政府は、専門的なデジタル知識・能力を有し、デジタル実装による地域の課題解決をけん引する「デジタル推進人材」を2026年度末までに230万人育成することを目指しています。
目標の実現に向け、職業訓練におけるデジタル分野の重点化や大学・高専における数理・データサイエンス・AI教育の促進、いわゆる学び直しであるリカレント教育(※1)の推進等を行う方針です。
2022年8月1日
なぜ、政府はデジタル推進人材の育成に注力するのでしょうか。この理由としては、岸田首相の掲げる「デジタル田園都市国家構想」の存在が挙げられます。これは、デジタルの力を活用して、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指す構想です。具体的には、イノベーション促進や中堅・中小企業の生産性向上、結婚・出産・子育てがしやすい地域づくり等に取組む方針です。
当然、デジタル田園都市国家構想の実現には担い手となる人材が必要となります。政府は、構想の実現のために必要なデジタル推進人材を330万人と推定しています。しかし、現在のところでは、デジタルを活用した社会課題解決への貢献が期待されるIT技術者の数は約100万人にとどまっています。この差である230万人が、政府のデジタル推進人材の育成・確保の目標になっています。更に、図表に示されているようなIT技術者の都市圏への集中も、課題と考えられています。政府は、育成したデジタル人材が都市部に偏在することのないよう、地域企業への人材マッチング支援等を通した地域への還流促進にも取組む方針です。同時に、構想の実現に向け、私たち一人ひとりのデジタルリテラシー(※2)の向上や、高齢者等のデジタルに不慣れな方へのサポート等も推進します。
構想では、「デジタルは地方の社会課題を解決するための鍵であり、新しい価値を生み出す源泉」と示されています。また、各地域が自主的・主体的に取組を推進する、ボトムアップの成長の必要性も強調されています。各地域がデジタルを活用して、社会課題の解決や新たなサービスの創出等に取組み、それぞれの地域の魅力を向上させていくことが期待されます。
ところで、時の首相から「田園都市構想」が打ち出されるのはこれが初めてではありません。約40年前、1978年に首相に就任した大平正芳元首相は官僚や学者などを集め、「田園都市構想」を検討しました。大平元首相は岸田首相の派閥の先輩にあたる人物です。大平元首相が在任中に急逝してしまったために、残念ながら当時の検討内容はほとんど実行に移されませんでした。しかし、岸田首相は自身の著書で「『田園都市構想』を継承し、それを実現する」決意を示しています。「デジタル田園都市国家構想」は今年6月に基本方針が定められたばかりであり、今後が注目されます。
(ニッセイ基礎研究所 坂田 紘野)
筆者紹介坂田 紘野(さかた こうや)
株式会社ニッセイ基礎研究所、総合政策研究部 研究員
研究・専門分野:日本経済
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