ママ友とのLINEのやりとり、予防接種スケジュールの管理、離乳食メニューを検索……いまや、スマホは子育てライフに欠かせません。小さな子どもにとっても興味津々なスマホですが、目が悪くなるのでは?と心配にもなりますね。スマホと子どもの目の発達との関係を、小児眼科の専門家に伺いました。
視力は6歳ごろまで、立体視は2歳ごろまでに育つ
生まれたばかりの赤ちゃんの目は、ほとんど見えません。そこからゆっくりと発達し、3歳ごろには0.7程度まで見えるようになります。個人差はありますが、6歳ごろまでには1.2程度まで見えるようになることがわかっています。
ただしこれは「視力」の発達。目にはもう一つ「立体視」(遠近感)という機能があります。立体視とは、ものを立体的にとらえる能力のこと。この機能は、生後半年から1歳半、遅くても2歳ごろまでに育ちます。
私たちは「視力」と「立体視」でものを見ています。きちんとものが見えるようになるためには、どちらの機能の発達も大切なのです。
知っておきたい! 0~6歳の目の発達
生後すぐ/視力は0.1ぐらい。ほとんど見えません
「まぶしい」「暗い」がわかる程度で、ものの輪郭はぼんやりしています。生後3~4カ月になると、一点を見つめる「固視」をするようになります。
生後6カ月/視力は0.2ぐらい。少しずつ立体視ができるように
ものの奥行きや距離感をつかむ「立体視」が少しずつできるようになってきます。ママやパパとほかの人との顔の区別もつくようになります。
1歳/視力は0.3ぐらい。立体視の発達が続きます
上下左右や奥行きなど、空間を立体で把握できるようになります。米粒など、かなりこまかいものも見えるようになってきます。
2歳/視力は0.5ぐらい。立体視がほぼ完成します
ものを立体的にとらえる能力がほぼ完成する時期。視力の発達はこれ以降も続きます。
6歳/視力は1.2ぐらい。目の発達がほぼ完成します
視力がほぼ完成する時期です。この時期までに弱視や視力の左右差などの治療をすれば、ある程度は取り戻すことができます。
2歳ごろまではなるべくスマホを遠ざけたい
日本のスマホは、2007年にiPhoneが、2009年にAndroidが発売されて、広く普及しました。まだ15年ほどの歴史しかないために、子どもの目への影響についてもわからないことがあるのが現状です。
それでも少しずつ研究が進み、全く影響がないとは考えにくい、特に立体視が完成する2歳ごろまではなるべくふれさせないほうがいいというのが世界的な認識になっています。
2019年にはWHO(世界保健機関)が、5歳未満の子どもが健康に成長するためのガイドラインを発行しています。それによれば、
●2歳未満の子どもがスマホやパソコンなどを見ることはすすめられない
●2~4歳の子どもがスマホやパソコンなどを見るのは一日1時間未満に
●デジタルデバイスを20分見たら20分休憩する
となっています。
この時期の子どもの目の発達に大切なのは、できるだけ体を動かすこと、じゅうぶんに日光を浴びること、良質な睡眠をとり、規則正しい生活リズムで過ごすことです。スマホやパソコンなどのデジタルデバイスにふれる時間は短いほどいい、というのがWHOの見解です。
暮らしの中で心がけたいスマホとのつきあい方
そうはいっても、実際にはスマホに全くふれさせないのは難しいですね。「スマホを見せる時間は短いほどいい」ということを心に留めたうえで、目の発達への影響ができるだけ少なくなるようにしたいもの。暮らしの中では、次の5つを心がけましょう。
1.長時間の視聴を避ける
これが大原則。スマホを見せておけばおとなしくしていてくれるからと、持たせっぱなしにしていませんか? 1回の視聴につき20分以内を目安にしましょう。
2.動画よりは静止画を
動画のようにこまかく動くものは凝視しがちです。目への影響は静止画より大きく、幼少期から近視になる可能性も。スマホでは写真を見るだけなど、なるべく静止画にとどめるように心がけてください。
3.スマホとタブレットなら、タブレットを選ぶ
なるべく大きな画面をできるだけ離れて見るほうが、目への負担は少なくなります。スマホよりはタブレットのほうが、目と画面との距離が離れます。
4.寝る前にスマホを見せない
スマホから出ている強い光(ブルーライト)を暗い寝室で見ると、体内時計のリズムが乱れがちになり、睡眠の妨げになります。
5.ブルーライトカット眼鏡は不要
小さな子どもの場合、特に日中のブルーライトカット眼鏡の使用は、目の発達に悪影響を及ぼす可能性があります。日本眼科学会は2021年に「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」を出しています。
子どもの目の機能は、6歳ごろまでに発達をほぼ終えます。スマホが目の発達に与える影響はまだわからないこともありますが、のちのち「そんな悪影響があったの!?」と後悔しないですむように、見せすぎは慎みたいですね。
<監修者プロフィール>
日本橋はま眼科クリニック 院長
浜 由紀子先生
杏林大学医学部卒業。国立成育医療研究センターなどを経て2011年に開院。眼科全般の治療を行うかたわら、杏林大学病院で斜視、弱視、小児眼科を専門に診療する、子どもの目のスペシャリストでもある。