ANNUAL REPORT 2019 menu

社外役員によるコーポレートガバナンス対談

当社では社外取締役や社外監査役を選任しており、その幅広い知見を経営へ活用するとともに、
経営の透明性を確保しております。
ここでは、社外取締役の三浦惺氏と社外監査役の佐藤良二氏に、当社のコーポレートガバナンスへの取組、
社外役員の役割、今後の経営課題等についてお話いただきました。

取締役(社外取締役) 三浦 惺 取締役(社外取締役) 三浦 惺
監査役(社外監査役)佐藤 良二 監査役(社外監査役)佐藤 良二

コーポレートガバナンスへの取組

当社のコーポレートガバナンスについて、どのように評価しているのかをお聞かせください。

三浦
コーポレートガバナンスでは、リスク回避や不正防止といったチェック機能は非常に大切です。同時に、昨今はグローバルな規模で変化と競争の激化が進んでおり、中長期的な会社の成長・発展という視点も、重要であると考えています。そのためには、各ステークホルダーの立場をふまえ、透明性や公正性を確保しながら、スピーディで建設的な意思決定ができる仕組づくりが大事になるのではないでしょうか。
佐藤
コーポレートガバナンスには、「守り」と「攻め」の視点があると思います。「守り」は経営者の暴走を抑止することで、不祥事が起きる度に守りのガバナンスの重要性が強調される傾向にあります。一方の「攻め」は経営者を律しつつ裁量を担保し、企業価値を高めることで、これも大変重要です。日本生命は、この守りと攻めのバランスがいいと感じています。
三浦
相互会社の最高意思決定機関である総代会が機能しているかどうかが、評価のポイントですね。総代会は重要事項の審議と決議だけでなく、幅広くご意見やご要望をうかがう場でもあります。実際の質疑応答ではサービスの視点だけでなく、経営戦略等、総代が経営をチェックしている様子が見てとれます。また、総代懇談会、ニッセイ懇話会、評議員会等、相互会社ならではの取組も評価できると思います。私もかつて評議員会に参加しましたが、各界の多士済々の方々で構成されており、貴重な意見が多数出ていました。ニッセイ懇話会も総代や本社の経営幹部が出席し、現地で直接ご契約者の声を聞き、質問にも答えています。それぞれの取組が非常に有意義に運営されているという印象です。
佐藤
おっしゃる通り、相互会社で最も大事なポイントは総代会がきちんと機能しているかどうかでしょう。総代選びも、全国から多彩な職種、年齢といったダイバーシティも考えられていますし、総代会での質疑応答も活発です。ニッセイ懇話会等を通じて情報をすくい上げ、それが総代会に反映されていますので、運営もうまくできているのではないでしょうか。

当社は、経営戦略として国内外におけるグループ事業を強化していることから、今後はグループガバナンスが重要であると考えています。

三浦
相互会社は株式会社と形の違いはありますが、グループ経営の重要性は、今後ますます高まっていくと思います。傘下の企業数が増え、グループ運営の仕組も今までより複雑になってくるので、グループガバナンスを効かせなくてはならない点が多々出てくるはずです。また、日本生命とグループ内の個社の経営理念やビジョンの共有化をはじめ、グループ全体と個社別の両方のガバナンスが求められます。それらに対応するには日本生命と各社との間でトップだけでなく、役員や部長といった各層で意思疎通をはかることが重要です。また、グループ内の人事交流も大事になります。単に人材が往来するだけではなく、行った先での昇進など人事の複線化を考えることも、重要だと思います。
佐藤
確かに、経済界全体を見ても、ここ10年ほどはM&Aが年々増加し、グループガバナンスの重要性が急速に高まってきています。日本生命もまさにそうですね。特に海外の子会社は、その先に孫会社が存在するなど目が届きにくい場合が多いものです。監視機能という意味では、組織としての縦と横の連携を密にとることが大事になるでしょう。また、そうした海外の子会社などに問題が起こった場合、日本生命本社まで迅速かつ的確に報告が入るような仕組を徹底させることも必要ですね。

