0~1歳の発達にぴったり!
赤ちゃんが喜ぶ、ママやパパも笑顔になる遊び
子育て
2024.05.13
“赤ちゃんの遊び”というと「何か特別なことをしなくては」「どこかに連れて行かなくては」と構えてしまいがち。でも、赤ちゃんにとって最高の遊びは、大好きなママやパパとのコミュニケーション、ふだんの生活の中にあります。
赤ちゃんが笑顔を見せてくれると、ママやパパも自然と笑顔になります。楽しく遊びながら、赤ちゃんは好奇心や興味の幅を広げ、心も体もぐんぐん育っていきます。
赤ちゃんの発達段階別に、それぞれの時期がもっと楽しくなる遊びを、「発達心理学(特に親子コミュニケーション)」が専門の岡本依子先生に伺いました。
「遊び」を通して、赤ちゃんは成長していく
生まれて間もない赤ちゃんは、何もわからず何もできないと思うかもしれません。でも、新生児のころから、赤ちゃんは“人”が大好き。人に興味を示し、声をかけられると反応しています。
ただ生後半年くらいは、どこまでが自分でどこからが他人か、その境目はあいまいで、理解していないと言われています。ママや周囲の人とかかわりながら自己探索をくり返すうちに心が育ち、赤ちゃんは自分と他人との区別がつくようになっていきます。自分以外の対象との関係性も、成長とともに変化していきます。
体の機能は、頭のほうから下のほうへと発達が進み、首のすわり、腰のすわり、立ち上がって歩行というように、できることが増えていきます。その赤ちゃんの心身の健やかな成長に欠かせないのが、「遊び」です。
赤ちゃんにとって楽しい遊びは、ママやパパからの語りかけや自分の体を動かすこと。赤ちゃんにたくさん話しかけながら、赤ちゃんが発達によってできるようになった動きを遊びに変換してみましょう。
ねんねのころ(0~4カ月)にぴったりな遊び
赤ちゃんが最初に興味を示すのは“人”。このころに最高の遊びは語りかけです。ママやパパが語りかけると、赤ちゃんは声のほうへ顔を向けたり、手足をバタバタさせたりと反応するでしょう。
3カ月ごろになると、興味のあるものをじっと見たり、人と目が合うように。特にママやパパなどいつもかかわっている人のことは、まるで「恋に落ちているよう」に見つめます。赤ちゃんの熱い視線に気づいたら、ぜひ声をかけてあげて!
遊び1:「あー」「うー」返し遊び
赤ちゃんが「あー」「うー」と声を出すようになったら、ママやパパも「あー」「うー」と返してみましょう。赤ちゃんの出す声は、自分にとっていちばん聞き心地のよい音と言われています。その声を大人がまねをすると、赤ちゃんはうれしくてまた声を出す……、親子で声のやりとりを楽しんで。
遊び2:視線はどこかな?遊び
ママの顔を赤ちゃんの顔に近づけて、目が合うのはどれくらいの距離か、探してみましょう。1カ月ごろからコントラストのはっきりしたおもちゃを見せて、どのくらいの距離ならじっと見るのか、ゆっくり動かしながら観察してみて。
次は、赤ちゃんが見つめている視線の先を探してみましょう。照明やカーテンなど、意外なものに注目していて、大人にも驚きがあります。
遊び3:目と目を合わせて「ばあ!」遊び
赤ちゃんの顔を見ながら、ママが「ばあ!」と大きな口を開けて、くり返し言ってみましょう。ママの声がするからそちらに注目したら、口が大きく動いて、「ばあ!」と聞こえるのは、赤ちゃんにとって目も耳も楽しめる遊びです。
ママの口元に興味を示して見つめるうちに、赤ちゃんの口が思わずパクッと開くことも!
