当社は、持続可能な社会の実現に向けて、2017年3月にPRIに署名しています。
2019年の活動を対象とした2020年のPRI年次評価においては、「戦略とガバナンス」「上場株式の投資プロセス」「上場株式のアクティブオーナーシップ」「不動産投資」の各分野で、最高評価の「A+」を2年連続で獲得しました。
2021年7月には、当社の木村武(海外事業企画部兼総合企画部兼財務企画部審議役)がPRIの理事に就任しました。
ESG投融資
関連するサステナビリティ重要課題 |
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当社は創業以来、「共存共栄」「相互扶助」という生命保険事業の基本精神にもとづき、お客様の利益を最優先に考え、長期的な視点で堅実な経営に努めるとともに、資産運用においても、社会公共性に資する投融資を実施してまいりました。
環境(E:Environment)、社会(S:Social)、ガバナンス(G:Governance)の課題を考慮するESG投融資は、SDGs*達成に向けた取組みを投融資の面から後押しするものであると同時に、当社が重視してきた収益性、安全性に加え公共性にも配慮した資産運用と本質的に同根をなし、中長期的な観点から、従来の投融資判断を高度化するものだと考えております。
近年では、2017年3月に国連責任投資原則(Principles for Responsible Investment(PRI)*)に署名するとともに、「ESG投融資の取組方針」を策定しました。2021年3月には、ESG投融資全般を推進する組織として「ESG投融資推進室」を設置しました。
引き続き、ESG投融資の取組を推進し、持続可能な社会の実現への貢献と運用収益向上の両立を目指してまいります。
*SDGsとは、2015年9月に国連総会で採択された、持続可能な発展のために世界が共有して取り組む17の目標と169のターゲットからなる国際目標です。 *PRIは、持続可能な社会の実現を目的とし、機関投資家等がESG課題を投資の意思決定に組込むことを提唱する原則です。
また、当社では、気候変動を資産運用上の重要なESGリスクと捉え、資金提供や対話を通じて投融資先企業の脱炭素化に向けた取組みを後押ししてまいりました。こうした中、気候変動への対応を一層強化する観点から、2050年に温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す日本政府の方針に賛同するとともに、資産運用ポートフォリオにおける排出量(※)について、2050年にネットゼロとすることを目指し、2030年の中間目標を設定しております。
- ※投資先排出量:内外上場株式・内外社債・不動産
2030年中間目標 | |
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総排出量 |
▲45%以上削減(2010年比) |
インテンシティ* |
▲49%以上削減(2020年比) |
- *投資1単位当たりの排出量、総排出量÷投資残高
当社のESG投融資に関する取組みの詳細は下記ESGレポートをご覧下さい。
ESGレポート | |
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2021年 |
- ESG投融資の取組方針
- 主なESG投融資手法
- イニシアティブへの参加
- テーマ投融資
- インテグレーション
- エンゲージメント
ESG投融資の取組方針
本社は、生命保険会社としての社会的責務を踏まえ、すべての資産において、資産特性・地域特性に応じ、中長期的な視点から、環境・社会・ガバナンスの観点を考慮した資産運用を行います。そのような資産運用を行うことで、環境や地域・社会と共生し、世界経済・企業と持続可能な成長を共有するとともに、長期安定的な運用収益の確保に努めてまいります。
- すべての資産における運用プロセスでESGの観点も考慮し、持続可能な社会の実現への貢献と長期安定的な運用収益の確保の両立に努めてまいります。また、ESGをテーマとする債券投資や融資等においては、資金使途が環境・社会課題の解決に資するかといった観点を確認するほか、環境・社会に配慮した不動産投資にも取り組んでまいります。
- 投資先企業との建設的な対話において、ESGをテーマとする対話を行うとともに、適切なスチュワードシップ活動を実施し、投資先企業の持続可能な成長を後押ししてまいります。
- 投資先企業との対話において、財務情報だけではなく、ESGの観点も含む非財務情報の開示充実を求めるとともに、適切な情報開示の在り方についても調査、研究してまいります。
- グループ会社とのESG投融資ノウハウの共有や、署名企業や業界団体等との情報交換、先進事例の研究等を通じ、ESG投融資における運用プロセスの共有や改良に努めます。
- ESG投融資実施状況の公表や、ESGに関する国際的な会議等への参加を通じた意見発信等、ESG投融資に関する活動内容について積極的な発信を行い、ESG投融資市場の活性化に貢献します。
主なESG投融資手法
