ANNUAL REPORT 2021 menu

コーポレートガバナンス

社外役員によるコーポレートガバナンス対談〜コーポレートガバナンスと今後の成長戦略〜

当社では、幅広い経験・見識を有する、社外取締役および社外監査役を選任しており、客観的な視点から経営への監督や助言を受けることで、当社経営の透明性の確保に努めています。

社外取締役の冨田哲郎氏と社外監査役の但木敬一氏に、当社コーポレートガバナンスの取り組みへの意見、今後の発展へ向けた課題等についてお話しいただきました。

冨田哲郎(社外取締役)
但木敬一(社外監査役)

コーポレートガバナンスへの取り組み

当社のコーポレートガバナンスについて、どのように評価しているかお聞かせください。

但木
2001年に米国で発生した巨額の不正会計事件を契機に、コーポレートガバナンスがかなり強く意識されるようになったと思います。この事件以降、不正の防止と会社の収益をあげ、いかに多くを株主に還元できるかがガバナンスの主たる目的となりました。
しかし、今はそれだけでは足りず、コーポレートガバナンスに求められる役割は多様かつ非常に高度なものになったと思います。
現在、日本生命が力を入れて取り組んでいるSDGsやESG投融資のように、環境や社会課題解決が、企業のガバナンスと一体のものとして考えられるようになりました。今や、世界の超一流企業の目標は、単にROEが高まれば良いということではなく、地球や人類の持続性はもちろん、ジェンダー、貧困、健康、福祉、教育といった社会課題に対して、向き合い、貢献していくことが当然になってきています。主要国では、それらを考えない企業へは投資がなされないといった傾向も出てきています。
冨田
確かに、従来のコーポレートガバナンスは、リスクマネジメント、コンプライアンス、内部統制などといった仕組みを整え、まずはそれらを守ろうというものでした。今では、いわば「守り」から「攻め」のガバナンスが求められています。株式会社であれば、株主のことだけを考えるのではなく、さまざまな社会課題に取り組み、従業員の幸せや取引先、投資家の方々のメリットなど、幅広いステークホルダーに対する貢献が強く求められる「攻め」の時代になってきています。
日本生命は相互会社ですので、ご契約者の方々が一番のステークホルダーですが、やはり、その他のステークホルダーに対しても広く貢献していくことが必要ではないでしょうか。私は、日本生命が、非常に早くからこうした取り組みをしてきたという印象を持っています。例えば、植樹活動などの地道な取り組みやスポーツ振興、女性活躍推進、男性の育児休業取得率100%などです。日本生命は社会に対する幅広い貢献を時代に先駆けてやってきた歴史があるため、コーポレートガバナンスも同様に、先駆的な役割を果たしていると感じています。
但木
同感です。日本生命は古くから自社の利益のみを考える経営方針ではなく、自分たちは社会に役立つ企業であるべきだという精神が脈々と引き継がれていると感じています。
ガバナンスは「統治」を意味しますが、人を上から統治するだけでは限界があります。社員自らが自身の会社に誇りや、やりがいを持つことで、主体性が生まれ、同じ想いを持った役職員が集まり、リーダーが共通の目標を掲げれば、一つにまとまった活力ある組織が生まれると考えています。これこそが企業統治の最高の形であり、日本生命が実践してきたことではないでしょうか。
冨田
優れたコーポレートガバナンスの実現には、経営者のリーダーシップと従業員からのボトムアップの融合が必要だと思います。経営者には、先見性や決断力、判断力に加え、高い倫理性が求められるでしょう。従業員にとっては、企業の役割、使命を理解することが大切です。つまり、但木監査役がおっしゃったことに共通しますが、従業員のエンゲージメントが高いこと、すなわち会社の中で自分はどうあるべきかを自ら考え行動できるという、自発的な貢献心を持った従業員が多くいることが重要だと考えています。
日本生命の取り組みの中でも、総代会や懇話会といった場で出たご契約者の方々の声を真摯に受け止め、経営に取り入れようとしている姿勢はコーポレートガバナンスの観点からも良いことだと思います。

当社では、戦略的にグループ拡大を推進していますが、グループガバナンスについてどのようにお考えですか。

但木
国内外にさまざまな分野や機能を持ったグループ会社が数多く存在していますが、人と同様に、それらを一律同じように上から統治するだけでは活力あるグループは生まれません。
まずグループとして、各会社の一つひとつの社会的役割、個性や特徴を理解することが重要です。全て日本生命の画一的規格で統治するのではなく、それぞれの個性や特徴を生かし、自ら伸びていくよう独立性を尊重しながら育てることが大切だと考えます。
これまで築いてきたグループ会社各社の文化、魅力を尊重しながら、グループ全体で果たす社会的役割を自覚し、精神的一体感を醸成することが大事だと思います。
冨田
そうですね。多様化するニーズに応えるために、業種も扱う商品も異なる企業をグループ化しているわけですから、同一の価値観を押し付ける必要はないと思います。だからこそ、いかにグループガバナンスを発揮するかが、非常に重要になってくると考えます。持続的な成長を目指すことは、コーポレートガバナンスの一つの目標です。今後日本では少子高齢化が進むことを踏まえれば、海外に新たな市場を求めることも自然なことです。また、これからは人生のさまざまな場面における幸福度というものが求められる時代ともいえます。子育てに始まり、自身の健康、医療、老後の人生や介護など、さまざまな場面でのサポートが求められます。ニーズが多様化すればするほど、グループとしての力が重要となり、グループガバナンスの真価が問われます。日本生命には従来の枠組みにとらわれず、意欲的にグループ全体での取り組みを進めてほしいと思います。

