第6回 ESGの「G」について考える

2023年11月1日

ESGのGはGovernance(ガバナンス)の頭文字であり、これは日本語では「統治、管理、支配」といった意味を持っています。ガバナンスには、昨今注目されている不祥事の防止や関係者との信頼関係の構築、社会的な評価の向上といった中長期的な企業価値の向上につながる役割があります。様々な取組からガバナンスの役割について学んでいきたいと思います。

ガバナンスはビジネスにおいては通常、企業経営におけるガバナンス(コーポレートガバナンス)を指します。
金融庁と東京証券取引所は上場企業がコーポレートガバナンスを構築する際に参照すべきガイドラインとなる「コーポレートガバナンスコード」を公表しています。その中で、コーポレートガバナンスについて「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」と定義しています。

日本では、2000年代頃に、大企業による不祥事が相次いだことから、ガバナンスが注目されるようになりました。企業の不祥事は、企業の信用やイメージを毀損し、経営の継続が困難となる事態につながりかねません。過去に不祥事が発生した事例においては、企業は取引の停止や金融機関からの融資の引き上げ、関係法令による処罰、ブランドイメージの失墜などによる顧客離れといった非常に厳しい事態に直面しています。

経営者の独善的な行動、利益至上主義による不正行為の横行・黙認、背任行為、横領といったリスクを未然に防ぐにはガバナンスを強化、浸透させることが必要です。
また、ガバナンスの強化は不祥事の防止だけでなく、企業の社会的な評価の向上にもつながります。従業員を含む様々なステークホルダーに適切な配慮を行い安定的な関係を構築していくことは事業の安定につながり、金融市場での評価の向上や出資を受けやすくなることは企業の安定的な成長につながることから、中長期的な企業価値の向上が期待されます。

ガバナンスを強化する具体的な方法としては「内部統制を向上するための部署の設置」や「内部監査の実施」、「社外取締役の設置」、「内部通報制度の整備」などが挙げられます。
また、ガバナンスを強化する上では「コンプライアンス」が重要となります。コンプライアンスは「法令遵守」を意味する単語であり、法令に加えて社会規範や倫理観を尊重・遵守することを意味します。コンプライアンスの意識が低い企業では、ルールの軽視から不正が起きやすくなりやすくなります。コンプライアンス委員会の設置や従業員へのコンプライアンス研修を実施することがルールの遵守、コンプライアンスの向上につながります。

不祥事を防止し、企業の健全な経営と成長を持続していくにはガバナンスの向上と維持が必要となります。そのためには、適切なガバナンスの体制の構築やルール作りを行っていくことが必要となります。また、ルールを策定するだけでなく、これを浸透し従業員一人一人が尊重・遵守していくことが大切です。

ステークホルダー 従業員、顧客、株主、取引先、地域住民といった企業が事業活動を行うにあたっての利害関係者を意味する。
社外取締役 社外から雇う取締役を指す。社内の派閥や利害関係に左右されず、客観的な視点から経営の改善やチェックを行うことが期待される。
内部統制 企業が不祥事などを防ぎ、健全かつ効率的に事業を行うために必要な仕組みを整備・運用することで、事業活動を適切に統制することを指す。
内部監査 企業内での独立した監査組織が、自社の事業において法令や規則が遵守されていることを確認することを指す。
内部通報制度 従業員が企業内の不正を通報できる窓口を設け、通報者を保護する制度を指す。企業内の不正を早期に発見することで健全な経営を維持することを目的とする。

(ニッセイ基礎研究所 原田 哲志)

筆者紹介

原田 哲志(はらだ さとし)

株式会社ニッセイ基礎研究所
金融研究部 准主任研究員・ESG推進室兼任
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