外貨建て保険とは?メリット・デメリットについても解説
資産形成
2024.11.20

貯蓄機能や資産運用機能を兼ね備えている保険商品のなかには、外貨建ての保険商品があります。
外貨建て保険は、加入を通じて保有している通貨を分散できるため、資産を分散させつつ資産形成を進めるうえでも有用な存在です。
この記事では外貨建て保険の概要や仕組み、検討する際の重要なポイントなどについて解説しますので参考にしてください。
目次
外貨建て保険とは?
外貨建て保険とは、払い込んだ保険料が外貨で運用される保険です。
契約者は、原則として外貨で保険料を払い込みます。また、保険金・解約返戻金なども外貨で受け取ります。運用する外貨の種類は保険会社によりますが、米ドルや豪ドル、ユーロ建てが一般的です。
円建てで払い込み・受け取りが可能な商品も
外貨建て保険のなかには、特約を付加することで保険料の払い込みと保険金・解約返戻金の受け取りを日本円に設定できる商品もあります。
ただし、契約上は保険料や保険金が外貨で設定されるため、円で払い込む保険料や円で受け取る保険金は、為替レートの影響を受けて変動する点に注意が必要です。
例えば月払・口座振替で保険料を支払う場合、毎月、保険会社が定めるタイミングの為替レートで日本円に換算された金額が口座から引き落とされます。支払う保険料が「100ドル」と決まっていても、為替は変動するため、毎月の円換算保険料額が一定ではないケースが一般的です。
外貨建て保険の税金について
基本的に、生命保険で受け取る保険金や解約返戻金には税金がかかります。かかる税金は外貨建て保険も円建て保険も同じです。
ただ、外貨建て保険の場合は払い込み・受け取りを円にするか、外貨にするかによって課税対象となる金額の取り扱いが変わる点に注意が必要です。
払い込みや受け取りを円で行う場合は実際に払い込んだ保険料の金額と受け取った保険金の金額で計算しますが、外貨で行った場合は払い込み・受け取り金額を円に換算してから計算します。換算に用いる為替レートは、保険会社から交付される「ご契約のしおり」などに記載されているので必ず確認しましょう。
また外貨建て保険でも、払い込んだ保険料は生命保険料控除の対象です。年末調整や確定申告で生命保険料控除を申請する際にも、外貨で保険料を払い込んだ場合は円換算して行います。
外貨建て保険のメリット

外貨建て保険への加入を検討する際は、メリット・デメリットを理解しておくことも大切です。ここでは円建て保険に比べた際の外貨建て保険のメリットを3つ紹介します。
国内より比較的高い海外金利で運用できる
外貨建て保険で主な運用対象となる米国債や豪国債は、現在の状況では日本国債に比べて利回りが高いため、保険会社は高い金利で運用できます。外貨建て保険のなかには運用実績によって保険金や給付金が増えるものもあり、資産を増やすことが期待できるでしょう。
為替差益を得られる可能性がある
外貨建て保険における円高・円安の影響の部分で説明したように、保険金や解約返戻金を受け取るタイミングで契約時よりも円安になっていると、為替差益を得られる可能性があります。
円建て保険はそもそも為替の影響がありませんが、外貨建て保険は為替の影響を受ける点が特徴です。為替の状況次第では、当初の想定よりも受け取れる保険金や解約返戻金が大きくなるメリットが期待できます。
資産のリスク分散ができる
外貨の資産を保有することで、リスク分散ができます。外貨建て保険だけで考えると円安は為替差益につながる好ましいことですが、経済全体で見るとそうとも限りません。日本は食料品やエネルギーなど多くの物資を輸入に頼っているため、円安が続くとインフレ(物価の上昇)を引き起こし、お金(円)の価値低下につながります。
そのため保有する資産が円だけの場合、インフレが起こると実質的な資産価値が目減りします。一方、外貨資産は円安時には価値が増大するため、トータルで見ると資産価値の目減りを抑えられるのです。
外貨建て保険に加入すれば、保障を得つつも保有している通貨を分散でき、資産を守ることができます。
外貨建て保険のデメリット
円建て保険と比較した際の外貨建て保険のデメリットも3つ紹介します。
為替差損が発生する可能性がある
外貨建て保険に加入する際には、為替変動リスクがある点に注意しましょう。為替差益が期待できる一方で、保険金や解約返戻金を受け取るタイミングで契約時よりも円高になると、為替差損を被る可能性があります。
為替は常に変動しており、将来の為替相場は予測できません。契約時に為替差損が発生する可能性を織り込む必要があるでしょう。
為替手数料がかかる
外貨建て保険は、保険料の払い込み時や受け取り時に円貨と外貨の両替が必要になるため為替手数料がかかります。為替手数料は保険会社によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
なお、特約により円貨で払い込みや受け取りをする場合、契約者自身は外貨両替をする必要はありません。しかし、為替手数料が反映された為替レートによって、円貨から外貨、外貨から円貨への両替が行われるため、間接的に手数料を払うことになります。
金利変動リスクがある
外貨建て保険は円建て保険に比べて高金利の運用が期待できるとはいえ、金利変動リスクがあります。金利変動リスクとは、運用中に市中金利が変動し、その後の運用や資産価値にも影響を与えることです。
金利が運用にプラスに作用する場合もありますが、マイナスに作用する可能性がある点に留意しましょう。
外貨建て保険について正しく理解して検討しよう
外貨建て保険は、保障と資産運用の2つの機能を併せ持つ保険商品です。主に対象となる通貨の外国債で運用されるため、高金利での運用や為替差益を期待できます。
外貨建て保険の特性を理解したうえで、円建て保険よりも高い利回りで運用できる点を魅力に感じる方や、割安な保険料で加入したいと考えている方は外貨建て保険の加入を検討するとよいでしょう。
一方で、金利変動リスクや為替差損が発生するリスクがある点に注意しましょう。為替差損のリスクを避けたい方や、為替の影響で毎月の保険料の変動が気になるという方は、円建て保険のほうが向いている可能性が高いといえます。
保険を含めて金融商品にお金を投じる際には、商品の仕組みを正しく理解し、リスクを分散させることが大切です。さまざまな資産形成方法があるなかの1つとして、外貨建て保険も検討してみてはいかがでしょうか。
監修者プロフィール
柴田充輝
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。