社外役員の役割について

取締役会における社外役員に求められる役割をどうお考えでしょうか。

但木
日本生命の取締役会では、執行サイドから現状の問題点など、さまざまな検討材料を事前に提示されたうえで、意見を求められるため、非常に発言がしやすい環境だと感じています。一見些細な案件に見えても、将来に関わる問題があれば社内外役員の意見の一致を見るまで論議を続けています。質問に回答しきれない場合は、期限を延ばしてでも納得するまでは決定しないという空気も定着しているように思います。
社内外問わず一体となって活発な意見交換が行われているため、良い結果が生み出せていると感じています。
冨田
各々がはっきりと自分の考えを述べるので、幅広い意見が出ています。私たち社外役員の役割は、各々がこれまで培ってきた価値観をきちんとお伝えすることです。その中で今の日本生命という会社の在り方について社外から見た見解や意見を申しあげるということが何より重要だと考えています。
取締役会では経営計画などにも議論が及びます。外部の視点で参考になる助言を心掛け、可能な限りお力添えができればと努めています。

今後の発展に向けて

人材活躍を進めるにあたり、重要な視点について教えてください。

但木
多様性に即した人材の採用と活用に努めてもらいたいと思います。人種や価値観を問わず、誰もが安心して暮らせるような社会づくりに向けて、生命保険会社として、機関投資家として、日本生命がその一翼を担えるのではないかと期待しています。多様なフェーズを持った社会を支えるためには、良質な職業集団とともに、特異な才能を持った人材が必要になります。才能あふれる人材に来てもらえるよう統一的な登用制度だけではなく、多様性の視点を持った人材の評価、採用制度も検討すべきと考えます。
冨田
確かに、特定の分野で能力のある人材を生かすことは大切ですね。また、職員それぞれが持つ力を引き出し、伸ばせる環境づくりも必要不可欠です。海外経験や新規事業など、活躍・挑戦できるフィールドを広げることも重要と考えます。日本生命は、これからの新しい働き方の先駆的な事例をつくるうえで、大きな可能性を秘めた会社であると期待しています。

今後日本生命がさらに発展していくためには、どのような取り組みが必要でしょうか。

冨田
社会課題を解決するためには、国の力だけでなく、民間の力が必ず必要になります。例えば、2050年のカーボンニュートラル実現という目標の達成に向けては、政府、企業側の努力だけでなく、機関投資家の力が必要となります。日本生命は、国内最大級の機関投資家として、こうした取り組みへの貢献を期待されるでしょう。昨今指摘されている地方企業や中小企業のデジタル化がなかなか進まないなどの問題もあります。それら課題に対しても、引き続き検討してほしいと思います。
また、日本生命は膨大なご契約者のデータを保持しています。情報の取り扱いには十分留意したうえでそれらデータを利活用し、さまざまなジャンルの企業と連携を図り、新しいサポートやサービス開発が次々とできるようになれば素晴らしいと思います。先ほどのグループガバナンスの話とも通じると思いますが、今までの生命保険会社の枠を超えた業種と連携する中で、何か新しい価値創造ができないのかを議論する。難しい課題ですが、積極的に取り組んでもらいたいです。
但木
そのとおりですね。機関投資家としての社会課題解決、そして、日本生命が持つ膨大なデータの利活用は、非常に重要な取り組みであると私も思います。
他方、お客様のニーズは多様化しています。例えば人生100年時代と言われるようになり、その100年を前提とした保険商品開発も進みました。さらに言えば、その先、自分の人生が終わった後のことまで任せる仕組みが考えられないか。自分の遺産を引き継がせたい後継者が絶えてしまうことが少なくない時代のニーズに対応するための仕組みです。
法的な問題もあると思いますが、個人の資産の行く先を見守るようなビジネスの可能性もあるのではないでしょうか。例えば自分の死後、遺された資産の管理によって自分の遺志が果たせるなら、より幸せで充実した人生の終末を迎えられるのではないか。自分の死後は確認できないからこそ、安心できる会社に任せたい。日本生命は信頼できる保険会社ですから、そのようなビジネスの可能性があるなら、一つの挑戦ではないでしょうか。
冨田
そうですね。いわゆる求められる保険の在り方やサービスが本当に多様化しているように思います。人間が幸せになるための条件、あるいは人生のステージごとの安心できるサポートというのは常に変化する永遠の課題です。日本生命にはこれらに対応した商品やサービスを数多く世に送り出せるよう取り組んでもらいたいです。人生100年時代となり、定年退職後の生きがいや充実した人生を送るためのサポートが一層必要な時代になってきています。
お客様幸福度や国民充実度を高めるためにも、これらに即した商品・サービスの在り方を絶えず探求し続けることが、日本生命の大切な役割になると思います。
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