
2015年12月1日
バブル期を超えた市場規模
日本株式は8月上旬以降やや軟調な展開となっていますが、それでもアベノミクスが始まってから株価は概ね堅調に推移して来ました。そんな中、今年6月に平成のバブル期を超え、史上最高値を更新した指標があるのをご存知でしょうか。
それは日本の主要な証券市場である東京証券取引所(以後、東証)一部の株式時価総額です。株式時価総額とは企業が発行している株式の価値の総和であり、「株価×発行済み株数」で求めることができ、企業や市場の規模を表す尺度の一つです。これまでの最高値は1989年末の591兆円でしたが、この夏にバブル期ですら到達しなかった600兆円に届きました。

バブルとの声もあるが
アベノミクスが始まる前、2012年の夏ごろの株式時価総額は260兆円程度でした。それがこの3年で倍以上に急拡大しバブル期を超えたこともあり、バブルとの声もあります。そもそもバブルとは株式や不動産などが高騰し、「実態」と著しく乖離した価格で売買されている状況のことを指します。実際にバブルかどうかはバブルが弾けた後に事後的に気づかされることがほとんどです。
現在の日本の株式市場が本当にバブルでないか判断するのは難しいところです。しかし、過去のバブル期と比べて異なる部分も確かにあります。それは企業業績です。バブル期の1989年度、1990年度の東証一部企業の利益の合計は10兆円程度でした。株式時価総額のピークが591兆円でしたので、利益の59倍程度の水準でした。つまり、59年間利益をため続けないと回収できないだけ東証一部企業の株式が投資家に評価されていました。
一方、2014年度は利益がバブル期の3倍にも拡大し、31兆円でした。2015年度は現時点で34兆円程度と予想されており、更なる増益が期待されています。仮に予想どおりに2015年度の利益が34兆円、一方の株式時価総額は600兆円だとすると、18年間同じ利益を出し続ければ投資資金が回収できる計算になります。この18年という期間自体が長すぎるという指摘があるかも知れませんが、59年と比べると回収に必要な期間は1/3以下です。ゆえに、企業業績からみるとバブル期と比べて足元の株式市場は中身を伴った市場規模になっているといえます。

(資料) |
日経NEEDSより筆者作成 |
(注) |
2015年度は東洋経済予想などを集計 |
再び600兆円を目指す展開を期待
現在、株式時価総額は500兆円台で推移しています。それでもアベノミクスが始まってから続いている増益傾向が今後も続くのであれば、株式時価総額は再び600兆円の大台を回復できると考えています。
(ニッセイ基礎研究所 前山 裕亮)
筆者紹介
前山 裕亮(まえやま ゆうすけ)
株式会社ニッセイ基礎研究所 金融研究部 研究員
研究・専門分野:運用手法開発(国内株式)