展に加え、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う新たな生活様式の浸透など、当社の経営環境は年々変化しています。また、2025年に保険会社に対する経済価値ベースの規制導入が見通されている中、お客様への保障責任を長期にわたり全うしていく観点から、健全性向上の重要性がさらに高まっています。

当社の存在意義は、大きく変化する未来においても、最も信頼される生命保険会社として、お客様や社会からの期待に応え続けることです。お客様に安心・安全をお届けするという使命を果たすためには、既存事業の強化・高度化に加え、新たな商品・サービスや事業の展開が必要であり、それらに伴うさまざまなリスクについて、先を見越した適切な把握・評価・コントロールが重要です。とりわけ、海外やアセットマネジメント事業などの強化にも取り組んでいる中、これらを支えるグループベースでのリスク管理について、求められる範囲・深さがともに大きく拡大しているものと認識しています。また、従業員一人ひとりがお客様や社会からの期待や信頼に応え続けるためには、狭義の法令にとどまらず、あらゆる社会規範を遵守することが必要であり、コンプライアンス意識をさらに高めていくことが必要と考えています。

昨年度は新型コロナウイルス感染症に関するリスクが顕在化した1年だったと思いますが、振り返っていかがでしょうか。

生命保険会社のビジネスの両輪は、お客様から保険を引き受けることと、お預かりした保険料を運用することです。

まず、当社の事業はお客様ニーズに即した保険を提供することであり、多数の保険契約を幅広く引き受けることが、結果として経営の安定につながります。昨年度は、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、営業職員等の活動自粛を余儀なくされたことで、保険販売が減少しました。一方、新型コロナウイルス感染症による保険金のお支払いが想定より少なかったため、結果的には、保険関係収支への影響は大きくありませんでした。まずは保険販売を回復させていくことが喫緊の課題です。併せて、足もとでのお客様の非対面ニーズの高まりや、デジタル化の加速なども踏まえ、お客様に安心・安全をお届けできるよう、フェイス・トゥ・フェイスにデジタルを組み込んだ販売・サービス態勢の確立など、デジタルトランスフォーメーションのさらなる推進も急務と考えています。また、IT社会の進展に伴うセキュリティ面でのリスク対応や、システムの安定稼働・堅牢性の維持に加え、お客様情報等の適切な管理を行うためのルールの整備なども速やかに進めていく必要があります。

一方、当社はお客様にお約束した利回りを安定的に確保し、将来の保険金・給付金等を確実にお支払いするため、お預かりした保険料を、公社債等をはじめとして、相対的に利回りの高い社債や海外不動産・インフラ等へ投資することで、分散に留意した資産運用を行っています。2020年度は年初に、新型コロナウイルス感染症の影響等を受け、世界的に市場環境が悪化しましたが、その後の金融・財政政策などにより、年度末においては想定以上に回復・安定した状況となりました。しかしながら、金融経済環境の不確実性は引き続き高いものと認識しており、資産運用に伴うリスクには留意が必要と考えています。

特に重要と考えているリスクと、それに対する取り組みについてお教えください。

現時点において、私が特に重要と考えているリスクは、大きく四つあります。

一つ目は、新型コロナウイルス感染症が及ぼす影響です。これは、先ほど申しあげたとおり、保険引受と資産運用のいずれに対しても大きな影響を与えうるリスクです。新たな生活様式が浸透するなど、社会構造・生活環境が大きく変化し、今後、保険ビジネスにも変革が求められることが想定されます。引き続き、新型コロナウイルス感染症の動向に加え、お客様ニーズをはじめとしたさまざまな経営環境の変化を注視し、適切に対応していく必要があります。

二つ目は、金融経済環境の悪化です。例えば、国内金利がさらに低下し、それが継続した場合は、安定的な運用収益が得られず、お客様に対してお約束した利回りが確保できなくなる懸念があります。引き続き、ポートフォリオの不断の見直しを通じた長期安定的な運用収益の確保に加え、いかなるリスクの顕在化時でも保障責任を全うできるよう、自己資本の積み増しが必要です。また、金融経済環境を踏まえた保険商品の開発・提供も引き続き重要と考えています。

三つ目は、グループ会社の事業環境等の変化です。国内外のグループ事業が拡大している中、カントリーリスクを含めたグループ各社の事業環境等を把握したうえで、早期に変化の予兆を捉え、適切に対応していくことが重要と認識しています。

四つ目は、コンダクト・リスクを含め、お客様や社会からの信頼を失うことです。あらゆる業務がお客様や社会につながっていくという価値観のもと、社会環境の変化やお客様の声・ニーズを踏まえて、全役員・職員がお客様本位の業務運営をこれまで以上に実践し続けることが必要です。冒頭で触れた当社の存在意義を踏まえると、これが私たちにとって最も重要であり、常に意識すべきことだと考えています。

そのほかにも、サイバー攻撃や医療検査技術の進歩、先端IT・デジタル技術の進展に伴う競争激化、気候変動なども重要なリスクです。当社では、こうしたさまざまなリスクを洗い出したうえで、収支・健全性等への影響を分析・評価するストレステストを実施し、財務基盤の強化などの検討に活用しています。

引き続き、環境変化を機敏に捉え、先を見越したリスクマネジメントを通じて、グループ全体のより強靭な収益力・財務基盤の構築を図り、社会的役割をさらに発揮することで、あらゆる世代が安心して暮らせる社会の実現を目指していきたいと考えています。

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