赤道原則への取り組み
当社は2019年4月に、「赤道原則(Equator Principles)」を採択しました。
赤道原則とは
赤道原則とは、大規模な開発・建設を伴うプロジェクトに関連する融資を行う際に、プロジェクトが環境・社会に及ぼす影響を特定・評価し、管理するため、金融機関が中心となり策定した枠組みです。
具体的には、世界銀行グループの一員である国際金融公社(IFC)が定める「IFCパフォーマンススタンダード」および「世界銀行グループEHS(環境・衛生・安全)ガイドライン」にもとづき、各金融機関独自のガイドラインを文書化するとともに、事業者によるプロジェクトの環境・社会配慮の状況を確認するための内部管理体制を構築するものです。
赤道原則の対象は、一定の基準を満たすプロジェクトファイナンス等*であり、プロジェクト所在国や業種を問わず適用されます。
赤道原則を採択した金融機関は、融資実行に際して、策定したガイドラインの遵守状況を確認し、遵守しないプロジェクトに対しては融資を行いません。
2024年3月末現在、世界で約130の金融機関が赤道原則を採択しており、国際的なプロジェクトファイナンスの多くをカバーしております。
*赤道原則の適用対象は以下のとおりです
- プロジェクトファイナンス
返済原資が原則として特定のプロジェクト・事業から生み出されるキャッシュフローに限定されるファイナンス手法を用いた融資 - プロジェクト紐付きコーポレートローン
資金使途の過半が特定のプロジェクト向けであるコーポレートローン - ブリッジローン
将来的にプロジェクトファイナンスや特定プロジェクト向けのコーポレートローンに借換えられる予定のつなぎ融資 - プロジェクト紐付きリファイナンス
過去赤道原則が適用された既存の融資を新たに置き換えることを目的とした融資 - プロジェクト紐付き買収ファイナンス
過去赤道原則が適用されたプロジェクトやその支配権を有する事業会社の買収を目的とする融資
詳細は赤道原則の公式ウェブサイトをご覧ください。
IFCパフォーマンススタンダード
IFCが定めた、プロジェクト実施者向けの環境・社会ガイドラインであり、以下の8項目で構成されています。
PS1: 環境・社会に対するリスクと影響の評価と管理
PS2: 労働者と労働条件
PS3: 資源効率と汚染防止
PS4: 地域社会の衛生・安全・保安
PS5: 土地取得と非自発的移転
PS6: 生物多様性の保全および自然生物資源の持続的利用の管理
PS7: 先住民族
PS8: 文化遺産
詳細はIFCの公式ウェブサイトをご覧ください。
世界銀行グループ EHS(環境・衛生・安全)ガイドライン
世界銀行グループが定めた、プロジェクトを実施する際に遵守すべき「環境(Environment)」「衛生(Health)」「安全(Safety)」に関する基準です。全産業に共通する「一般EHSガイドライン」と、産業セクター特有の指標を含む「産業セクター別ガイドライン」で構成されています。
詳細はIFCの公式ウェブサイトをご覧ください。
赤道原則採択の背景
当社は、生命保険会社としての使命や公共性を踏まえ、環境や地域・社会と共生し、経済・企業と安定的な成長を共有していく視点を重視しており、資産運用においては、環境・社会・ガバナンスの要素を考慮して行う、責任投融資を強化しています。
2013年より取組を開始したプロジェクトファイナンスについては、2017年にストラクチャードファイナンス営業部を新設し、海外プロジェクトファイナンスへの取組実績も順調に積み上げています。一方で、大規模開発を伴うプロジェクトは、自然環境や地域社会に対して大きな影響を及ぼす可能性があるため、プロジェクトファイナンス等の意思決定時に環境・社会面への影響について十分に配慮することを定めた赤道原則を、2019年4月に採択しました。
当社における具体的な取り組み
社内運営体制
当社は赤道原則の採択にあたり、融資実行に関する社内方針・手続きに赤道原則を組み込むとともに、赤道原則を踏まえた環境・社会への配慮方針および環境・社会リスクの評価手順を定めた「環境社会リスク評価マニュアル」を制定しております。
本マニュアルに従い、貸付担当部が、環境・社会リスクの一次評価を実施し、財務審査部が環境・社会リスクの二次評価を実施しております。
環境・社会リスク評価の実施
