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3分でわかる 大人のための長生き応援コラム

第20回 医療とお金

2018年5月7日

社会全体の医療財源の構造

 人生100年時代、高齢期を最期まで安心して過ごすために、「お金」の備えは必要です。前回(第19回)は、「介護とお金」の関係について見てきましたが、今回は「医療」に着目します。病気になれば当然、治療等のためにお金が必要になります。特に、高齢期はその費用が増加することが予測されます。しかし、いったいどれくらい必要になるのでしょうか。もちろん、病気の種類や治療の方法や期間によって、その費用は異なるわけですが、一般的な費用の水準を知っておくことは「備える」ために必要です。公表されているデータ等からその実態を確認してみましょう。

 まず社会全体の医療費について確認しておきたいと思います。直近判明の2016年度における日本の医療費総額は41兆円まで増加しました。この財源は、①個人(患者)の自己負担、②個人と事業者による社会保険料、③公費で賄われています。この財源をもとに公的医療保険制度が維持されて、国民の医療が支えられているのです。個人としては、自己負担額だけに意識が向きやすいですが、社会全体としてこれだけの医療費が必要となっている事実は知っておくべきでしょう。

 その財源(お金)の構造は、一人ひとり個人の視点から眺めてみると、どうなっているでしょうか。つまり、「いくら払って、いくらその受益を得ているか」の構造です。図表1は、年齢階級別に見た一人当たり医療費ですが、高齢になるほど医療費がかかっていることがわかります。高齢になれば医療にお世話になる人も増えるでしょうから、1人当たりで換算すれば、このような結果になるのは当然のことと言えるでしょう。図表2は、年齢階級別に見た一人当たりの負担(社会保険料を含む)及び事業主負担を見たものですが、現役時代に集中して個人及び事業主から医療費財源が拠出されていることがわかります。このように、将来必要とされる医療費を現役時代が多く拠出をすることで、国民一人ひとりの生涯にわたる医療(サービスを受けられる環境)が守られているのです。

図表1:一人当たり医療費

※「医療給付実態調査報告」(厚生労働省保険局)等により作成した平成24年度の数値

資料:厚生労働省保険局「第91回社会保障審議会医療保険部会」資料より引用

図表2:一人当たり患者負担額及び保険料等

※「医療保険に関する基礎資料」(厚生労働省保険局)に基づき作成した平成24年度の数値

資料:厚生労働省保険局「第91回社会保障審議会医療保険部会」資料より引用

医療費の備えは万全に

 全体の傾向を理解したとしても、個人にとっては、「高齢期に医療でいくらお金が必要になるか」、これが大きな関心事だと思います。図表2にある「患者負担額及び保険料」の額が一つの目安ということは言えますが、あくまで平均的な値にすぎません。一見、そんなに多額の支出ではないと安心されたかもしれませんが、それは禁物です。確かに公的医療保険制度によって自己負担が1〜3割であること(負担割合は所得によって異なる)、これに加えて、「高額療養費制度」により負担軽減を受けられることがあります。これは個人にとって非常にありがたい制度でありますが、自己負担上限額までは自己負担しなければならないことを忘れてはいけません。

 本稿では詳細の説明までは割愛しますが、「高額療養費制度」とは何かを説明しますと、この制度は1カ月の間に医療機関の窓口で支払った額が定められた上限額を超えたときに、超えた分を支給(還元)してくれる制度です。例えば、69歳未満で年収370万円〜770万円の人が、月の総医療費が100万円かかり(健康保険対象の場合)、窓口で自己負担3割分の30万円を支払った場合、自己負担上限額87430円1を引いた差額の212570円が高額療養費として戻ってきます。この制度はしっかり把握しておくとよいでしょう。

 その上で留意すべきは、自分が将来どんな病気になるかわからないということです。罹る病気によって費用は異なります。厚生労働省「平成27年度医療給付実態調査」結果から、疾病別1件当たりの医療費(入院時及び入院外での診療報酬点数)が高い疾病を見ると図表3のようになっています。金額までは記載しておりませんが、病気によって必要な費用は大きく異なることは確かです。

図表3:医療費がかかる上位10の疾病・障害

※厚生労働省「平成27年度医療給付実態調査」結果の「第3表:疾病分類別、診療種類別、制度別件数・日数(回数)・点数(金額)」から、「入院」と「入院外」の疾病別1件当たりの費用(診療報酬点数)の合計順位

資料:厚生労働省「平成27年度医療給付実態調査」結果より作成

 全ての人とは言えませんが、多くの人は最期は医療にお世話になります。そのために医療費が必要になります。自分がどの病気に遭遇するか、それはわかりません。だからこそ、安心して穏やかな晩年を暮らすためには医療費に対する相応の「備え」が必要です。民間の生命保険に加入することも一つの対策になると思います。人生100年時代を安心して謳歌していくためにも、万全の備えをしていただくことをお薦めします。

1この年収層の自己負担上限額は「80100円+(医療費-267000円)×1%」なので、80100円+7330円=87430円

(ニッセイ基礎研究所 前田 展弘)

筆者紹介

前田 展弘(まえだ のぶひろ)

株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員
研究・専門分野:ジェロントロジー(高齢社会総合研究)