当社では、「ESG投融資の取組方針」のもと、資産特性や地域特性に応じ、ひとつの手法に偏ることなくさまざまな手法をバランスよく活用することで、「収益性の確保」「持続可能な社会の実現」を両立し、お客様利益の拡大に努めています。
<日本生命のESG投融資>
■インテグレーション
当社では、資産運用収益の長期・安定的な拡大のためには、環境・社会・ガバナンスなどのESG要素を考慮することが重要だと考えており、すべての資産の運用プロセスで、ESGの要素を組み込んでまいります。
資産特性に応じた方法でESG情報を収集・評価するとともに、企業価値や信用力に影響を与えるかといった観点でESG評価を加味し、財務分析等の従来の分析と合わせて投融資判断を行います。
ESG評価については、長きにわたり同領域に取組んできたニッセイアセットマネジメントのノウハウも活用します。
<株式>
- 投資先企業との対話を通じて得た情報やESG評価機関の情報等を基に、投資先企業のESG取組みを評価します。
- 企業分析における定性評価に、投資先企業の企業価値に影響を与えるかという観点でESG評価を加味し、収益予測やバリュエーションの定量評価と合わせて投資判断を行います。
<融資>
- 融資先の企業訪問を通じて得た情報等を基に、融資先企業のESG取組みを評価します。
- 企業分析における定性評価に、融資先企業の信用力に影響を与えるかという観点でESG評価を加味し、財務分析等の定量評価と合わせて案件審査を行います。
- プロジェクトファイナンスにおいては、赤道原則も踏まえ、環境・社会リスクにも留意した案件審査を行います。ESGの要素も踏まえて社内格付を付与するほか、個別の案件審査においてもESG要素を考慮します。
<国債>
- 国際統計やESG評価機関の情報等を基に、投資先のESG取組みを評価します。
- 投資対象の分析における定性評価に、投資先の信用力に影響を与えるかという観点でESG評価を加味し、経済・財政分析や金利水準等の定量評価と合わせて投資判断を行います。
<社債>
- 投資先企業との対話を通じて得た情報等を基に、投資先企業のESG取組みを評価します。
- 企業分析における定性評価に、投資先の返済能力に影響を与えるかという観点でESG評価を加味し、財務分析や金利水準等の定量評価と合わせて投資判断を行います。
<不動産>
- 環境に配慮した建築基準を設けるとともに、省エネ・CO2削減に向けた機器導入等を進め、投資不動産における環境・社会認証を積極的に取得します。
- 不動産施工会社の選定にあたっては、工事実施や資材調達における環境・社会配慮の取組み状況を確認します。
<外部委託>
- 運用戦略や資産特性も踏まえつつ、委託先のESGに関する方針やESGインテグレーション等の取組状況について確認し、投資判断において考慮します。
- ※社債投資等の一部運用機能を、2021年3月より子会社であるニッセイアセットマネジメントに移管しておりますが、上記内容に沿ってインテグレーションを実施しております。
■エンゲージメント
長期投資を行う機関投資家として、スチュワードシップ活動において、株式や債券の投資先企業との建設的な対話に取組むことで、中長期的な企業価値向上を促し、その果実を、株主還元や株価上昇、社債の安定的な元利償還といった形で享受して運用収益の拡大に繋げるとともに、「安心・安全で持続可能な社会」の実現を目指しております。また、これまで以上に持続的な企業の成長を支援していく観点から、ESGを主なテーマとする対話活動を推進しています。
なお、議決権行使の賛否判断を行う際には、定量的な基準に基づき画一的に判断するのではなく、対話を通じて把握した個別企業の状況や改善に向けた取組状況等を踏まえ、きめ細かく判断することとしております。
また、債券投資では、ESG課題をテーマとした対話に加え、投資機会の創出に向け、発行体へESG債等の発行の働きかけも行っています。
■テーマ投融資
資金使途がSDGs達成のテーマに紐づく投融資について、収益性確保を前提に、積極的に実施しています。実施にあたっては、資金使途の確認等のモニタリングを行っています。
前中期経営計画(2017-2020)においては、ESGテーマ投融資の数量目標7,000億円を設定し、約1年前倒しで達成しました。現中期経営計画(2021-2023)では、新たに2017年度からの累計投融資実施額1兆7,000億円の目標を設定し、取組を進めております。そのうち、グリーン・ファイナンスやトランジション・ファイナンス等を対象とする脱炭素ファイナンス枠を、5,000億円設定しています。(2021-2023)
<インパクト投資>
経済的リターンの獲得と同時に環境・社会へのポジティブなインパクトの創出を目指し、更にその成果の計測を行うインパクト投資にも取り組んでいます。今後も、世界の先進的な投資家と情報交換を行いつつ、投資を拡大してまいります。
<ESGテーマ投融資目標1兆7,000億円における進捗状況>
2017年4月~2022年3月 | |
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ESGテーマ投融資 | 1兆3,572億円 |
