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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第74回 介護しながら仕事を続けられると思う社員は22.1%

2016年4月1日

介護を担う人々の増加

 高齢化の進行にともない、介護保険制度の要介護者・要支援者の数は年々増加し、あわせて介護を担う者も大きく増加しています。今後、働きながら家族等の介護を担う人々が一層増加することが予想されるなか、安倍政権においても、「一億総活躍社会」の実現に向けた「新・三本の矢」の一つとして、介護離職ゼロを目指す「安心につながる社会保障」が打ち出されています(※1)。

 一方、介護をしながら、現在の勤務先で仕事を続けることができるかどうかを、介護をしている、もしくは介護する可能性がある40〜50代の社員にたずねた結果をみると、「続けられると思う」は22.1%にとどまっています。逆に最も高いのは「わからない」(42.2%)で、「続けられないと思う」も35.2%にのぼります(図表1)。

図表1 介護をしながらの就業継続見込み

(注) 「現在も介護をしている」もしくは今後5年間に「介護する可能性がかなり高い/少しある」社員について。
(資料) wiwiw「仕事と介護の両立支援事業 社内アンケート(事前)」(平成26年度 厚生労働省委託事業)より。

介護に直面する前に、準備しておきたいこと

 一般に、介護はいつ始まるか予測がつきにくく、突然直面することも珍しくありません。介護に直面すると、にわかにやるべきことが山積し、介護者は多忙と心労で疲れきってしまうケースも珍しくありません。事前の情報装備や心構えがないままに、こうした事態に直面するとパニックになり、必要な両立体制を築く前に離職してしまうことも懸念されます。

 そのような事態に陥らないように、介護に直面する前に、社員が自ら準備しておくと有益だと考えられる事項を以下に列挙しましたので、参考にして頂けると幸いです。介護対象となる家族等の経済的基盤が弱い場合には、これらに加えて、経済的補助を行うための準備も必要になるかもしれません。

  • 公的介護保険制度や介護サービスに関して、基礎知識を持つ
  • 要介護になる可能性がある介護対象者(親等)が居住する、地域の介護サービスについて情報を収集する
  • 勤務先の介護支援制度について、情報を収集する
  • 介護対象者(親等)のことについて知り、関係者(親、配偶者、きょうだい等)と介護の方向性について話し合う
  • 働き方を見直す(業務内容の共有化、業務プロセスの効率化等)

 介護に関してある程度事前の情報装備を行っておくほうが、実際介護に直面した後、仕事と介護を両立しやすくなります。まず、介護サービスを受けるためには要介護認定が必要で、その窓口は地域ごとに設置されている地域包括支援センターになる等、公的介護保険制度や介護サービスに関する基礎的な知識を備えておくことが求められます。あわせて、要介護になる可能性がある介護対象者(親等)が居住する地域の介護サービスについて、その地域の地域包括支援センター等を通じて情報を収集することも、有効な事前準備となるでしょう。勤務先の介護支援制度についても、もちろん一通り知っておく必要があります。

 また、介護を1人で抱え込むと、介護に対する負担感が増大し、仕事と介護の両立に苦悩することになりかねません。いざという時に他の家族やきょうだい等と介護の分担体制を構築できるように、関係者(親、配偶者、きょうだい等)と、介護に直面したときにどのようにするかを話し合っておくことは不可欠です。

仕事と介護の両立

 さらに、仕事と介護の両立に向けては、職場においても、家庭においても効率的に時間を使うことが、より強く求められるようになります。介護に直面した時に困らないように、業務内容の共有化、業務プロセスの効率化を図る等、普段の働き方を見直すことは重要です。家族で介護を分担する際には、家事の分担も必要になってきます。自分に必要な家事はもちろん、家族に関わる家事をも担えるように、普段から家事力を向上させておく必要があります。

 働きながら介護を担う者の年齢構成をみると、50代が約4割と最も高く、次に60代・40代が約2割で続いていますが、40歳未満も12.4%と約30万人にのぼります(※2)。新社会人の皆さんにとっても、介護は他人ごとではありません。事前の情報装備は有益ですし、一朝一夕にはできない働き方の見直しや家事力の向上についても、早くから準備を始めておく必要があります。

(※1) 一億総活躍国民会議「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策−成長と分配の好循環の形成に向けて−」(2015年11月)
(※2) 総務省「平成24年就業構造基本調査」

(ニッセイ基礎研究所 松浦 民恵)

筆者紹介

松浦 民恵(まつうら たみえ)