配偶者控除・配偶者特別控除とは?違いや計算方法について解説
税制/制度
2025.06.05

配偶者控除や配偶者特別控除は、自分や配偶者が要件を満たしていると受けられる所得控除です。しかし、両方の控除を同時に受けることはできず、それぞれ条件なども異なります。この記事では、配偶者控除および配偶者特別控除の概要や両者の違い、適用を受けるための条件などについて解説します。
<この記事でわかること>
- ・配偶者控除とは、年間所得が58万円以下の配偶者を扶養している人が受けられる所得控除
- ・配偶者特別控除とは、年間所得が58万円超133万円以下の配偶者を扶養している人が受けられる所得控除
- ・どちらも申告手続きは、年末調整または確定申告で可能
- ※本記事は2025年4月時点の制度内容や決定している税制改正後の内容に基づいて作成しております。制度内容は変更になる場合があります。
目次
配偶者控除・配偶者特別控除とは
配偶者控除と配偶者特別控除は、どちらも所得控除の一つです。納税者本人や配偶者の所得が条件に当てはまれば、納税者(配偶者を扶養する人)の所得額から一定金額を控除できます。所得控除を受けることで課税対象額が減り、税負担が軽減されます。
【令和7年度税制改正】年間の合計所得金額の上限が引き上げに
2025年の税制改正により、基礎控除や給与所得控除の最低保障額が引き上げられました。それにより配偶者控除や配偶者特別控除の適用範囲も変わり、人によっては世帯収入の増加につながる可能性があります。
配偶者控除とは
配偶者控除は、以下の条件に該当する配偶者を扶養している人が受けられる所得控除ですが、適用される条件は異なります。どのような所得控除で、どのような場合に対象となるか詳しく見ていきましょう。
配偶者控除の適用条件
配偶者控除の適用を受けるためには、以下の条件を満たすことが必要です。これらの条件は、その年の12月31日の現況で判断します。
- ・納税者本人の年間合計所得額が1,000万円以下である
- ・民法上の(婚姻関係のある)配偶者である
- ・納税者と生計を一にしている
- ・扶養される配偶者の年間所得額が48万円以下である(2025年からは58万円以下)
- ・青色申告者または白色申告者の事業専従者ではない
配偶者特別控除とは
配偶者特別控除は、配偶者控除を受けられない場合に、後述する条件を満たせば特別に所得控除を受けられる制度です。配偶者控除が適用されなくなることによる家計への影響を考慮して、設けられた所得控除制度です。
配偶者控除との違い
配偶者控除と配偶者特別控除では、適用となるための配偶者の所得額条件と納税者の所得から控除できる金額に違いがあります。
配偶者控除は、ボーダーラインとなる配偶者の所得額(2025年からは58万円以下)が設定されており、その金額を超えるかどうかで所得控除を受けられるかどうかが決まります。所得控除を受けられる場合、その控除額は、納税者の所得額によって3段階に区分されています。一方、配偶者特別控除は、適用となる配偶者の所得額に幅があり、その範囲内での配偶者の所得額および納税者の所得額によって控除額が変わります。
配偶者特別控除の適用条件
配偶者特別控除の適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- ・納税者本人の年間合計所得額が1,000万円以下である
- ・民法上の(婚姻関係のある)配偶者である
- ・納税者と生計を一にしている
- ・扶養される配偶者の年間所得額が48万円超133万円以下である(2025年度からは58万円超133万円以下)
- ・青色申告者または白色申告者の事業専従者ではない
- ・配偶者が、配偶者特別控除を適用していない(夫婦の間で互いに受けることはできない)
- ・配偶者が、別の親族(親など)の源泉徴収において扶養親族として控除を受けていない
- ・配偶者が公的年金等の受給者の扶養親族として控除を受けていない
配偶者控除・配偶者特別控除の控除額
配偶者の所得額と納税者の所得額に応じて受けられる配偶者控除・配偶者特別控除の控除額を表にまとめました。
【2024年まで】
配偶者の合計所得金額 | 控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | |||
---|---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
||
配偶者控除 | 48万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
配偶者特別控除 | 48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
出所:国税庁「No.1195 配偶者特別控除」および「No.1191 配偶者控除」をもとに筆者作表
【2025年から】
配偶者の合計所得金額 | 控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | |||
---|---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
||
配偶者控除 | 58万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
