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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第76回 新社会人の必要経費、78万円って本当?〜所得税の仕組み〜

2016年6月1日

所得税の仕組み、控除って何?

 ご自分の給与明細を見て、所得税が引かれていることに気づきましたか?所得税とは個人が1年間(1月1日〜12月31日)に得た所得に対してかかる税金です。所得税の決定の仕組みまでは理解していない方も多いと思いますので、今回は所得税の概要について解説します。(図表1)

図表1 所得税の仕組み

(資料) 筆者作成

 給与所得者が支払う所得税額の算出は給与の年間合計額が基点となります。給与の年間合計額から、給与所得控除を差引いた金額を給与所得といいます。原則として、所得税はさまざまな所得の合計額(総所得金額)に基づき計算しますが、保有する賃貸用不動産からの賃貸料収入など、給与以外の収入がない限り、給与所得と総所得金額は一致します。次に、所得控除を差引いた金額を課税所得といい、所得税額は課税所得に応じて決まります。そして、課税所得に対する所得税額の割合は、課税所得が大きいほど高くなるよう設定されています。(図表2)最後に、税額控除といって所得税から一定金額を減じる制度もあります。税額控除の代表例が住宅借入金等特別控除、いわゆる住宅ローン減税です。新社会人の皆様には、ちょっと先の話ですね。

 勘のよい方はお気づきかもしれませんが、同じ控除でも、税額控除1万円と所得控除1万円では実際に支払う所得税額への影響が全く異なるのです。税額控除1万円は、税金を1万円軽減します。対して所得控除1万円は、そのうち課税所得に応じて決定する一定割合分、新入社員の皆様の場合は5百円程度の税金を軽減する効果になります。

図表2 課税所得と所得税額の関係

(資料) 国税庁ホームページより筆者作成

給与所得控除と他の所得控除ってどう違うの?

 給与の年間合計額から給与所得を算出する際に控除する給与所得控除と、総所得金額から課税所得を算出する際に控除する所得控除では一体何が違うのでしょうか?

 総所得金額から課税所得を算出する際に控除する所得控除(図表3)には、各納税の個人的事情を考慮する役割があり、給与所得の有無に関らず適用されます。一方、給与の年間合計額から給与所得を算出する際に控除する給与所得控除には、勤務に伴う必要経費の性質があります。つまり、給与所得のある人にのみ適用される控除です。では、勤務に伴う必要経費はどのように捕捉されているのでしょうか。

図表3 所得控除の種類

(資料) 国税庁ホームページより筆者作成

新社会人の必要経費はどれくらい?

 勤務に伴う必要経費の性質がある給与所得控除は、給与の年間合計額によって決まります。厳密に必要経費を捕捉しているわけではなく、勤務に伴う必要経費の概算値に基づき所得税は計算されているのです。

 では、具体的にどの程度の額が控除されるのでしょうか?仮に、給与の合計(4月〜12月)が200万円なら78万円、240万円なら90万円 に及びます。つまり、所得税を算出するうえで、皆様が勤務に伴う必要経費として78万円〜90万円程度費やしていると想定されているのです。ご自身と比べてどうでしょうか。

 多いと思った方は、無理のない範囲で、仕事に活かせる資格やスキルを習得するための自己投資を検討してみてはいかがでしょうか。入社して1年経過すると、教育訓練受講に支払った費用の一部が支給される教育訓練給付制度(※)もありますよ。

(※) 教育訓練給付制度については、厚生労働省HPでご確認ください。

(ニッセイ基礎研究所 高岡 和佳子)