■ネガティブ・スクリーニング
生命保険事業の使命や公共性に鑑み、クラスター弾や生物兵器、対人地雷、化学兵器の製造を行っている企業に対する投融資を禁止しています。
また、国連で採択されたSDGsやパリ協定などを受け、国際的に気候変動への関心が急速に高まっている状況をふまえ、気候変動への影響が大きい石炭火力発電事業への新規投融資については、国内外問わず取り組まない方針としています。
■その他
<環境に配慮した不動産投資>
不動産投資では、ビルの新築時や設備更新の際にエネルギー効率の高い機器を積極的に取り入れる等、環境に配慮した投資を行っています。また、BELS*等の第三者認証の取得を通じた省エネ性能の見える化も推進しております。
*Building-Housing Energy-efficiency Labelling Systemの略称で、国土交通省が定めた「建築物の省エネ性能表示のガイドライン」に基づき、建築物の省エネ性能を第三者機関が客観的に評価し、5段階で表示する制度です。
<CSRローン>
地球環境に配慮した取組を行っている個人や企業のお客様、子育て支援に積極的な取組を行っている企業のお客様への融資の金利を優遇することで、その支援を行っています。
イニシアティブへの参加
<国連責任投資原則(PRI)への署名>
<気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同>
当社は、2018年12月に、金融安定理事会により設置されたTCFDの提言へ賛同しました。
TCFD提言が推奨する気候変動に係る「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」等の各項目に関する開示の充実を図るとともに、機関投資家(資産保有者)として、投資先に対する開示の働きかけ等を行い、持続可能な社会の形成に寄与してまいります。
<赤道原則の採択>
当社は、2019年4月に、プロジェクトファイナンス等における環境・社会配慮の国際的な枠組みである「赤道原則」をアジアの保険会社として初めて採択しました。赤道原則の採択に伴い、プロジェクトファイナンス等の意思決定のプロセスにおいて環境・社会影響の評価を行うとともに、融資実行後に遵守状況のモニタリングを行っていきます。
<ESG情報開示研究会への参加>
当社は、2020年6月に、ESG情報開示に関する研究活動を行うESG情報開示研究会へ参加しました。
<ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス(NZAOA)への加盟>
当社は、2021年10月に、気候変動に関する国際的なイニシアティブであるネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス(NZAOA)に加盟しました。
NZAOAへの加盟を通じ、国内外の投資家とも協働し、国際社会で議論されている気候変動に関する科学的分析や計測手法等について最新の情報を獲得しながら、資産運用ポートフォリオにおける温室効果ガス排出量削減の取り組みを進めてまいります。
<Partnership of Carbon Accounting Financials(PCAF)への加盟>
当社は、2022年3月に、資産運用ポートフォリオにおける温室効果ガス排出量の計測・開示手法を標準化することを目的としたイニシアティブであるPartnership of Carbon Accounting Financials(PCAF)に加盟しました。
PCAFへの加盟を通じ、国内外の金融機関とも協働し排出量の測定ルールの策定議論に関わりながら、排出量の計測・開示手法を高度化し、資産運用ポートフォリオにおける排出量削減の取り組みを進めてまいります。
これまでの主なESG投融資事例
<テーマ投融資>
インパクト投資
環境領域(E)へのテーマ投融資 | 関係の深いSDGsゴール* |
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社会領域(S)へのテーマ投融資 | |
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*SDGsのうち当社が投融資を通じて貢献につながると考える主なゴールです。
インパクト投資
脱炭素ベンチャー投資ファンドへのインパクト投資 当社は、脱炭素ベンチャー投資ファンドに投資しました。 (2022年3月) |
CP Climate Impact Fund managed by SVB CP Climate Impact GP, LLC |
脱炭素ファンドオブファンズへのインパクト投資 気候変動問題に対応するプライベートエクイティファンドへの投資を通じて、脱炭素社会の実現に資する未公開企業等に投資を行います。 (2022年3月) |
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脱炭素ファンドへのインパクト投資 当社子会社であるNLGIA社が運用するファンドを通じ、TPG社が運用する脱炭素ファンドに投資しました。 (2021年11月) |