貸付担当部および財務審査部は、赤道原則の適用対象となる案件について、当社の「環境社会リスク評価マニュアル」にもとづき、顧客によるプロジェクトの環境・社会への配慮が、赤道原則の求める水準を満たしているか否かを確認する環境・社会リスク評価を実施します。
具体的には、最初に、赤道原則の原則1に従い、プロジェクトの環境・社会に対する潜在的なリスクと影響度合いを評価し、その結果に応じて以下のカテゴリーを付与しています。
原則1 | レビューおよびカテゴリーの付与 |
---|
カテゴリー | 定義 |
---|---|
A | 環境・社会に対して重大な負の潜在的リスク、または、影響を及ぼす可能性があり、そのリスクと影響が多様、回復不能、または前例がないプロジェクト。 |
B | 環境・社会に対して限定的な潜在的リスク、または、影響を及ぼす可能性があり、そのリスクと影響の発生件数が少なく、概してその立地に限定され、多くの場合は回復可能であり、かつ、緩和策によって容易に対処可能なプロジェクト。 |
C | 環境・社会に対しての負のリスク、または、影響が最小限、または全くないプロジェクト。 |
その後、付与したカテゴリーに応じて、赤道原則の遵守状況を確認します。例えば、最もリスクが高いカテゴリーAを付与したプロジェクトについては、赤道原則の原則2から原則10までの各原則が求める環境・社会配慮が実施されていることを確認します。確認結果を踏まえ、今後の誓約事項を融資契約に反映することについてお客様と合意しています。
原則2 | 環境・社会アセスメントの実施 |
---|---|
原則3 | 適用される環境・社会基準の遵守 |
原則4 | 環境・社会マネジメントシステムの構築、アクションプランの策定 |
原則5 | ステークホルダー・エンゲージメントの実施 |
原則6 | 苦情処理メカニズムの構築 |
原則7 | 独立した環境・社会コンサルタントによるレビューの実施 |
原則8 | 誓約事項(コベナンツ)の設定 |
原則9 | 独立した環境・社会コンサルタントによるモニタリングと報告の実施 |
原則10 | 情報開示と透明性の確保 |
赤道原則適用実績
2023年4月1日から2023年12月31日にフィナンシャル・クローズした赤道原則適用案件は以下のとおりです。 これらの案件について、前述のプロセスを経て、赤道原則の充足を確認しております。
プロジェクトファイナンス案件
2023年4月1日から2023年12月31日の間にフィナンシャル・クローズしたプロジェクトファイナンスは1件でした。内訳は下表のとおりです。
カテゴリー別件数 | |||
---|---|---|---|
カテゴリーA | カテゴリーB | カテゴリーC | |
- | - | 1 | |
カテゴリー別件数の内訳 | |||
セクター | カテゴリーA | カテゴリーB | カテゴリーC |
鉱業 | - | - | - |
インフラ | - | - | - |
石油・ガス | - | - | - |
電力 | - | - | - |
その他 | - | - | 1 |
地域 | カテゴリーA | カテゴリーB | カテゴリーC |
米州 | - | - | 1 |
欧州中東アフリカ | - | - | - |
アジア太平洋 | - | - | - |
指定国/指定国以外の国 | カテゴリーA | カテゴリーB | カテゴリーC |
指定国 | - | - | 1 |
指定国以外の国 | - | - | - |
独立したレビュー | カテゴリーA | カテゴリーB | カテゴリーC |
有り | - | - | - |
無し | - | - | 1 |
プロジェクト紐付きコーポレートローン案件
対象無し。
プロジェクトファイナンスアドバイザリー業務
対象無し。
赤道原則遵守状況のモニタリング
契約締結時に融資契約書に反映した誓約事項については、お客様より提出される定期報告書等を確認することで、融資期間を通じて誓約事項の遵守状況を定期的に確認します。なお、誓約事項には環境・社会関連法規制やアクションプランの遵守等が含まれます。 2019年の赤道原則採択以降、赤道原則適用対象プロジェクトについては、上記方針に従ったモニタリングを実施しております。
社内研修の実施
社内マニュアルの整備に加え、赤道原則の概念および環境・社会リスク評価の実施フローに対する理解を深めるために、定期的に貸付担当部を主な対象とした社内研修を実施しております。 今後も社内研修の実施等を通じて、環境・社会配慮に対する社内意識の向上に努めてまいります。