おすわりのころ(5~8カ月)にぴったりな遊び
5カ月ごろも、赤ちゃんは人が大好き。誰かと目が合うとくぎづけになり、目をそらせなくなってしまうほどです。やがて6カ月ごろになると、興味の対象は人から物へと移っていきます。
自分以外の対象との関係性も、〈自分と人〉から〈自分と物〉へ。すると、おもちゃなど興味のあるものを見始めたら、それ以外には注意が向かなくなるほど集中するようになります。
体の運動発達も進み、手足を自分の意思で動かせるようになってきて、寝返りが始まる子も多くなります。体の動きを利用した遊びも積極的に取り入れましょう。
遊び1:寝返りゴローン遊び
体をひねって寝返りをしそうになったら、赤ちゃんの手が届きそうなところにおもちゃを置いて、寝返りを誘ってみましょう。体をひねってもうまく寝返りができないときは、おしりをちょっと支えるなどして手伝ってあげて。
遊び2:飛行機ブーン遊び
腹ばいの状態で、手と足を上げた“飛行機ブーン”。おなかで全身を支えることで、背筋力がつきます。また、あおむけで自分の足を持ったり足指をなめたりすることも、腹筋が鍛えられるので、思いきりさせてあげて。
遊び3:実況中継遊び
おすわりができて、両手を使って遊べるようになったら、ガラガラなどを「どうぞ」と渡してみましょう。そのあとは、赤ちゃんの動きをママが詳細に実況中継!
「ガラガラだよ~」「じょうずに持てたね~」「あ、落としちゃった!」などと言いながら、赤ちゃんをよく観察して、その様子を実況していくと、ママも楽しくなるはず。そしてママの笑顔に、赤ちゃんもますます楽しくなって、笑顔の応酬が始まります。
はいはいのころ(8~11カ月)にぴったりな遊び
8カ月ごろからは、大人がしていることのまねをし始め、上達していきます。10カ月ごろには、ママやパパなど身近な人とかかわるうちに、「相手のすることには意図がある」と気づき始めるので、赤ちゃんとのやりとりもさらに楽しめるようになるでしょう。
自分以外の対象との関係性は〈自分と人と物〉になり、自分とそれ以外の人との区別もついてきます。ずりばいやはいはいが始まると、移動できることが楽しくて、興味のあるものを見つけては自由に動き回るようになります。
遊び1:「こっちだよ」はいはい遊び
少し離れた場所から「こっちだよ」「おいで」などと呼びかけ、ずりばいやはいはいを誘います。赤ちゃんの好きなおもちゃや日用品などを、はいはいして行ける場所に置いても。
はいはいで移動できるようになると、赤ちゃんは興味のあるものへまっしぐら。スリッパやリモコンなど、赤ちゃんの好みや個性もわかるようになってきます。
遊び2:「ちょうだい」「どうぞ」遊び
赤ちゃんが手に持っているものに対し、「ちょうだい」と言って手を出します。赤ちゃんが渡してくれたら、「ありがとう」とうれしそうに受け取り、今度は「どうぞ」と言いながら差し出して。
ママやパパがおもちゃをほしがっていると察しておもちゃを渡し、ママやパパが喜ぶと、自分の読みが当たってうれしい赤ちゃんは、何度もくり返すはず。このリピートによって、コミュニケーションの芽が育っていきます。
遊び3:まねっこ遊び
赤ちゃんと向き合い、「ありがとう」と頭を下げたり、「バイバイ」と手を振ったり、「バンザーイ」と言いながら両手を上げたりしてみましょう。大人の動きに興味を持ち、まねをし始める時期なので、いろいろな動作をして見せて。
ただ、まねっこを始める時期や、まねをしたい動作には、個人差があります。赤ちゃんがまねをしなくても、最初は大人が楽しそうにやって見せるだけでじゅうぶんです。
つかまり立ち、伝い歩きのころ(9~11カ月)にぴったりな遊び
大人のまねっこが楽しくて、どんどんじょうずになり、レパートリーも増えます。体の運動発達が進んでつかまり立ちができると、視線が高くなって、今まで見えなかった場所も見えるように。さらに行動範囲を広げて、自由に動き回るようになるでしょう。
大人の話す言葉も少しずつわかるようになり、言葉と動作が結びついてきます。“言葉”の存在に気づき始め、大人のおしゃべりを見習ったような「ジャルゴン(無意味語)」を話すことも。ジャルゴンは10カ月ごろから目立ち始め、期間限定。ぜひ動画撮影や録音をおすすめします!
