第199回 マンション価格はこれからどうなる?数字で読み解く住宅市場の変化
新社会人のための経済学コラム2026年9月10日
マンション価格高騰のきっかけは、新築価格上昇
「いつかは家を買いたいけれど、今のマンション価格は高すぎる」と感じている人も多いのではないでしょうか。ニュースでは“マンション価格の高騰”が話題になりますが、最近は中古マンション市場に変化の兆しもみられます。
首都圏(1都3県)では、新築マンション価格の上昇と発売戸数の減少が同時に進んでいます。2026年6月に発売された新築マンションの平均価格は1億137万円(前年同月比+11%、2016年同月比+79%)となりました。10年前と比べると約8割高くなっています。
一方で、発売される新築マンションの戸数は減っています。2026年6月に首都圏で発売された新築マンションの戸数は1,564戸(前年同月比▲5%、2016年同月比▲49%)となりました(図表1)。10年前と比べると、およそ半分の水準まで減少しています。
図表1 新築マンション平均価格、発売戸数(首都圏(1都3県))
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(資料)不動産経済研究所の公表データからニッセイ基礎研究所作成
なぜ新築マンション価格は上がったのか
新築マンション価格は上昇を続けています。この背景には、販売する側と買う側双方の事情があげられます。
販売する側では、資材価格や人件費、土地代などマンションを作るための費用が、ここ数年で大きく上昇しました。完成したマンションの販売のしやすさから、都心部や駅近など、価格が高くても売れやすいマンションを建てたほうが事業として成り立ちやすくなりますが、駅前空き地といったマンション適地は限られます。その結果、販売されるマンションは少なくなり、高価格帯の物件が中心となりました。
一方で買う側の収入は、マンション価格の上昇ほどは増えていません。総務省の家計調査によると、2025年の「二人以上の世帯のうち勤労者世帯」の実収入は前年比+2.8%、2015年比+24.4%となりました。
新築マンションの価格は上がり、買える人が減り、供給も減りましたが、供給の少なさから購入希望者が限られた物件に集まり、新築マンション価格は押し上げられました。こうして、「新築マンションは欲しいけれど、予算が合わない」という人が増えてきました。
なぜ中古マンション価格も上がったのか
中古マンション価格も上昇しています。その背景には、新築マンション価格の上昇があります。新築マンションの予算が合わなくなっても、住宅購入そのものをあきらめる人ばかりではありません。新築を検討していた人の一部が中古マンションへ目を向けるようになり、中古マンションを購入する人が増えました。
2026年6月に首都圏で売買が成立した中古マンションの平均価格は5,208万円(前年同月比0%、2016年同月比+73%)、売買の成約件数は4,241件(前年同月比▲1%、2016年同月比+38%)となりました(図表2)。
図表2 中古マンション成約価格、成約件数(首都圏(1都3県))
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(資料)東日本不動産流通機構の公表データからニッセイ基礎研究所作成
中古マンション市場に変化
中古マンションも価格上昇が続いた結果、市場では売れ行きや価格に変化がみられるようになってきています。2026年4~6月には、首都圏中古マンションの成約件数は、7四半期ぶりに減少しました。平均価格は前年同期比ではほぼ横ばいとなったものの、前期比では下落しています。
これは、中古マンションへの需要がなくなったわけではありません。価格上昇により、中古マンション市場でも購入できる人が減り、以前のような勢いはなくなりつつあります。
特に、これまでは「高くても売れる」と考えられ、価格上昇をけん引してきた東京都心部の高価格帯中古マンションが、売れ残り始めています。2026年6月の首都圏の中古マンション在庫は、東京都では増加する一方、神奈川県、埼玉県、千葉県では減少しています(図表3)。価格が高くなりすぎた影響が、まず在庫の増加という形で表れ始めたと考えられます。
図表3 中古マンション在庫戸数の変化(首都圏(1都3県)、都道府県別、2026年6月前年同月比)
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(資料)東日本不動産流通機構の公表データからニッセイ基礎研究所作成
マンション価格はこれからどうなる?
中古マンションは、在庫が増え始めても、それがすぐに価格下落につながるとは限りません。まず売れ残りが増え、その状態が長く続くのであれば、その後に価格調整が始まることが一般的です。中古マンション価格が本格的に下落を始めたと判断するのは、まだ早いでしょう。
建築費や人件費の上昇が続くなか、マンションも、戸建ても、新築住宅の価格は下がりにくい状況が続くと考えられます。新築価格が高止まりすれば、相対的に価格を抑えやすい中古住宅の価格にも影響します。売れ残りが増え始めた中古マンションでは、今後、価格調整が進む可能性があります。一方で、建築費の上昇などによって新築住宅を供給しにくい状況が続けば、住宅価格は下がりにくいとみられます。
これから住宅購入を考える人は、今の価格だけを見るのではなく、住宅ローン金利の動向にも目を向ける必要があります。今は手が届かない価格の住宅でも、実質所得の増加などで収入が増えれば購入できるようになる可能性もあります。住宅購入は人生の中でも大きな買い物です。価格が上がるか下がるかだけではなく、自身の収入や将来のライフプランに合わせて判断することが大切です。
(ニッセイ基礎研究所 渡邊 布味子)
筆者紹介
