新社会人のための経済学コラム

第151回 持続可能な開発目標SDGsの17の目標を学ぼう

2022年9月29日

持続可能な開発目標SDGsとは

 社会や環境への関心の高まりを背景に「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)の17の目標」が話題となっています。SDGsについてテレビや新聞、仕事や学校で聞いたことがある方も多いでしょう。しかし、17の目標について必ずしも詳しくは知られておらず、これを理解し実践している方は多くないのではないでしょうか。ここでは、SDGsの17の目標について学び改めて理解を深めていきたいと思います。

 SDGsは2015年9月にニューヨークで開催された国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を実現するために掲げた国際的な目標です。貧困、不平等、気候変動など、世界のさまざまな問題を根本的に解決し、全ての人により良い世界をつくるために設定された17の目標(ゴール)とこれを細分化した169のターゲットから構成されています(図表1)

 SDGsの17の目標は、社会・経済・環境に関する目標と横断的な目標に大きく分けられます。目標1から6は社会に関するものであり、貧困、飢餓、健康福祉、教育、ジェンダー、水といった課題を挙げています。目標7から12は経済に関するものであり、エネルギー、雇用、格差、経済成長、生活インフラといった課題を挙げています。目標13から15は環境に関するものであり、気候変動や陸と海の豊かさといった生物の多様性の持続に関する課題を挙げています。目標16、17は横断的なものとなっています。

図表1 持続可能な開発目標SDGsの17の目標

(資料) 国際連合広報センター

 こうした目標の実現に向けて世界各国で様々な取り組みが行われています。SDGsの達成に向けた取り組みは以前から環境や社会課題への関心が高い欧州諸国が先行している状況です。EUではSDGsを政策の優先目標として、通商政策や開発援助といった対外政策や様々な域内政策に反映しています。EUはSDGsの17の目標のうち一つ以上を振り分けた「欧州グリーン・ディール」、「欧州デジタル化対応」、「人々のための経済」、「欧州生活様式の推進」、「世界における強固な欧州」、「欧州民主主義の更なる推進」の6つの政策の優先課題を掲げています(図表2)。また、EUの個別の構成国でも英国での脱炭素やサステナブル・ファイナンスの推進、フィンランドでのサステナブルな観光といった様々な取り組みが行われています。

図表2 欧州委員会の6つの優先課題

(資料) 欧州委員会資料をもとに筆者作成

SDGs達成に向けた日本での取り組み

 海外だけでなく、日本でもSDGs達成に向けた取り組みが進められています。2016年5月、政府は総理大臣を本部長、官房長官・外務大臣を副本部長、全閣僚を構成員とするSDGs推進本部を設置しました。更に同年12月にはSDGsの達成に向けて「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」を策定しました。SDGs推進本部では、2017から毎年、SDGs実施指針で定めた8つの優先課題に基づき、政府の施策を整理した「SDGsアクションプラン」を公表しています(図表3)

 こうした取り組みを行うとともに地方自治体のSDGs取り組みの推進することを目的として、地方自治体での優れたSDGs取り組みを「SDGs未来都市」として選出・公表しています。2022年度には新潟市の「将来に向けた持続可能な食と農の創出プロジェクト」など30都市が選出されました。また、企業・団体等による優れたSDGs取り組みを「ジャパンSDGsアワード」として選出・公表しています。

図表3 持続可能な開発目標(SDGs)実施指針の8つの優先課題

(資料) SDGs推進本部資料をもとに筆者作成

企業によるSDGs取り組みの事例とそのメリット

 こうした政府による取り組みが進められてきた中、民間企業でも経団連が新たな企業行動憲章にSDGsの趣旨を盛り込むなどSDGsに関する取り組みが広がっており、様々な企業により実際にSDGs取り組みが行われています。例えば、大手自動車メーカーであるトヨタ自動車は、走行の際に二酸化炭素を排出しない電気自動車の開発を行い、気候変動の抑制に取り組んでいます。また、高齢化社会での介護や災害時の救助に役立つヒューマノイドロボットの開発を行い、人々の健康や福祉の向上に取り組んでいます。日清食品グループでは、日本や世界で大規模な災害が発生した際に被災地にインスタントラーメンを無償で提供する取り組みを行い、SDGs目標2「飢餓をゼロに」の達成に貢献しています。

 こうした取り組みは企業にとって①ブランドイメージの向上などによる企業価値向上、②株主などのステークホルダーとの関係性の改善による事業の安定性の確保、③優秀な人材の確保や従業員の意欲向上による生産性の向上といったメリットがあると考えられます。SDGs取り組みによるブランドイメージの向上は、求職者から見て単純な労働条件以外の企業の魅力をもたらし、採用を有利に行えることにつながると考えられます。またSDGs目標8「働きがいも経済成長も」と関連して、働きやすい環境を整備することは従業員のモチベーションアップやエンゲージメントの向上につながります。

一人ひとりの行動が社会の改善に

 SDGsの目標は気候変動など世界規模での目標も含まれており、各国政府や国際機関が主体となって取り組んでいるものも多いです。しかし、こうした機関だけでなく、企業や民間団体、地域、家庭、そして一人ひとりが本質的にはSDGsの担い手です。一人ひとりがSDGsの目標といった課題について知り、行動していくことが環境や人々の課題の解決につながっていきます。

(ニッセイ基礎研究所 原田 哲志)

筆者紹介

原田 哲志(はらだ さとし)

株式会社ニッセイ基礎研究所、金融研究部 准主任研究員・ESG推進室兼任
研究・専門分野:資産運用、オルタナティブ投資

▼ニッセイ基礎研究所ホームページ(原田研究員)

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