遊び1:動物まねっこ遊び
赤ちゃんに「象さんだよ。パオーン」と言って、腕を象の鼻のように揺らしたり、「もしもし」と言いながら携帯電話をかけるしぐさをして、赤ちゃんのまねっこを誘います。まねをしたら、目を合わせて笑いあうといいでしょう。
言葉と動作が結びついてくると、やがて「象さんは?」と言われたら腕を揺らすなど、言葉を聞いただけでまねっこをするようになり、得意なまねっこのパターンも出てきます。
遊び2:「ここまでおいで」伝い歩き遊び
伝い歩きが始まったら、赤ちゃんの伝う少し先におもちゃなどを置きます。「おもちゃをつかまえて~」などと言って、取りに行くように仕掛けましょう。
遊び3:ジャルゴン(無意味語)返し遊び
ジャルゴンを話していることに気づいたら、赤ちゃんの発する音をまねて、ジャルゴンぽく言い返してみましょう。するとまた、赤ちゃんからジャルゴンが出てくるはず。
これは何かを伝達したいのではなく、「あなたとやりとりしたい」という意思の表れ。ジャルゴンに言葉としての意味はありませんが、ジャルゴンの会話を続けることで、赤ちゃんはコミュニケーションの楽しさがわかってきます。
よちよち歩きのころ(1歳前半)にぴったりな遊び
あんよが始まり、じょうずになってきたら、いろいろな場所を歩く経験をさせてあげましょう。室内だけでなく、土や落ち葉の上など、さまざまな感触の地面を歩くことで、筋力がついたり体のバランスがよくなったりします。
1歳を過ぎると、意味を理解できる言葉が増え、単語が出始めます。自我も芽生えてきて、自分の意思もはっきりしてくるでしょう。物の形やしくみにも興味を持つようになり、積み木やパズルのように工夫しながら遊べるおもちゃも喜びます。
遊び1:しあわせ「おいで~」遊び
あんよし始めの赤ちゃんに、少し離れたところから「おいで~」と呼びかけます。ママやパパのところまであんよできたら、「じょうずだったね!」などと言いながら、ぎゅっと抱きしめて。
あんよが少し上達したら、「待て待てするよ~」と言いながら、赤ちゃんをゆっくり追いかけ、大興奮で逃げる赤ちゃんをつかまえてみて。赤ちゃんも大人も、しあわせいっぱいになる遊びです。
遊び2:「ポイして」遊び
紙くずなどを赤ちゃんに渡しながら「ポイして」と言って、ゴミ箱に捨ててもらいます。大人のすることをよく見ていて、言葉と動作が結びつくようになっているので、赤ちゃんは喜んでポイしてくれるはず。
「○○取ってきて」などと、指定したものを取ってきてもらうのも、親子の楽しい遊びになります。
遊び3:型はめパズル遊び
丸、三角、四角など、単純な形の型はめやパズルも喜びます。形に興味を持ち、手指の動きが発達してきて、パズルのピースをつまんで遊べるようになるのです。最初は丸を持ちたがり、どの型にも丸をはめようとする赤ちゃんが多いので、観察してみて。
変化の大きな赤ちゃん時代を、めいっぱい楽しんで
誕生直後は「未知の生き物」のように感じられる赤ちゃんですが、成長するにつれて「人間らしく」なるプロセスを見ていけるのが、子育ての最高の醍醐味です。
何げない赤ちゃんの動作一つ一つにも、発達上の意味があります。赤ちゃんの発達について知り、何かできるようになったときには「すごいね!」と、いっしょに喜べるといいですね。赤ちゃんは、自分がしたことに応えてくれる存在に気づくようになり、心も豊かに育っていきます。
1歳になると自我が芽生え、ママやパパを困らせる場面も出てくるでしょう。でも、それも成長の証と喜び、うまくあしらいながら遊んで。1歳後半になれば、体力がついて体も自由に動かせるようになるので、体を使った遊びや感触遊びがおすすめです。
2歳ごろまでが、人としての変化が最も大きな時期です。赤ちゃんの成長をおもしろがりながら、たくさん遊んで笑って、親子の楽しい時間を共有しましょう。
監修者プロフィール
立正大学社会福祉学部子ども教育福祉学科 教授
岡本依子(おかもと・よりこ)先生
東京都立大学大学院博士課程満退。博士(心理学)。専門は発達心理学で、「親子コミュニケーション」「地域子育て支援」「海外の保育」などを研究。臨床発達心理士、保育士、認証ベビーマッサージ指導者の資格を持つ。