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第25回 人生100年時代の“つながり(夫婦と友人)”

2018年10月1日

高齢期の婚姻状況〜最期まで妻がいる夫、夫を看取り寡婦となる妻

 人生100年を“より良く”生きていくうえでは、人と人との“つながり”は大切です。特に高齢期は、生きがいの面や、暮らしにおける支え合いの面においても重要です。最期まで人とつながり支え合って暮らしていけることが望まれます。その中心になるのは配偶者(夫婦)だと思いますが、高齢期の婚姻状況はどのような実態にあるのでしょうか。今回は、高齢期の「夫婦」、また「親しい友人」の存在に注目して、高齢期の“つながり“について考えてみたいと思います。

 誰とどのようにつながりながら生きていくのがよいかは、人それぞれの価値観によります。生涯独身を貫くことを望む人もいらっしゃるでしょうし、結婚・離婚・再婚を繰り返す人もいるでしょう。ただ、結婚(再婚を含む)している人に限っていえば、最も多くの時間を共有することになるであろう配偶者(夫婦)は、自分の将来において重要な存在であることは言うまでもありません。しかし、互いに年齢を重ねていけば、いつかは望まない別れ(死別)が訪れます。いつまで配偶者と暮らしていけるのでしょうか。
 図表1は、年齢階層別に婚姻状況を調べた結果です。65歳以降に注目すると、男女ともに高齢になるほど死別により「独り身(配偶者なし)」になる人の割合が大きくなっています。ただ、その割合の大きさが男女で大きく異なっていることもわかります。男性の場合、「配偶者あり」の割合は65-84歳まで約8割を維持していますが、女性の場合は75-79歳の時点で約5割(53.1%)に、85歳以上では14.5%まで減少します。10人に約9人は寡婦(夫を亡くした配偶者)となっています。つまり、男性の多くは晩年になっても配偶者とともに暮らしていける一方で、女性の多くは寡婦として晩年を暮らしているということです。平均寿命が男性よりも女性のほう長い、そもそもの夫婦の年齢差(年上の夫と年下の妻が多い)を考えれば当たり前の結果とも言えますが、このような現状だということだけ確認しておきましょう。

図表1:年齢段階別の婚姻状況(平成27年)

資料:総務省統計局「国政調査(平成27年)」

高齢期の友人関係〜友人が少ない日本の高齢者

 次に注目したいことに「友人」の存在があります。前述のとおり、残念ながら配偶者の存在も永遠ではありませんし、子どもの存在も人によって様々だと思います。友人は家族がいても重要な存在ですが、特に家族を失ったときは友人が心の支えになっていくでしょう。では実際、高齢期の友人関係はどのような状況にあるのでしょうか。
 図表2は、高齢者に「@親しい友人の有無」、「A同居の家族以外に頼れる人」について聞いた結果です。アメリカ、ドイツ、スウェーデンの結果と比較して示しています。これを見ると、各国との比較において日本の高齢者は大きな特長が見られます。それは「親しい友人がいない」「頼れる人がいない」高齢者が多いということです。“4人に1人”が親しい友人がおらず、頼れる人が誰もいないと回答する高齢者が16%もいるのです。寡婦の生活が想定される女性についても、男性とそう大きな違いがなく、22%の人が親しい友人がおらず、15%の人が頼れる人は誰もいないと回答しています。A同居の家族以外に頼れる人についての結果の中で、「友人」「近所の人」と答える人の割合が各国との比較で少ないことも日本の高齢者の特徴と言えます。

図表2:「親しい友人の有無」「同居の家族以外に頼れる人」の状況(高齢者の回答、国際比較)

資料:内閣府「平成27年度第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」


 以上、高齢期の配偶関係と親しい友人及び頼れる人の有無についてその実態の一片を見てきましたが、どのように思われたでしょうか。夫婦・家族、友人を含めた人間関係はまさに人それぞれであって何か一概に言える話ではないものの、高齢になって「親しい友人、頼れる人がいない」という状況になってしまう人が1〜2割もいるということは課題視されます。私たち一人ひとりが将来そのようにならないことが望まれます。「誰もいない」と答えた高齢者は、配偶者にしても親しい友人にしても、永遠の別れを積み重ねていった結果、気づけば1人もいなくなってしまった、ということなのでしょう。本人がそれでも平穏な暮らしができるのであればよいですが、友人はいないよりもいたほうが良いと思いますし、人とのつながりは何歳になってからでもつくれるはずです。
 人生100年を最期まで“より良く”生きていくことを考えれば、個人としては、少なくとも気持ちの面で何歳になっても独りにならない努力(意欲)が大切だと思いますし、社会としては、単身高齢者がつながりあえる機会をもっと充実させていくことが必要だと考えます。こうして何歳になってもつながりあえる社会となり、一人でも多くの人が、“最期まで常に誰かと楽しい時間を共有できる人生100年”を築いていただきたいと願っております。

(ニッセイ基礎研究所 前田 展弘)

筆者紹介

前田 展弘(まえだ のぶひろ)

株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員
研究・専門分野:ジェロントロジー(高齢社会総合研究)