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柔道

2025年2月14日(金)
女性活躍を共に考える会@大阪を開催!

「女性活躍推進」をテーマにセミナーを開催し、51企業約100名のお客様に参加いただきました。
セミナーには、柔道女子57キロ級のカナダ代表としてパリ2024オリンピックに出場した、出口クリスタ選手に登壇いただき、目標を達成するためのプロセスや結果を出すセルフマネジメントについてお話しいただきました。

出口クリスタ選手の講演

毎日を“ご機嫌でいること”で毎日が充実する

Q.昨今のオリンピックでの女性アスリートの活躍について

競技や国が偏ることなく、女性アスリートが活躍していると感じます。例えば、昔は結婚後、競技をやめる選手がほとんどでしたが、最近は、結婚や出産を経て競技に復活する選手が多くいて、社会が変わってきているということを実感します。また、そのことで、女性がアスリートとして続けられる期間が延びてきていると思います。

Q.柔道を始めたきっかけは?

知り合いから誘われて始めました。オリンピックを目指したのは自然の流れでした。振り返ると、パリまでの道は本当に長かったと感じます。

Q.東京2020オリンピックを目指して頑張る中、出場できないとなった時はどんな感情だった?

何も考えられなかったです。これまで味わったことのない感情でした。
でも、3位決定戦が残っていて、試合ができるような気持ちではなかったけれど、コーチから「出なさい」と言われて出ました。今から考えると、「勝ち負けではなく、あの時試合をしていたから、選手としての尊厳が守れた。柔道を続けてこられた」と思うので、よかったと思います。

Q.支えてくれる人がいたから今があるということですか?

そうですね。パリ2024オリンピックの代表決定戦になった、昨年の世界選手権では、私が勝った瞬間にライバルの選手のパリ出場が途絶えたのですが、その選手はすごくいい試合をしていました。東京の時の私と同じ状況だったわけですが、その試合を見た時、「私、人間としてまだまだ負けてるな」と思いました。
試合は勝ち負けがありますが、勝つことだけでなく、相手への尊敬や感謝を忘れないことが大切だといつも思っています。柔道は、相手がいるからこそできるスポーツなので、相手への感謝を忘れないことが大切ですし、そのことが自分も成長させてくれると思います

Q.東京2020オリンピックに向けた試合に負けてからどんなプロセスを踏んで今に至る?

負けた直後は、“とりあえず柔道から離れたい““柔道はしたくない”という感情ばかりで、やりたくなったら始めようと思っていました。でも、やっぱり柔道が好きなので、まずは運動くらいの感じから始めました。
そのあと、練習の回数が増えて、大会に出るようになって、また、いつの間にかオリンピックを目指すようになっていました。

Q.前向きな性格だからそう考えられたのでしょうか?

決して、ずっと前向きだったわけではなく、どちらかというと引きずるタイプでした。
また、負けた試合を振り返ると、プレッシャーにのまれて、自分のパフォーマンスを100%発揮できていなかったことに気づき、今後に向けては、メンタルを強化する必要があると思いました。
そこで、競技以外についてもらったメンタルトレーナーに言われたのが「ご機嫌でいなさい」ということでした。また、今日自分がした良いことを毎日10個あげなさいということを言われました

Q.良いことってどんなこと?

どんな小さなことでも何でもいいです。例えば、エスカレーターを先に譲ったとか。相手にありがとうと言えたとかです。
最初は10個あげることが難しいのですが、毎日続けることで、自分がポジティブになっていくのがわかりました。ポジティブになると、心に余裕が出てきて、少しのことでイライラしなくなります
イライラって伝播するので、自分がイライラしていると、後輩が遠慮して、練習をしていてもわざと負ける。そうすると、100%の練習になっていないから、競技にも悪い影響が出る、という悪循環が生まれます。

毎日ご機嫌でいることで、色々なことがうまく回っていくようになります

Q.自分の機嫌を取るにはどうしたらいい?

自分をほめてあげることが大切だと思います。ご機嫌でいられるためには何をしたらいいか?ご機嫌だとどんな良いことがあるか?を考えると、普段の思考が変わり、行動が変わります。
また、自分が不機嫌な状況がわかるようになり、自分にとっての良くない流れを正すようになります。

Q.そんなに考え方って変われるものですか?

パリに出場して金メダルを獲るという目標を達成するためには、変わるしかない状況だったので、変わることができました。
目標は絶対ぶれないことなので、その目標を意識しすぎないことが大切だと考え、目標と真正面から向き合わず、ピントをぼかすことで、試合に集中できました。

Q.他にはどんなことを教えてもらいましたか?

なんで柔道をやっているのか?ということを考え、改めて自分が好きだから続けているということに気づかせてもらいました。これまでは、“柔道しかやってこなかったから”と言い訳っぽく言うことが多く、やらされている感がどこかにありました。
ただ、改めて考えると、これまで続けてこられたのは、楽しいからだと気づき、自分が楽しんでやっていることだから、これまで以上に頑張ることができました。
また、“一生懸命やること”“自分の100点を目指すこと”は誰にも邪魔されないということも教えてもらいました。評価は他人が決めることだけど、自分が「これをする」と決めたことは誰も阻害できません。
だから、自分がコントロールできることに焦点を置くことで、少しのことではめげなくなりました。

Q.試合や大会ではメンタルと技術どっちが大切だと思いますか?

メンタルだと思います。そもそも大会に出場している選手は、全員技術もトップクラスの選手です。
その日の体調などはありますが、それを除くと、あとは試合で100%の力をだすためのメンタルを持てているかどうかだと思うので、メンタルが大切だと思います

Q.座右の銘はありますか?

最近「道草を楽しめ、大いに」という言葉がとても心に響きました。
パリを終えて、周りからの見られ方なども違うと感じていて、これからどうしたらいいか迷ってましたが、その迷っている時間さえ、自分にとっては大切なことだと思わせてくれた言葉でした。
無駄に思える時間も、結果無駄にならない。色々なことを無駄にするかしないかは、自分次第だと考えることができました

ー参加者から質問ー

Q.日本とカナダでのサポート体制の違いや女性アスリートのフォロー体制の違いはありますか?

カナダではないですが、東京2020オリンピックで金メダルを獲得して、その後、出産してパリ2024オリンピックに出場した選手がいます。その選手が、今度は2人目を産んで、ロスを目指すと言っていて、自然とそれを言えるだけの競技・家族のフォロー体制がすごいなと思いました。

Q.競技の協会などの男女比で女性が増えると良いと思うことはありますか?

柔道で言えば、コーチはもっと増えて欲しいと思います。
男性のコーチは階級問わず女性相手に稽古ができるけれど、女性のコーチの場合は、階級が重い男性の相手はできないということもあり女性コーチが少ないのが現状です。女性のコーチが増えたら、女性アスリートのよりやりやすい環境づくりにもつながると思いますので、柔道ももっと盛んになっていくのではないかと思います。

Q.目標としている人はいますか?

目標としている人はいません。ただ、柔道をする上でこういうアスリートでありたいなという選手はいます。
尊敬はしているけど、目標ではない
「優れるな、異なれ」というように、誰かと比べたりせず、色々ないいところを吸収してオリジナルの自分をつくっていけばいいと思います

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