![]() 提供:TPG社 |
ソーシャル・インパクト・ボンドへの投資 株式会社ドリームインキュベータが設立したアジア最大のソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)ファンドに投資しました。 (2021年7月) |
提供:株式会社ドリームインキュベータ |
健康・医療領域のベンチャーファンドへの投資を通じたインパクト投資 当社子会社であるニッセイアセットマネジメントが運用するファンドを通じ、Grove Street社の関連会社が運用するファンドに投資しました。 (2020年9月) |
![]() 出典:Grove Street社 |
プライベートエクイティファンドを通じたインパクト投資 当社子会社であるNLGIA社が運用するファンドを通じ、インパクト投資の先進的な運用者であるTPG 社の関連会社が運用するファンドに投資しました。 (2020年7月) |
![]() (イメージ図) |
環境領域(E)へのテーマ投融資
米国での再生可能エネルギーインフラへの投資 当社子会社であるNLGIA社を通じ、サンライフ社が主催する共同投資グループを経由して再生可能エネルギー分野に投資しました。 (2021年10月) |
![]() ![]() ![]() ![]() 提供:サンライフ社 |
グリーンローンの実行 日本ロジスティクスファンド投資法人および飯野海運株式会社に対し、当社にとって初めてのグリーンローンを実行しました。 (2021年8月) |
![]() ![]() ![]() 提供:日本ロジスティクスファンド投資法人 |
秋田での洋上風力発電プロジェクトへの融資 当プロジェクトは、国内初の商業用洋上風力発電プロジェクトであり、再生可能エネルギーの活用拡大を支えるものです。 (2020年2月) |
![]() ![]() ![]() (完成イメージ図) |
社会領域(S)へのテーマ投融資
豪州での鉄道保守運営プロジェクトへの融資 当社は、豪州ニューサウスウェールズ州における鉄道保守運営プロジェクトへ融資しました。 (2022年3月) |
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東京大学の「東京大学FSI債」への投資 当債券は、SDGsの達成に資するさまざまな研究教育プロジェクトFSI(Future Society Initiative:未来社会協創)に充当され、「ポストコロナ時代の新しいグローバル戦略を踏まえた研究」にかかる最先端大型研究施設の整備や、「安全、スマート、インクルーシブなキャンパスの実現」に向けたウィズコロナ・ポストコロナ社会に適したキャンパス整備等に活用されます。 (2020年10月) |
![]() ![]() ![]() 提供:東京大学TAOプロジェクト |
<インテグレーション>
サステナビリティ・リンク・ローンの実行 東京センチュリー株式会社に対し、当社にとって初めてのサステナビリティ・リンク・ローンを実行しました。 (2021年9月) |
![]() (京セラTCLソーラー合同会社が運営する太陽光発電所) |
ニッセイアセットマネジメントと海外現地法人が連携したインテグレーションファンドへの投資 当社は、ニッセイアセットマネジメントが当社グループの海外現地法人と連携し、運用するファンドへの投資を実施しています。当取組を通じて、グループ会社とのESG投融資におけるノウハウの共有や運用プロセスの共有・改良を実施していき、日本生命グループとして持続可能な社会の実現に貢献していきます。
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環境に配慮した不動産投資 ビルの新築や設備更新の際に省エネルギーに資する設備の導入等を積極的に行っており、日本生命丸の内ガーデンタワーが環境・社会への配慮がなされた不動産として、2014年度にDBJ Green Building認証の「five stars」*、2015年度にLEED-CS(テナントビル版)の「本認証(ゴールド)」*を獲得しています。 |
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健康・安全性に配慮した不動産投資 日本生命浜松町クレアタワーが、世界的な健康・安全性の認証である「WELL Health-Safety Rating(WELL健康安全性評価)」*を取得しました。保険会社としての当該認証の取得は初となります。
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CSRローン 環境に配慮した取組を行っている個人や企業のお客様を支援する観点から金利優遇制度を設けています。 また、子育て支援に積極的な取組を行っている中小企業のお客様を支援する観点から金利優遇制度を設けています。 |
<エンゲージメント>
日本版スチュワードシップ・コードに関する取組 当社では、スチュワードシップ活動を行う中で、投資先企業と、経営計画や事業戦略、株主還元に加え、ESGを主なテーマとする対話活動を推進しております。 |