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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第63回 2014年12月衆議院議員総選挙の投票率は、過去最低の52.66%、20代前半では20%台!

2015年5月1日

2014年12月の衆院選投票率は、20〜24歳で20%台

 新社会人のみなさんは昨年末の衆議院議員総選挙に一票を投じに行きましたか?
2014年12月における第47回衆院選投票率は52.66%と、2012年の59.32%を下回り、過去最低を記録しました。実に2人に1人は投票に行っていない状況です。中でも20歳代は32.58%と低く、さらに、20〜24歳は29.72%と30%を切っています。

 また、近年は全世代で投票率が低下している傾向にありますが、長い時系列でみると20歳代は、他の世代よりも低下傾向がはっきりしているのがわかります。民主主義の根幹にかかわるだけに、若い世代を中心に政治に対する興味や関心が年々失われているのではないかと心配になります。

図表1 衆議院選挙における年代別投票率の推移

(資料) 総務省ホームページ

シルバー民主主義

 選挙については、若い世代の投票率の低下に加え、日本の人口構造からも問題点が指摘されています。

 日本は少子高齢化の進展により有権者に占める高齢者世代(※1)の割合が年々増加しています。政治家は選挙で広く支持を集める必要があるため、有権者の人数が少ない若い世代よりも有権者が多い高齢者世代に配慮した政策を優先してしまう可能性が高くなります。これを「シルバー民主主義」と呼びます。

 例えば、日本は少子高齢化を背景に社会保障費が増加しています。その規模は国の一般会計の歳出の約3割(※2)を占めています。毎年の歳出の約4割(※3)を借金に頼っている状況の中、年金・医療・介護といった社会保障費の効率化をすすめる踏み込んだ議論が迫られています。しかし、その進捗は遅いと言わざるを得ない状況です。医療や介護サービスを受ける際の負担を引上げることや、年金などの社会保障給付の削減を進めることは、高齢者世代から支持を得にくいからです。国の借金はいずれ返さなくてはならないものです。現状のままでは、現在の若い世代や将来の子や孫の世代で社会保障給付の抑制に迫られるなど、ツケを払わされることになります。シルバー民主主義によって若い世代の立場に立った意見が通りにくい状況となっている面はあるでしょう。

図表2 日本の人口推移

(資料) 2010年までは総務省「国勢調査」、
2015年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果

選挙権を「20歳以上」から「18歳以上」へ

 近年では、投票率向上策としてインターネットを利用した選挙運動が解禁されました。ウェブサイトや電子メールの他、政治家が自身の活動をツイッターやフェイスブックといったSNS(※4)を利用して有権者に情報発信を行っています。今後、有権者の興味や関心が政治に向かえば、すでに以前よりも情報を得やすい環境が整っています。また、大学への期日前投票所の設置や、投票日に無料バスを運行するといった投票率の向上に向けた取組みも行われています。

 さらに現在、国会において選挙権を「20歳以上」から「18歳以上」に引下げる法案が審議されています(※5)。これがシルバー民主主義を是正するきっかけになるのではないかとの期待があります。

 もちろん、選挙権を18歳に引下げたからといってすぐに国の政策の方向性が変わるのは難しいでしょう。18歳に引下げることで、新たな有権者は2016年で約240万人増える見通しですが、もともと若い世代の投票率が低い傾向にあることや65歳以上の人口が2010年時点で約3000万人と、高齢者が有権者に占める割合が大きい状況が劇的に変わるまでには至らないからです。

 しかし、教育現場で政治教育が見直されることや政治家が若い世代をターゲットにした発信を増やすことにつながるなど、若い世代が政治や経済に接する機会が増えます。若い世代を中心に若い世代の立場に立った議論が活発になることで、国の政策の方向性にも影響を与えるはずです。

(注:本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。)

(※1) 何歳から「高齢者」となるかについては、統一された基準はなく、法律などによっても対象となる年齢は異なる。
本コラムでは人口構成を図示するにおいて、65歳以上を対象とした。
(※2) 2015年度政府予算案では、国の一般会計歳出96.3兆円のうち社会保障費は31.5兆円と32.7%を占めている。
(※3) 2015年度政府予算案では、国の一般会計歳入96.3兆円のうち借金にあたる公債金は36.9兆円と38.3%を占めている。
(※4) ソーシャル・ネットワーキング・サービスの略。互いが友人を紹介し合い、新たな友人関係を広げることを目的としたコミュニケーション・サービスのこと。多くのSNSでは、自分のホームページを持つことができ、そこに個人のプロフィールや写真を掲載できる。
(※5) 2015年通常国会において「公職選挙法等の一部を改正する法律案」が審議されており(執筆時点)、法案が成立すれば、2016年の参院選から18歳以上の国民に選挙権が与えられることになる。

(ニッセイ基礎研究所 薮内 哲)