社外役員に求められる役割

コーポレートガバナンスを含め、社外取締役や社外監査役の重要性がより注目されています。

三浦
社外役員はそれぞれ立場が違い、経験も異なりますから、そうした背景をいかして、客観的な立場で率直に意見を言うことが大切だと思っています。私も、自身の経験を基に意見を述べていますが、反省点や失敗経験等もお話したいと思っています。それが、結果としてコーポレートガバナンスに役立てられたらいいですね。
佐藤
社外役員の役割で一番大事なことは、社外の視点で経営を見るということです。経済界や法曹界、学会等様々な分野から人材を起用することで、生命保険業界や日本生命という内側だけではなく、異なる視点で見ることができます。そして、もう1つ大事なことは独立性ですね。社外役員は、経済的にも精神的にも独立性が担保されていますので、自由に意見が言えます。そこが期待されていると思います。
三浦
実際、社外取締役を引受ける前と後では日本生命の印象が違いました。以前は、安定的で紳士的だけれども、経営の変化があまり感じられないと思っていました。ところが社外取締役になってみると、M&A等の事業領域の拡大やIT化を含めた構造改革等、様々な手を打っていることがわかりました。しかも、実に人材が豊富であると感じています。
佐藤
情報の提供も丁寧ですね。社外役員は、社内役員に比べて入手できる情報量が少なく、情報の非対称性が課題だと感じることが多いものです。その点、日本生命は、取締役会で取上げる審議事項や報告事項を網羅的に提供してくれますし、事前の説明も丁寧で、その場で質疑ができることもありがたいですね。また、委員会設置会社でよく問題になる社外役員の情報共有についても、社外取締役委員会があり、お互い社外の役員が情報を共有できる場があるのはいいことだと思っています。私が社外監査役として参加した社外取締役委員会においてもディスカッションがとても活発でした。なお、最近多くの企業で進めている取締役のダイバーシティについては、これから更に取組む課題の1つではないでしょうか。

これからの発展のために

2017年度に掲げた4カ年の中期経営計画「全・進 -next stage-」がこれから後半戦を迎えます。
今後の課題等も含めてご意見をお聞かせください。

三浦
3つほどお話したいと思います。まず先端IT技術の活用です。AIやビッグデータ等は、今後の商品開発におけるベースとなりますから、迅速に取込む必要があります。人生100年時代を迎えた今、商品ニーズが多様化しており、それに対応できるものを、いかにスピーディに提供できるかですね。2つ目は、グループ事業の収益拡大です。国内はもとよりグローバルにも事業領域を広げていくことは必須ですが、グループトータルでいかにシナジー効果を出していくか等、様々な課題が出てきます。従ってグループ運営の仕組づくりも含めて課題をきちんと押さえることが大事になります。そして3つ目は、人材確保ですね。キーワードは、ずばり「多様化」です。採用についても、大きく状況が変化しています。私たちの時代は「就職」ではなく「就社」という意識が高かったのですが、そのイメージが変わってきています。優秀な人材を採用し、頑張って育成しても、将来残ってくれる保証はありません。働き方改革が言われておりますが、人材確保に向けては、採用形態はもちろん、処遇やキャリアプランといった人事制度にも多様化が求められます。「企業は人なり」と言うように、人材が一番大事ですから、採用から育成まで時代にあった取組を早めにしてほしいと思います。
佐藤
商品開発は最も大きな課題ですし、現在のような低金利下での資産運用は大変なことだと思います。しかも低金利は今後しばらく続くことが予想されますので、それに対する覚悟が必要になるかと思います。また、先端IT技術をベースとした全くの異業種企業が保険業界に進出してくることも、荒唐無稽な話ではない時代です。すでにそうしたことも視野に入れているとは思いますが、そのときになって驚かないよう、周辺の動きからは目を離さないでほしいですね。
三浦
同感です。金融業界におけるフィンテックが今では当たり前になっているように、社会はどんどん変化しています。けれども、変わらない、あるいは変えるべきではないこともあるはずです。その両面を見極めながら日本生命らしい成長戦略を描いていく。それがこれからは特に大切になると思います。
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