認知症はどんな病気?症状や種類について解説

読了目安:約6分

病気/ケガ

2025.09.24

認知症は、自分や家族にとって不安の大きい病気のひとつです。症状や種類はいくつかあり、その特性に応じた対応や治療法があります。この記事では、認知症の症状や種類について解説したうえで、認知症を未然に防ぐために日常生活で取り入れられる予防策についても紹介します。

〈この記事でわかること〉

  • 高齢化とともに認知症患者は増えており、2022年で約443万人
  • 物忘れと認知症は忘れる事柄や自覚の有無、日常生活への支障などの違いがある
  • 早期発見や早期診断によっては進行を抑えたり、治療できたりする可能性がある
  • 認知症になると医療費や介護費用などが発生するため、所定の認知症に重点的に備える保険もある

認知症とはどんな病気?

認知症とは、脳に起こる疾患や障がいなどにより、記憶力や判断力といった認知機能が低下し、日常生活に支障をきたした状態のことです。

高齢化の進展と共に、認知症患者は増加しています。厚生労働省の研究報告書によると、日本の認知症患者数は2022年時点で約443万人であり、これは高齢者人口の12.3%にあたります。また2040年には約584万人、高齢者人口の14.9%に増えると推計されています。[注1]

一般的に高齢者に多い認知症ですが、「若年性認知症」といって65歳未満で認知症を発症する人もいます。認知症は年齢に関係なく、自身や家族などの周囲の人にとっても身近な病気であると考えられるでしょう。

[注1]厚生労働省「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」

認知症と物忘れの違いとは?

加齢に伴い、忘れやすくなったり、物を覚えにくくなったりすることは誰にでもあることです。いわゆる物忘れと認知症は似たような症状が現れることもありますが、物忘れと認知症では忘れる事柄や自覚の有無、日常生活への支障などにおいて違いがあります。[注2]

  加齢による物忘れ 認知症による物忘れ
体験したこと 一部を忘れる
例)朝ごはんのメニュー
全てを忘れている
例)朝ごはんを食べたこと自体
物忘れの自覚 ある ない
(初期には自覚があることが少なくない)
日常生活への支障 ない ある
症状の進行 極めて徐々にしか進行しない 進行する

[注2]政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」

どんな症状が起こる?

認知症になるとさまざまな症状が見られますが、大きく分けると「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の2つがあります。

中核症状

中核症状とは、脳の神経細胞の働きが低下したことで起きる症状で、理解力や判断力の低下など認知症の本質的な症状です。

例えば、数分前や数時間前の出来事をすぐ忘れる、昔から知っている人や物の名前を思い出せない、新しいことを覚えられないといった「記憶障がい」が見られます。他にも時間や場所、出来事の前後関係がわからなくなる「見当識障がい」などの症状があります。

行動・心理症状(BPSD)

行動・心理症状(BPSD)とは、残存している脳機能がアンバランスに働いてしまうことによって起きる症状です。中核症状が原因となり行動や心理に症状が現れるため、周辺症状とも呼ばれます。

行動・心理症状(BPSD)は、中核症状の状態や本人の性格・身体状況・生活環境・人間関係などに影響されるため、症状の出方には個人差があります。

認知症にはどんな種類がある?

認知症は、発症する要因によって複数の種類に分けられ、それぞれ症状が異なります。主な種類ごとの症状を確認していきましょう。

アルツハイマー型認知症

日本の認知症患者の約7割と多くを占めるのがアルツハイマー型認知症です。
脳内にたまった異常なたんぱく質により神経細胞が破壊され、脳に萎縮が起こることで認知症が発症すると考えられています。軽度の物忘れ(記憶障がい)から徐々に進行し、やがて時間や場所がわからなくなったり(見当識障がい)、今までできていた動作を行えなくなったり(失行)する特徴があります。

脳血管性認知症

脳梗塞や脳出血といった脳血管障がいによって、脳細胞に十分な血液が送られず、脳細胞が死んでしまうことで発症するのが脳血管性認知症です。このタイプの認知症は、脳血管障がいが起こるたびに段階的に進行します。具体的な症状は、脳のどの部分に血管障がいを起こしたかによって異なりますが、まひなど体の症状を伴うことがあります

レビー小体型認知症

脳内にたまったレビー小体という特殊なたんぱく質によって脳の神経細胞が破壊され、発症するのがレビー小体型認知症です。現実にはないものが見える(幻視)、手足が震えたり歩幅が小刻みになったりして転びやすくなる(パーキンソン症状)、睡眠中に夢を見て叫ぶ(レム睡眠行動異常症)などの特徴があります。

前頭側頭型認知症

脳の前頭葉と側頭葉で神経細胞が減少し、脳に萎縮が起こることで発症すると考えられているのが前頭側頭型認知症です。感情の抑制がきかなくなったり、社会のルールを守れなくなったりする特徴があります。

