1. 日本生命保険トップ
  2. 知る・楽しむ
  3. 新社会人のための経済学コラム
  4. 第67回 電子マネーの決済額は年間4兆円!!

3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第67回 電子マネーの決済額は年間4兆円!!

2015年9月1日

電子マネーの決済総額は増加傾向

 日本人は現金を好む傾向があるとよく言われますが、電子マネーやクレジットカードといった現金を伴わないキャッシュレス決済が近年増えつつあります。クレジットカードによる年間決済総額は42兆円(2013年:日本クレジット協会)、電子マネーによる年間決済総額は4兆円(2014年:日本銀行)に達しています。

 また、年間決済総額の増加率で見ると、クレジットカードはこの10年間で1.8倍、電子マネーは3年間で2倍になっています。特に電子マネーの決済総額の増加率については、毎年30%増加のペースを維持しています。

 電子マネーが決済手段として急速に普及している背景には、クレジットカードとは異なり個人情報を提供することなく使用することができる点や、電子マネーの発行業者と関連の深かった交通機関やコンビニエンスストアでの利用以外にも利用環境が広がってきたことから一般的な決済手段として受入れられつつある点などが挙げられるでしょう。

図表1 電子マネーの月間決済総額(2007年9月〜2014年12月)

(資料) 日本銀行ホームページ

電子マネーに内包しているリスク

 急速に利用額が増加している電子マネーですが、資金決済に関する法律(資金決済法)や各発行業者が配布しているカード利用規約に基づいて使用することになります。電子マネーに関して利用者にリスクはないのでしょうか。一般的に使用されているプリペイド式の電子マネーについて、利用者が注意すべきリスクについてまとめてみたいと思います。

①無記名式の電子マネーを紛失した場合、電子マネーは回復しない。

 名前等の登録情報のない「無記名式」カードの電子マネーを紛失した場合、利用者がその損害を全て負担しなければならないのが通例のようです。電子マネーに入金できる金額の上限が数万円に設定されているのはそのためです。「無記名式」カードの電子マネーの利用者は、入金額を紛失等で損害があっても問題のない範囲内で使用した方がよいでしょう。また、登録情報のある「記名式」カードを紛失した場合は、発行業者に連絡して一旦利用停止にして、再発行手続きを行うのが通例のようです。しかし、昨今は自動的に入金される機能付きのものもありますので、早めに発行業者に連絡をすることで二次被害を避けるのが肝要でしょう。

②電子マネーの払戻しは基本的に行われない

 発行業者は電子マネーの払戻しに応じないのが一般的になっています(※1)。しかし、法律上の要請から「発行業者がサービスを中止する場合」と「利用者保護のために必要な場合」については、利用者に払戻さなければなりません。また、発行業者が倒産した場合に払戻しされないのは利用者保護の観点から問題であるため、政府に登録している発行業者については、電子マネーの未使用残高の2分の1以上について発行業者の倒産に関係なく返済されるような仕組み(供託金制度)が整備されています。とはいえ、発行業者によっては倒産時に、電子マネーの2分の1が損失になる可能性がありますので、信頼できる発行業者のものを使用するのがよいでしょう。

③利用期限を設定している発行業者もある

 カード利用規約において、電子マネーの利用期限を設定している発行業者もあります(例:最後に取扱った日から10年間取扱いがない場合は利用者の権利を失効する、など)。

 電子マネーには上記で指摘したようなさまざまなリスクがありますが、その利便性から今後もキャッシュレス決済の代表的な手段の一つとして広く利用されるものと思われます。昨今は記念カードとして電子マネー機能の付されたものが発行されることがあるようですが、電子マネーの利用期限がどのように規定されているのかなど、一度カード利用規約を確認してみるとよいでしょう。思わぬ発見があるかもしれません。

(※1) 法律上は、「払戻し金額が少額な場合」と「発行業者の業務に支障を生ずる恐れがない場合」については、払戻しをしてもよいとされていますので、発行業者ごとに対応が異なる可能性がありますので注意が必要です。

(ニッセイ基礎研究所 福本 勇樹)

筆者紹介

福本 勇樹(ふくもと ゆうき)

株式会社ニッセイ基礎研究所金融研究部 准主任研究員。
研究・専門分野:リスク管理・価格評価