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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第71回 20代独身の食生活―1カ月の食費はおよそ3万円!!

2016年1月1日

健全な食生活の実践

 2013年、「和食」がユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。考えてみると、海外で日本食のレストランが増えるなどの注目度も高くなっています。和食が注目される大きな理由の1つに、「健康的な生活を支える栄養バランス」 があります。しかし、“一汁三菜”など、多様な副食を組み合わせて食べる理想的な「日本型食生活」 は、当の日本人、特に若い世代では実践が難しいようです。

 例えば、内閣府の「食育に関する意識調査」によると、健全な食生活の実践では20歳代の割合が最も低く、年齢を重ねるごとにその割合は高くなっています(図表1)。女性については、総じて、男性よりも「心掛けている」割合が高い一方、2014年に発表された「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)で、やせ型の成人女性が過去最多の12.3%になったとしています。特に、20歳代の女性は5人に1人がやせ型と年代別で最も多くなっており、体型維持のための食事の制限なども懸念されています。

図表1 健全な食生活の実践の心掛け(性別・年齢階級別)

(資料) 内閣府「食育に関する意識調査(平成27年3月)

 また、上掲の調査で、主食・主菜・副菜をそろえて食べる栄養バランスに配慮した食生活の実践についても、20歳代が一番低い状態にあります。20歳代は進学や就職などで親元を離れ、自立した生活を開始する時期でもあります。まず生活環境や経済基盤を整えることが先決で、食事については後回しになりがちになることが背景にあるのかもしれません。

1カ月の食費

 このような食生活をおくる20歳代の独身者について、農林中央金庫による「現代の独身20代の食生活・食の安全への意識」によると、1カ月の食費 は、平均して31,876円、およそ3万円となっています(図表2)。東京近郊に在住している人が対象となっている点を考慮する必要もありますが、平均では、女性(29,100円)よりも男性(34,623円)の方が5,000円ほど多く、1人暮らしの単身者(37,720円)が家族などと同居している人(28,101円)よりも1万円ほど多くなっています。

図表2 20歳代独身者の1カ月の食費

(資料) 農林中央金庫「東京近郊の20代の独身男女400名に聞く 現代の独身20代の食生活・食の安全への意識」(2014年4月)

食生活を取り巻く背景

 その背景の1つに、食を取り巻くインフラや、意識の変化もあるのではないでしょうか。特に20代は、生まれながらにして、コンビニエンスストアやファストフード店が身近にあり、食はより手軽で、速く、安価に手に入れられるものに変化しています。上掲の同調査で、平日の昼食をみると、もはや「パン・おにぎり・ファストフードなどを買う」(50.8%)が最も多く、「飲食店に行く」(45.0%)、「学校・職場の食堂、カフェテリアなどを利用する」(43.3%)を凌いでいます。ファストフードや外食は、家族などと同居している人よりも1人暮らしの単身者の方が多い傾向にあり、食費も多くかかるようです。

 また、20代の朝食についても、毎日食べる人は46.5%とほぼ半数でしたが、家族などと同居していない単身の場合は31.2%と更に低くなっています。食べない理由は「起きるのが遅い」(77.1%)が最も多く、朝の慌しさから食事ができない場合が多いようです。

 一方、夕食をみると、男性は「飲食店に行く」(67.5%)が最も多い一方、女性は「家族に料理を用意してもらう」(61.5%)が最も多くなっています。また、女性については「自分で料理を作る」(女性:46.0%、男性:19.5%)、「お惣菜などを買う」(女性:30.0%、男性:26.0%)についてもいずれも男性より多くなっています。女性は男性よりも自宅で食べるケースが多く、出費も相対的に少ない点が推察されます。また、自宅での食事を前提としたお惣菜の購入など、食事のバランスや彩りへの工夫も見られます。

 1人暮らしの単身者が、外食や「買ってきて食べる」ケースが多い点を考慮すると、食生活の単価がより高くなっている背景がみてとれます。現代のライフスタイルを考えると、毎食“一汁三菜”は無理でも、個包装や少量パックのお惣菜やファストフードをうまく活用し、工夫次第ではより豊かな食生活が可能です。世界で認められた和食の「健康的な生活を支える栄養バランス」を当の日本人が引継いでいくうえでも、今後を支える若い世代は、より気にかけていきたいものです。

(ニッセイ基礎研究所 片山 ゆき)

筆者紹介

片山 ゆき(かたやま ゆき)

株式会社ニッセイ基礎研究所 保険研究部 研究員
研究・専門分野:中国の保険・年金・社会保障制度