新社会人のための経済学コラム

第158回 30代の5.6人に1人、20代でも8人に1人が確定拠出年金に加入している

2023年6月6日

確定拠出年金加入者が年々増加している

確定拠出年金とは、加入者自らが掛金を運用し、運用結果が将来の給付額を左右する年金制度です。ニュースや広告で見聞きする「iDeCo」は確定拠出年金の一つ、個人型確定拠出年金(以下、個人型)の愛称です。個人の判断で加入して、本人が掛金を拠出する個人型に対して、事業主が主体となって実施し、企業が掛金を拠出する企業型確定拠出年金(以下、企業型)があります。

確定拠出年金には、本人が拠出した掛金額に応じて所得税や住民税が軽減されるなど様々な税制上のメリットがある一方、原則60歳まで引出すことができないデメリットがあります。2022年度末時点の確定拠出年金の加入者は個人型と企業型合計で、1,000万人を超えています。2014年度末時点の加入者合計は500万人に満たないので、8年間で加入者が倍増したことになります。自発的に加入した個人型の加入者に限定すれば、8年間で13倍になっています。

図1:確定拠出年金の加入者数の推移

若者の加入率も増えている

上述のとおり確定拠出年金は年金制度ですから、リタイアが近い年齢の高い人ほど関心が高そうです。年齢の高い人ほど原則60歳まで引出せないデメリットも些細に感じられるはずです。このように考えると、年齢の高い人を中心に加入者が増えたと推測できますが、若年層においても、人口に占める確定拠出年金の加入者の割合(以下、加入率)が、8年間でほぼ倍増していることがわかります。2022年度末において、最も加入率が低い20代でも8人に1人が確定拠出年金に加入しています。30代は5.6人に1人が加入しており、40代や50代と同水準です。

表1:年代別加入率の変化

各自が老後の生活資金に責任を持つ時代へ

確定拠出年金の加入率は全年代で増えています。自発的に加入した個人型の加入者が8年間で13倍になっているので、若年層においても資産形成に対する関心が高まった結果かもしれません。しかし、8年間で個人型の加入者が約220万人増加したのに対して、企業型は約320万人も増加しました。

企業型は、企業が従業員の老後のために設ける福利厚生制度である企業年金制度の一種です。企業年金制度は、確定拠出方式と確定給付方式に分類できます。確定拠出方式が、加入者が掛金を運用し、運用結果が将来の給付額を左右するのに対して、確定給付方式は、企業が掛金を運用し、従業員は運用結果に関わらずあらかじめ約束した給付を受取ります。確定給付方式は、運用成果が芳しくないと企業が掛金を追加して拠出する必要があるのに対し、確定拠出方式はその必要がありません。また、人材が流動化し、終身雇用が前提の人事制度を見直す動きもあります。確定給付方式と比べて、確定拠出方式は勤続年数による不公平感が少ないので、近年、確定給付方式の加入者・制度数共に減少する一方、
各従業員が投資知識を習得して運用の責任を負う確定拠出方式の加入者・制度数が増えているのです。また、従業員の老後のための企業年金制度がある企業の割合も減りつつあります。
少し古いデータですが、平成30年就労条件総合調査によると、平成25年(2013年)の34.2%から平成30年(2018年)は29.1%に減っています。

図2:確定給付企業年金から確定拠出企業年金への移行

仕事さえしっかり頑張っていれば、会社が老後の面倒も見てくれるというのは、既に昔の話になりつつあり、各自が老後の生活資金に責任を持つ時代へと変化しています。これからは、若いうちから将来を見据え、資産形成に取り組むことがとても大切なのです。

(ニッセイ基礎研究所 高岡 和佳子)

筆者紹介

高岡 和佳子(たかおか わかこ)

株式会社ニッセイ基礎研究所、金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任
研究・専門分野:リスク管理・ALM、価格評価、企業分析

▼ニッセイ基礎研究所ホームページ(高岡研究員)

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