若年性認知症

65歳未満で認知症を発症した場合、若年性認知症と呼ばれており、血管性認知症が最も多いといわれています。若年性認知症は就労や育児、子どもの教育、親の介護などと重なることもあり、発症すると経済的な負担や子どもや配偶者への精神的な負担が重くなってしまう可能性があります。

そのほかの認知症

そのほか発症割合は少ないですが、慢性硬膜外血腫や正常性水頭症が原因となり認知症を引き起こすこともあります。慢性硬膜外血腫は、頭部打撲をはじめとした衝撃により、ゆっくりと硬膜の下に血腫が形成されるものです。正常性水頭症は、加齢に伴い脳背髄液の循環吸収に障がいを生じ、脳室(脳内の空間)が拡大していくものです。これらは手術によって原因を取り除くことで、認知症も改善されるといわれています。

認知症かもと思ったときはどうしたらいい?

認知症の疑いがある場合は、できるだけ早めに医療機関で受診しましょう。早期発見・早期診断によって治療できたり、進行を抑制できたりする可能性があります

まずはかかりつけ医に相談し、状況に応じて紹介状を書いてもらいましょう。かかりつけ医がいない場合には、医療機関の「物忘れ外来」や「認知症外来」を利用する方法があります。

認知症の検査は、一般的に以下の流れで行われます。

  • 面談:本人や家族から現状やこれまでの経過の聞き取り
  • 身体検査:認知症の原因となる他の病気の有無を確認するための血液検査・心電図検査・感染症検査・レントゲン検査など
  • 神経心理学検査:質問への回答や作業による検査
  • 脳画像検査:脳の画像を撮影し、萎縮度や血流の低下などを確認する検査

少しでも不安に感じたら、一人で悩まずに専門家へ相談することが大切です。

認知症の薬・治療方法はある?

記憶障がいや見当識障がいなどの中核症状は、認知症の進行を抑制するための薬物療法が可能です。2023年には、アルツハイマー病の原因物質に直接働きかけて、病気の進行自体を抑制する新薬が国内で初めて厚生労働省により承認され、今後の治療が期待されています。ただし、薬物療法は認知症の種類や進行度などによって適応可否が異なるため、医師としっかり相談することが大切です。

行動・心理症状(BPSD)には、症状を軽減させるために抗うつ剤や抗精神薬、抗てんかん薬、漢方薬などが用いられることがあります。そのほか、ゲームや計算ドリル等を使ったいわゆる脳トレや、昔の記憶を回想するなど認知機能を向上させる非薬物療法なども治療法のひとつとして行われます。

認知症の予防方法は?

認知症は誰にでも起こり得るものですが、予防に努めることも大切です。発症リスクの軽減や発症を遅らせるために、日ごろから以下の取り組みを心がけましょう。

生活習慣を整える

認知症の中でも割合の多いアルツハイマー型認知症や血管性認知症は、高血圧や脂質異常症、糖尿病など生活習慣病との関連があるとされています。日頃からバランスの良い食生活を心がけ、生活習慣を整えることで認知症のリスクを軽減できる可能性があります。

認知トレーニングを行う

脳トレやパズル、計算ドリルなどの認知能力を鍛えるトレーニングは、脳の認知機能低下を防ぎ、認知症予防にも役立ちます。義務感があると長続きしない可能性があるため、普段からの楽しみとして気軽に取り組むといいでしょう。

変化に気付いたら専門家に相談する

仮に認知症の症状が出たとしても、早期診断・早期治療を行うことで進行を遅らせられる可能性があります。物忘れと混同しがちな症状もありますが、自分自身や周囲の人の言動に変化を感じた場合は早めに専門家に相談することが大切です。

認知症に備える保険への加入を検討する

認知症を発症した場合、医療費や介護費用、施設への入居費用など様々な費用がかかり、家計の負担となってしまう可能性があります。そのため、所定の認知症に重点的に備えることができる保険へ加入することもひとつの方法です。保険で備えておくことによってご家族の安心も得られる可能性があるでしょう。

認知症に備える保険はこちら!

ニッセイ みらいのカタチ 認知症サポートプラス 認知症保障保険
  • 認知症軽度認知障がいを保障
  • 所定の認知症と診断確定された場合に保険金を受取れる
  • 詳しいご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり-定款・約款」を必ずご確認ください。

まとめ

認知症を発症すると、日常生活や社会生活にさまざまな支障をきたします。認知症の治療には薬物療法や非薬物療法があり、いずれも早期診断・早期治療を行うことで進行を遅らせられる可能性があります。認知症は加齢による物忘れとは違い、一般的に本人に忘れたことの自覚がないため、家族など周りの人が意識することも大切です。

監修者プロフィール

柴田充輝

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険だけでなく民間保険、家計相談などの実務を担当。
FP1級と社会保険労務士資格を活かして、家計や生活・保険の見直し、資産運用に関するアドバイスを行っている。保険関連全般や資産運用メディアへの執筆記事多数。

この記事をシェアする

  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram

(登)日本25-4572,25/9/9,営業企画部

Copyright © 日本生命保険相互会社