第9回 ESGと個人 ~個人に期待されること~

2024年1月30日

個人がESGを推進する企業を応援する方法としては、日常生活でESGを考慮した商品の選択や消費を行う他、ESG投資を通じて企業のESGへの取り組みを後押しすることができます。ESG投資の企業への影響や個人投資家がESG投資を実際に行う方法について説明します。

ESGに関して個人ができる取り組みとしてはマイバッグやマイボトルの持参、環境に配慮した商品を購入するなど日常生活の中で行えることがあります。しかし、こうした日常での取り組みだけでなく投資家としてESGを考慮した投資を行うことで、様々な面から企業の経営に影響を与えることもできます。ESGを考慮し投資先を選定することで、ESGに取り組む企業に資金を供給することができます。例えば、再生可能エネルギーの利用やダイバーシティの促進を行う企業に投資することで、こうした取り組みを応援することができます。

ESGを考慮した投資を行うことは、企業が経営において短期的な利益だけでなく長期的な社会課題への取り組みを促します。企業が脱炭素化をはじめとした様々な社会課題に取り組むには、技術開発や普及のための資金が必要となります。次世代技術の中には短期的な収益にはつながりにくいが、将来的に重要であり長期的な取り組みが必要なものもあります。

また、多くの投資家がESGを考慮することは、企業が自社のESGに関する取り組みを発信することや情報開示を促します。企業経営の情報開示は経営の透明性の向上やガバナンスの改善により不祥事等を防止し、経営の持続可能性を向上させます。多くの企業がESGを考慮した経営を行うことは社会全体を持続可能に変えていくことにつながります。

実際に、個人投資家がESG投資を行うにあたって投資先としては、個別株、債券、投資信託(ファンド)などがあります。個人投資家が自身で多数の企業のESG取り組みに関する情報を収集し、個別の株や債券を選定するのは困難ですが、専門家の知識や経験を借りて、ESG投資を行う方法の一つとして、ESGファンドがあります。

ESGファンドでは、ESG全般を考慮するファンドに加えて、気候変動、自然保護、女性活躍など様々なテーマに着目した投資を行うESGに関連するテーマ型ファンドに投資することもできます。例えば、ニッセイ気候変動関連グローバル株式ファンド(愛称:フォー・ザ・フューチャー)では、再生可能エネルギーなど気候変動に関連する事業を展開する企業の株式に投資します。こうしたテーマ型ファンドに投資することは自身が特に関心のある社会課題の改善に投資を通じて貢献することにつながります。また、投資信託を通じたESG投資では議決権行使やエンゲージメントを通じて、経営の改善の働きかけを行うことができます。
ただし、ESGファンドに投資を行ううえでは、その運用内容について吟味した上で、自身の投資方針に合った投資信託を選ぶことが望ましいです。投資信託の目論見書や月次レポートといった資料から、どのようにESGを考慮し運用を行うか、実際に投資方針に従った運用が行われているかについて確認することが大切です。

個人投資家によるESG投資は企業に様々な影響を与えており、企業の経営の改善を促し、持続可能な社会を実現するうえで重要な役割を担っています。ESGを考慮した投資を行うことで一人一人の意思を企業や社会に示し、社会全体の改善に役立てることができます。

議決権行使 株主が株主総会で企業の経営などに関する議案に対する賛否を投票することをいう。株主は議決権行使を通じて自身の意思・意見を表明することができる。
エンゲージメント 投資家が投資先企業の経営を改善するために行う、建設的な目的をもった対話。
目論見書 投資信託を購入するときの手数料や保有している間にかかる費用、投資信託の特色やリスクなど投資信託への投資判断に必要な重要事項を説明した書類。
月次レポート 投資信託の運用状況を公表するために運用会社が毎月発行しているレポートを指す。投資信託の運用パフォーマンスや投資環境を確認することができる。

(ニッセイ基礎研究所 原田 哲志)

筆者紹介

原田 哲志(はらだ さとし)

株式会社ニッセイ基礎研究所
金融研究部 准主任研究員・ESG推進室兼任
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