近年、人々の生活や経済活動の基盤である地球・社会環境が揺らぎつつあり、世界中の人にとって社会経済活動の維持が脅かされかねない状況にあります。とりわけ、気候変動による災害の激甚化は、資産運用上の重要なリスクであり、当社は、投融資先企業の脱炭素化や関連プロジェクトの後押しとなる資金提供と、企業との対話の両輪で、企業と協力して課題解決に取り組んでいます。こうした取り組みによって、個々の企業価値向上だけでなく、市場全体の安定性維持にも貢献し、長期的には当社の資産運用ポートフォリオにおけるリスク・リターン効率の向上にも資すると考えています。
Focus! 責任投融資
サステナビリティ・アウトカムの創出を志向する責任投融資を目指す
当社は機関投資家として、責任投融資を通じ、サステナビリティ・アウトカムの創出によるご契約者利益の拡大と社会課題解決の両立を目指しています。本ページでは、責任投融資の取組推進に携わる職員3名に話を聞きました。
財務企画部 責任投融資推進室 室長 宮本 泰俊(中央)
財務企画部 責任投融資推進室 松本 紅音(右)
融資総務部 大塚 祐希(左)
「責任投融資」とは?
当社は、生命保険事業の基本精神である「共存共栄」「相互扶助」に基づき、お客様の利益を最優先に考え、長期的な視点で堅実な経営に努めています。「責任投融資」は、環境(E:Environment)、社会(S:Social)、ガバナンス(G:Governance)の課題を考慮した資産運用であり、持続的な発展のための国際目標であるSDGs*達成を後押しするものです。この責任投融資の考え方は、当社がこれまで重視してきた「収益性」「安全性」「公共性」に配慮した資産運用の哲学とも、本質的に共通しています。
- *2015年9月に国連総会で採択された、持続可能な発展のために世界が共有して取り組む17の目標と169のターゲットからなる国際目標
当社が責任投融資に取り組む意義
当社では、生命保険事業の基本精神に基づいた資産運用哲学のもと、機関投資家として地球環境・社会課題の解決に貢献する、責任投融資を実行しています。
当社は、ご契約者からお預かりした保険料を運用する国内最大級の機関投資家であり、幅広く長期目線で投資を行うユニバーサル・オーナーです。投融資において、投融資先の個々のリスクを考慮する分散投資だけではなく、あらゆる企業を脅かす全体的なリスクを考慮していく責任が、当社にはあると考えています。こうした考えのもと、今年度、当社はSDGsの要素や生命保険会社の立場から課題を抽出し、資産運用ポートフォリオへの影響と投融資で解決可能かどうかの2軸を基に、「気候変動」「自然資本」「地域経済」「グローバルヘルス(公衆衛生)」「人的資本」「人権尊重」の六つを資産運用のサステナビリティ重点取組テーマに設定しました。今後も当社は、地球環境・社会課題解決への貢献と収益性とのバランスを考慮しながら、『誰もが、ずっと、安心して暮らせる社会』を実現できるような、サステナビリティ・アウトカムの創出を志向する責任投融資を目指してまいります。
責任投融資の取組推進・情報発信
責任投融資に関する企画・推進・調査の役割を担う責任投融資推進室で、資金使途がSDGs等の環境・社会課題解決テーマにつながる「テーマ投融資」の運営を担当しています。投融資を実行する部署と連携をとり、投融資候補の案件が、どのように社会課題の解決につながるかを調査・分析し、当社の考えるテーマ投融資に該当するかを判断しています。
また、投融資案件が創出したサステナビリティ・アウトカムの開示にも携わっています。これは、当社が投融資を行った企業・プロジェクトにおける環境や社会への貢献度を定量的に計測し、対外公表するものです。投融資で創出したポジティブな影響を示すことで、当社が、どれほど世の中への課題解決に寄与できたかを実感すると同時に、機関投資家としての責任を感じています。
こうした取り組みをご契約者をはじめとした多くのステークホルダーに知っていただけるよう、対外への情報発信にも力を入れています。当社ホームページや冊子での情報開示に加え、2023年には、金融機関等の環境・社会・経済へのインパクトを与える取り組みを表彰する、環境省の第5回「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」において、投資家部門の最優秀賞である金賞(環境大臣賞)を受賞しました。
責任投融資は社会の注目度が高い一方で、取り巻く情報や状況がめまぐるしく変化しています。国内外の最新の情報を取り入れ、当社の取り組みに反映し、情報発信を行うことで、責任投融資のさらなる推進にこれからも貢献できればと思います。
融資部門での具体取組 ーニッセイ・サステナブルファイナンスの推進ー
融資部門の企画・執行を担う融資総務部では、責任投融資の一層の推進に向けた融資領域の取組高度化を進めており、2022年から「ニッセイ・サステナブルファイナンス*」の取扱いを開始しました。
私は、現在、このニッセイ・サステナブルファイナンスの評価業務を担当しています。評価にあたっては、企業のサステナビリティ取組について、国際的な原則・ガイドラインへの適合性確認や、環境・社会に与える影響分析を行っています。案件によっては、実際に企業と面談し、対話を通じて新たな目標を設定していただいたケースや、実際に、自身の評価した案件がメディアで取り上げられたこともある等、評価担当者としてのやりがいを実感しています。
評価を実施するにあたっては、加速度的に変化するサステナビリティ経営の潮流や他社事例等の情報収集も必要となるため、情報感度を高めることを常に意識しています。具体事例の積み上げから得られた知見・ノウハウを生かし、融資営業フロント向けの研修に自ら講師として登壇し情報共有を図る等、部門全体の知識の底上げにも取り組んでいます。
今後もニッセイ・サステナブルファイナンスのさらなる推進を通じて、持続可能な環境・社会・経済の発展を資金提供の面から支えていきたいです。
- *「ニッセイ・グリーンローン(2022年8月取扱開始)」、「ニッセイ・サステナビリティ・リンク・ローン(2023年6月取扱開始)」、「ニッセイ・ポジティブ・インパクト・ファイナンス(2023年6月取扱開始)」の総称
- ※当インタビューは2024年7月末時点のものです