新社会人のための経済学コラム

第162回 増える一人暮らしの高齢者 2020年は672万人、2040年には896万人の見通し

2023年8月7日

単身高齢者は増加する見通し

 本稿を読まれている新社会人の中には就職を機に故郷を離れた方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回取り上げるのは、故郷に残ったご家族に将来関係する、かもしれないテーマです。

 皆さんは65歳以上の一人暮らしの方(いわゆる単身高齢者)が年々増加していることをご存知ですか。

 総務省によると、1980年に88万人であった単身高齢者の数は2020年には672万人にまで増加しました。今後も更なる増加が見込まれており、2040年には896万人に達するという推計が示されています。(図表)

(図表)65歳以上の一人暮らしの者の傾向

なぜ、増加するのか

 さて、単身高齢者数は「単身高齢者数=高齢者人口×高齢者のうち一人暮らしの人の割合」で求めることができます。単身高齢者数が増加しているのは、①高齢者人口、②高齢者のうち一人暮らしの人の割合、の両方が増加しているためです。

 第一に、日本の高齢者人口は1980年の1,065万人から2020年の3,603万人へと大幅に増加しており、2040年には更に増加して3,929万人となる見通しです。(1)第二に、一人暮らしの高齢者の割合の増加には、生涯を通して結婚をしない人の割合、すなわち生涯未婚率(2)の上昇や、65歳以上の親と子どもの同居率の低下が影響を及ぼしていると思われます。具体的には、1980年から2020年にかけて、男女の生涯未婚率はそれぞれ、男性:2.6%→28.3%、女性:4.5%→17.8%へと上昇し、(3)65歳以上の親と子どもの同居率は69.0%→36.2%(2021年)に低下しています。(4)

  • (1)総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(死亡中位)
  • (2)政府統計等では、50歳時点で一度も結婚をしたことがない人の割合を意味する

生活支援に向けた取組の動きも

 単身高齢者が増加すること自体がすぐに何かの問題を引き起こすわけではありません。しかし、単身高齢者の体力や判断能力などが低下した際に、身寄りがないことで日常生活に困難を抱えてしまったり、地域社会から孤立してしまったりする可能性がある点には留意しておく必要があるでしょう。今後単身高齢者が増加することが見込まれている中、そのような方々の生活をどのように支えていくかは大きな課題です。
 それでは、この課題を解決するためにはどのような方法が考えられるでしょうか。政府は、地域住民等が支え合い、一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていくことのできる「地域共生社会」の実現を目指しており、多くの地方自治体で包括的な支援体制の構築が進みつつあります。また、地域のIT企業と連携し、デジタル技術を活用して高齢者も含めた地域のコミュニティ形成を図る等、地方自治体による支援をサポートするような取組も見られるようになってきています。今後、こういった事例が一層広がっていくことが期待されます。

  • (3)総務省「国勢調査」に基づく実績値。国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」(配偶関係不詳補完結果に基づく)
  • (4)厚生省「厚生行政基礎調査」、厚生労働省「国民生活基礎調査」、なお、2020年は国民生活基礎調査が実施されなかった。

(ニッセイ基礎研究所 坂田 紘野)

筆者紹介

坂田 紘野(さかた こうや)

株式会社ニッセイ基礎研究所、総合政策研究部 研究員
研究・専門分野:日本経済

▼ニッセイ基礎研究所ホームページ(坂田研究員)

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