第10回 ESGの状況は ~ESGへの取り組みはどのくらい進んでいるの?~

2024年2月27日

これまでの9回で、ESGに対する理解が深まってきたのではないでしょうか?
さて、今回は、これまでご紹介してきたESGがどれくらい社会に浸透しているのかについて、「ESGに対する企業の取り組み姿勢」・「ESG課題解決のための資金供給体制」の観点から確認していきたいと思います。

プライム市場上場会社の95.8%がESG課題に積極的な姿勢を示す。

ご存じのとおり、ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとった造語で、企業が長期的に成長するためには、企業経営において、これら3つの要素を勘案することが重要と考えられています。

そこで、ESGに対する企業の取り組み状況を確認しましょう。東京証券取引所が2015年に、ESGの中の1項目「ガバナンス」に関する指針を策定しています。この指針はコーポレートガバナンス・コードと呼ばれ、東京証券取引所に上場する企業に適用されます。コーポレートガバナンス・コードは定期的に見直されており、2021年にはサステナビリティに関する原則などが拡充されました。その中の一つに、「取締役会は、ESG課題への対応がビジネスリスクの減少だけでなく、収益機会にもつながる重要な課題として認識して、積極的に取り組むべき」といった原則があります。株式会社東京証券取引所が公表する「コーポレート・ガバナンス白書2023」によると、プライム市場上場会社の95.8%、スタンダード市場上場会社の94.0%が、この原則を遵守する旨の意思を表明しています。
このことから、上場企業においてはESGの重要性が広く認知されていることが分かります。

近年、日本のESGに資する資金供給体制も進んでいる

企業がESG課題への対応として、業務プロセスを変更したり、新たなビジネスを始めたり、実際に行動するには、まとまった資金が必要です。
そこで、資金供給側におけるESGの浸透状況を把握するために、ESG投資残高の推移を確認します。2020年時点で310兆円だった日本のESG投資残高は、2年間で約60%も増加して2022年時点で493兆円に達しました。同時期の欧州におけるESG投資残高の増加率は約30%なので、日本の増加率は世界と比較しても高いことが分かります。残念ながら、他の先進国と比べて、日本におけるESG投資が出遅れていたから近年の日本の増加率が高いという側面もあります。しかし、近年急増した結果、国の経済規模に対するESG投資残高の割合は、先進国平均と同じか多少上回る水準に達しました。

ESGは企業ひいては社会が長期的に成長するために重要な要素です。今回、データで確認してきたとおり、企業のESG課題に対する取り組み姿勢は意欲的になっており、それらの取り組みを実行に移す際に必要な資金の供給も増えています。つまり、ESG課題に積極的に取り組む企業が活動しやすい環境が整い、社会全体でESGの好環境が生み出されつつあると言えると思います。

(ニッセイ基礎研究所 高岡 和佳子)

筆者紹介

高岡 和佳子(たかおか わかこ)

株式会社ニッセイ基礎研究所
金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・
ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任
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