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3分でわかる 大人のための長生き応援コラム

第21回 葬儀・お墓とお金

2018年6月19日

様々な葬儀スタイルと費用

 人生100年時代、高齢期を最期まで安心して過ごすために、「お金」の備えは必要です。前々回(第19回)は「介護」、前回(第20回)は「医療」とお金の関係を見てきましたが、今回は「葬儀・お墓とお金」の関係に注目します。人生最期のときいくら必要なのか、これは“自分らしく最期まで生きるため”に備えなければならないことと言えるでしょう。公表されているデータ等からその実態を探ってみたいと思います。

 いつか自分が旅立つときが訪れます。そのとき「自分がどのような葬儀を行ってもらいたいか」を考えたことはあるでしょうか。葬儀のあり方は、先祖代々引き継ぐ家系の伝統(宗教等)とも密接ですので、そのことも踏まえた検討が必要ですが、葬儀の形は実に様々です。インターネットで公開されている「葬儀ガイド」1をみると、次のような葬儀のスタイルが紹介されています。

<葬儀のスタイル>
①家族葬・密葬 ②一般葬 ③一日葬 ④火葬式 ⑤骨葬 ⑥社葬・団体葬 ⑦無宗教葬 ⑧自然葬(樹木葬、海洋葬、宇宙葬) ⑨お別れ会 など

 それぞれ簡単に説明しますと、①家族葬・密葬は、親族や親しい友人・知人だけで行う形式、②一般葬は、親族や親しい友人・知人に加えて、会社関係や近所の人など、一般の参列者も呼ぶ形式、③一日葬は、通夜がなく、葬儀・告別式のみを執り行う形式、④火葬式は、火葬炉前に親族や親しい友人が集まって、10分程度の短いお別れをした後、すぐに火葬する形式、⑤骨葬は、火葬した後、遺骨のところに集まって葬儀する形式、⑥社葬・団体葬は、企業や団体が運営の主体となって、費用を負担して行う形式です。また⑦無宗教葬は、特定の宗教・宗派のしきたりによらない形式で、葬儀場の許す範囲内で葬儀を自由に企画・進行できる葬儀で、例えば、思い出の映像を流す、故人が好きだった曲を生演奏するなど演出も自由です。⑧自然葬(樹木葬、海洋葬、宇宙葬)は葬儀の形式であると同時に埋葬の形式でもありますが、これは火葬後、お墓に遺骨を埋葬するのではなく、故人を自然に還す考えから山や海などに散骨する形式です。⑨お別れ会は、遺族や親族だけで行う家族葬・密葬を行った後に、会社関係の方や知人・友人を招いて行う会になります。
 一般的なのは、①家族葬・密葬、②一般葬と思われますが、近年は急速に⑧自然葬(樹木葬、海洋葬、宇宙葬)が増えてきているようです。その背景には、「最後は自然に還りたい」という個人的意向のほか、核家族化や少子化の進行により「子どもに墓の管理で迷惑をかけたくない」「墓を承継する人がいない」などの意識の変化、また経済的な要因が指摘されています。2
では葬儀にかかる費用はどれくらいなのでしょうか。一つの参考データとして、一般財団法人日本消費者協会調べによる葬儀費用の平均額を見ると195.7万円となっています。過年度の調査結果の水準を見ても、おおよそ200万円前後の費用が必要なようです。
また、前述のインターネット情報「葬儀ガイド」で公表されている葬儀のスタイル別の平均価格を見ますと、①家族葬・密葬は109万円、②一般葬は187万円、④火葬式32万円となっています。また⑧自然葬に含まれる海洋葬の場合、散骨にかかる費用としては、ⅰ)個人散骨(家族のみで船をチャーターして散骨する)だと22万円〜、ⅱ)合同散骨(数組の家族が乗船し、合同で散骨する)だと12万円、ⅲ)家族は乗船せず運営会社に散骨を代行してもらう)だと5万円程度のようです。葬儀の費用は、そのスタイル(方法)や規模によって大きく異なるわけですが、あくまで参考までにこうした水準感を知っておくことは有効なことだと思います。

図表1:葬儀費用

資料:一般財団法人 日本消費者協会「第11回葬儀についてのアンケート調査」(2017年1月)より

お墓の相場

次にお墓についてです。自分が入れるお墓があるかどうかで、その準備も費用も異なります。
お墓の種類は様々あり、「承継墓」に入る場合や、お寺や霊園に半永久的に供養をお願いする「永代供養墓」に入る場合があります。後者については、自分一人で入る「個人墓」、夫婦で入る「夫婦墓」、友人同士で入る「友人墓」、さらに血縁・地縁を超えて、いろいろな人と共同で入る(祀られる)「共同墓・合葬墓・集合墓」など様々なタイプがあります。なお、これらに加えて、前述したお墓には入らず散骨(自然葬)してもらうという埋葬の選択肢もあります。
ではお墓を新たに作るとしたらいったいどれくらいの費用がかかるのでしょうか。お墓を管理運営する墓地のタイプや場所、そしてお墓の広さによってその費用は大きく異なるので、一概には言えませんが、一般的には図表2のような水準にあるようです。例えば、都立霊園(公営墓地)で1.8m²の区画にお墓を立てる前提で概算してみると、約320万円という金額が算出されます(墓地使用料約150万円3+墓石約170万円4)。前述の葬儀費用の平均額とこの場合のお墓の費用を合わせると、約500万円が最期に必要な費用となります。ただ、葬儀にしてもお墓にしても、その人に応じてケースバイケースなので、あくまで一つの参考情報として認識いただければと思います。

図表2:墓地・お墓にかかる費用

  • 墓地は次の3つのタイプに分かれます。①寺院が運営管理する「寺院墓地」、②都道府県、市町村など自治体が運営管理している「公営墓地」、③財団法人、宗教法人、民間企業が運営管理している「民営墓地」

資料:参考文献1(P171引用)より

 以上、本稿では僅かな情報に止まりますが、こうして葬儀とお墓のあり方とその費用を眺めてくると、その選択肢と費用の幅は非常に広いことがわかります。それだけに“自分はどうしたいか”を考えておくこと、そしてそのことをエンディングノートの活用を含めて、残された遺族や伝えるべき人にしっかり伝えておくことはとても重要なことではないでしょうか。同時に、最期の自分の理想を叶えるため、また残された人のためにも必要な費用を自分でしっかり準備しておくことも大切です。その費用については生命保険であてがうことも一案でしょう。最期のときに“いい人生だった”、“安心して旅立てる”と思えるように、しっかり備えていただきたいと思います。

  • 1https://sougi.guide/新しいウィンドウ
  • 2週刊エコノミスト「(特集)伸びる終活ビジネス」(2017.10.3号)P25より
  • 3都立霊園「平成28年度申込みのしおり」より
  • 4全国優良石材店の会「2016年お墓のアンケート調査」の全国平均額

【参考文献】
 1:早井千代子「冠婚葬祭 おつきあいとお金のマナー」、㈱西東社、2016年8月

(ニッセイ基礎研究所 前田 展弘)

  • 当社から前田研究員に依頼し執筆していただいたコラムを、当社で編集したものです。
筆者紹介

前田 展弘(まえだ のぶひろ)

株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員
研究・専門分野:ジェロントロジー(高齢社会総合研究)