新社会人のための経済学コラム

第164回 健康寿命は男性72.7年、女性75.4年。コロナ禍で2022年の結果はどうなるか?

2023年10月20日

「健康寿命」とは

 日本の寿命は、男女とも世界でも最高水準にあります。長寿は、喜ばしいことですが、長生きすることに不安を感じる人も多いようです。“健康で”長生きすることが多くの人の願いとなっており、寿命だけでなく、「健康寿命」への関心の方が高まっているように感じられます。

 「健康寿命」とは、人が「健康に生きていられる期間」のことです。どういう状態を“健康”と呼ぶかについては、様々な考え方がありますが、現在、国が公表している「健康寿命」では、“健康”を、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できている状態と定義し、この定義に基づく健康寿命を厚生労働省による「国民生活基礎調査」の結果を使って3年ごとに算出しています。
 2001年以降の推移を図1に示します。図1から、寿命も健康寿命も延伸していることがわかります。しかし、寿命と健康寿命の差、すなわち「不健康期間」はほとんど変わっておらず、課題となっています。

図1 寿命と健康寿命の推移

(資料)厚生労働省e-ヘルスネット「平均寿命と健康寿命」新しいウィンドウ

健康寿命延伸に向けた取り組み

 健康長寿の実現に向けて、「平均寿命を上回る健康寿命の延伸」と、「健康寿命の地域差の縮小」が国の政策目標として取り入れられています。2013年度に始まった国民の健康づくり対策である「健康日本21(第二次)」(※1)では、平均寿命を上回る健康寿命の延伸目標については達成しましたが、健康寿命の地域差縮小については女性で達成できていないことが2022年の最終報告書で報告され、2024年度から始まる「健康日本21(第三次)」でも引き続き目標として掲げられることになっています。

 ところで、健康寿命延伸に向けた取り組みというと、中高年に向けた取り組みを想像するかもしれません。しかし、健康寿命の延伸を達成するためには、若い頃からの健康増進も大切です。と言うのも、健康寿命の算出に使用されている「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できている」割合は、例えば2010年と2019年を比較すると、60歳以上といった高齢部分では改善していますが、45歳未満の若い人では必ずしも改善していません(図2)。

(※1)健康日本21(第二次)とは、国による国民の健康づくり対策で2013年度にスタートしました。国民全体のさまざまな健康課題に対して目標数値を定め、生活習慣の改善などに計画的に取り組むことで、国民の健康寿命の延伸を図るものです。

(資料)厚生労働省「健康日本21(第二次)」新しいウィンドウ

図2 健康上の問題で日常生活に制限がある割合の変化

(資料)厚生労働省「国民生活基礎調査、2010年、2019年」新しいウィンドウ

これからの健康増進に向けて

 2019年に策定された「健康寿命延伸プラン」(※2)では、若い人の健康増進を見据えて、自然に健康になれる環境づくりや行動変容を促す仕掛けも活用しようとしています。例えば、健康無関心・低関心層への食環境改善に向けた啓発、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援、糖尿病などの生活習慣病の重症化予防といった現役世代に向けた取組みも進められています。

 この3年あまり、新型コロナウイルス感染症の流行にともなって生活環境に変化がありました。また、2022年の平均寿命は男女とも2年連続して短くなっています。こうした環境変化の中、2022年の健康寿命もいずれ公表されると思われます。
こういった機会に、ご自身の健康状態に改めて関心をもってみてはいかがでしょうか。

(※2)厚生労働省e-ヘルスネット「健康寿命延伸プラン」新しいウィンドウ

(ニッセイ基礎研究所 村松 容子)

筆者紹介

村松 容子(むらまつ ようこ)

株式会社ニッセイ基礎研究所、保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任
研究・専門分野:健康・医療、生保市場調査

▼ニッセイ基礎研究所ホームページ(村松研究員)

https://www.nli-research.co.jp/topics_detail2/id=54?site=nli新しいウィンドウ

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