配偶者特別控除 | 58万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 133万円以下 | 配偶者・納税者の所得額に応じて段階的に変わる (所得額が多くなるほど控除額が減少) |
出所:国税庁「No.1195 配偶者特別控除」「No.1191 配偶者控除」および「令和7年度税制改正の大綱」をもとに筆者作表
配偶者控除・配偶者特別控除の申請方法

配偶者控除・配偶者特別控除の申請は、年末調整または確定申告によりおこないます。
年末調整で申告する
納税者が給与所得者であり、勤務先で年末調整を受けられる場合は、年末調整により手続きします。勤務先から配布される年末調整の申告書の「給与所得者の配偶者控除等申告書」の欄に配偶者の氏名や個人番号、配偶者の所得額などの必要項目をすべて記入して勤務先に提出しましょう。
なお、自身に適用される配偶者控除または配偶者特別控除の金額の記入も必要です。納税者および配偶者の所得額をもとに、申告書に記載されている控除額のうち該当する金額を選び、「配偶者控除の額」または「配偶者特別控除の額」のいずれかの欄に記入しましょう。
確定申告で申告する
納税者が個人事業主や自営業の場合は、確定申告で配偶者控除・配偶者特別控除の手続きをします。確定申告書に配偶者控除(または配偶者特別控除)を受けるために必要な項目を記入しましょう。以下の項目の記入が必要です。
確定申告書(第一表)
- ・「所得から差し引かれる金額」欄:配偶者(特別)控除の金額
- ・「その他」欄:配偶者の合計所得金額
確定申告書(第二表)
- ・配偶者や親族に関する事項
申告を忘れた場合
年末調整の際に配偶者控除または配偶者特別控除の申告を忘れた場合は、確定申告で手続きしましょう。確定申告の際に配偶者控除または配偶者特別控除の申告を忘れた場合は、税務署に「更正の請求書」を提出します。「更正の請求書」は申告期限から5年以内であればいつでも提出可能です。
配偶者控除・配偶者特別控除を受けるときの注意点
配偶者控除や配偶者特別控除が受けられるかどうかについて、いわゆる「年収の壁」が基準とされることがあります。しかし、ここまで説明したようにこれらの控除が適用されるかどうかは「所得」が基準です。年収の壁が何を意味するのか、きちんと理解しておくことが大切です。
年収の壁とは
年収の壁とは、年収が一定額を超えると税金や社会保険料の負担が増え、手取り収入が減ってしまう「ボーダーライン」のことです。複数の年収の壁があり、一般的に「○○万円の壁」といわれますが、ここでは配偶者控除・配偶者特別控除に関係する壁のみ説明します。なお、この「○○万円」は一般的に給与所得のみを得ている人の場合の金額です。事業所得や雑所得など、給与以外の所得がある場合には「○○万円の壁」の基準に当てはまらなくなる可能性もあるので注意しましょう。
103万円の壁
103万円の壁には、2つの意味があります。
一つ目は、所得税の支払いが発生するボーダーラインです。基礎控除48万円(2025年からは年収により58万~95万円)と給与所得控除の最低保障額である55万円(2025年からは65万円)を合わせると103万円となり、給与所得のみであれば年収が103万円以内であれば所得税がかかりません。一方、103万円を超えると所得税がかかり、手取り収入が減少します。
二つ目は、配偶者控除が適用されるかどうかのボーダーラインです。配偶者のパートなどの給与収入が年103万円以内であれば給与所得控除の最低保障額である55万円(2025年からは65万円)を差し引いた年間所得は48万円(2025年からは58万円)となり、配偶者控除の対象となります。一方、扶養されている配偶者の給与収入が年103万円を超えると配偶者控除ではなく配偶者特別控除を受けることになり、扶養者(納税者)の手取り収入が減少する可能性があります。
税制改正により、一つ目の103万円の壁は2025年1月1日から160万円に、二つ目の壁は123万円に引き上げられました。
150万円の壁
150万円の壁は、配偶者特別控除の額が満額(配偶者控除の額と同額)もらえなくなるボーダーラインで、このラインを超えると控除額が段階的に減少します。そのため扶養者(納税者)の手取り収入が減少する可能性があります。
税制改正により、150万円の壁は2025年1月1日から160万円に引き上げられました。
201万円の壁
201万円の壁は、配偶者特別控除が受けられなくなるボーダーラインです。配偶者の給与収入が年201万5,999円を超えると配偶者特別控除が適用されなくなり、扶養者(納税者)の手取り収入が減少します。
まとめ
配偶者控除または配偶者特別控除を受けることで、世帯全体で手取り収入が増えます。どちらも適用を受けるためには、配偶者および扶養者(納税者)の所得などの条件を満たすことが必要です。2025年度の税制改正により、配偶者の所得条件が引き上げられ、世帯の手取り収入が増える人が多くなることが見込まれます。年収の壁にも関心を持ち、収入や税金、社会保険なども考えながら総合的にベストな働き方を検討してみてはいかがでしょうか。
監修者プロフィール
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士
柴田充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。