第197回 独身税とも言われる「子ども・子育て支援金」とは?

新社会人のための経済学コラム

2026年7月9日

はじめに

皆さんは、2026年4月より「子ども・子育て支援金」の制度が開始されたことをご存じでしょうか。この「子ども・子育て支援金」については、子どもを持たない独身者には恩恵を受けにくいとして、「独身税」と揶揄されることもあります。一方で、「子育て世帯には負担がない(徴収されない)」といった誤った認識も広がっています。本稿では、「子ども・子育て支援金」に関する制度の概要を解説します。

「子ども・子育て支援金」とはどのような制度か?
―子育て世帯への直接給付ではなく、公的医療保険料に上乗せして全世代から徴収される制度

日本では想定を上回るペースでの少子化の進展を背景に、政府(当時の岸田内閣)は、2023年12月に内閣官房の「こども未来戦略会議」での検討を経て、少子化対策を集中的に推進するための「こども・子育て支援加速化プラン」が閣議決定しました。このプランでは、若い世代が希望どおりに結婚し、希望する誰もが子どもを持ち、安心して子育てができる社会を目指して、児童手当の拡充や出生後休業支援給付などの6つの子育て支援策※1を全世代で支えることを目的に支援金が充てられる方針が明記されました。2024年6月には、「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第47号)※2が公布され、本制度の法的根拠が整備されました。
この制度は、少子化対策による受益が全世代・全経済主体に及ぶとの考え方に基づき、子育て世帯を支える新たな「分かち合い」や「連携」といった、社会連帯の理念を基盤として創設されたものです。公的医療保険制度※3に加入している全ての人が、支援金の拠出対象となります。日本では国民皆保険制度が採用されていることから、原則として、公的医療保険の保険料を負担している全ての人が、「子ども・子育て支援金」についても負担することになります。

独身税?子育て世帯は負担ゼロなのか?
―独身者を含む全世代が「子ども・子育て支援金」を負担、恩恵は次世代育成を通じた社会保障制度の維持に

「子ども・子育て支援金」の使途は、子育て支援施策への給付に限定されているため、独身者などからは「負担だけが生じ、恩恵を受けにくい」と受け止められ、「独身税」と批判されることもあります。しかし実際には、この支援金は独身者だけでなく、子どものいない夫婦、子育てを終えた世帯、高齢者を含む全世代から広く徴収される仕組みとなっています。そして、この「子ども・子育て支援金」によって支えられた次世代が、将来的に社会保障制度の担い手となることで、社会全体で支え合う循環が維持される仕組みであるとこども家庭庁は説明しています。※4また、「支援金」という名称から、子育て世帯に対する給付金であるかのような誤解を受けることがあります。もっとも、この制度は子育て世帯へ直接給付される制度ではなく、子育て支援施策を支える財源として広く徴収される仕組みです。近年の物価高対策として実施されている「子育て応援手当」などの給付制度と混同されるケースもあるようです。
さらに、子育て世帯について「支援金の負担がない」との誤解が広がった背景には、2024年2月の制度案閣議決定前後の国会審議における岸田首相の「実質負担は生じない」との国会答弁やその後の各省庁から繰り返し説明されてきたことが影響していると考えられます。
子ども・子育て支援金制度は、社会保障分野の歳出改革などによる社会保険料負担の軽減効果の範囲内で導入することが法定化されています。つまり、支援金が新たに上乗せされる一方で、既存の社会保険料負担を抑制・軽減する社会保障分野の歳出改革を行うことで、全体として負担増を相殺する仕組みとされています。このため、政府は、子育て世帯に限らず、この制度の導入によって実質的な追加負担は生じないとの考え方を示しています。※5もっとも、個人は新たに徴収される支援金が家計に直接的に影響する一方で、歳出改革による将来的・間接的な負担軽減効果を把握しにくいため、政府と個人の認識のずれが「実質負担ゼロ」との説明に対する疑問や誤解を生む一因となっています。

「子ども・子育て支援金」の拠出(負担)額はいくらなのか?
―2026年度は、被保険者一人当たり月550円程度の負担となる見込み

「子ども・子育て支援金」は、健康保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療制度の保険料に一定の支援金率を上乗せして徴収されます。
2026年度における被用者保険加入者の負担額は、「標準報酬月額 × 支援金率(0.23%)」により算出されます。なお、事業主がその2分の1を負担するため、加入者本人の実際の負担額は、標準報酬月額に0.0023を乗じた額の半分となります。
一方、国民健康保険および後期高齢者医療制度に加入している方については、市町村が定める条例に基づき、世帯や個人の所得等に応じて支援金額が決定されます。なお、市町村ごとに支援金に係る保険料率が異なるため、詳細は各市町村または広域連合へ確認する必要があります。
2026年度の支援金額(平均月額)は、被用者保険では被保険者一人当たり約550円、国民健康保険では一世帯当たり約300円、後期高齢者医療制度では被保険者一人当たり約200円と試算されています。(参照:図表1)
被用者保険に加入している方については、2026年5月給与分から支援金の天引きが開始されており、給与明細には、健康保険料とは別に「子ども・子育て支援金」として記載されている場合があります。※6また、国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している方については、加入している保険者によって徴収開始時期は異なりますが、6~7月頃に納入通知書が送付され、具体的な支援金額や徴収開始時期が通知される予定です。

2026年(令和8年)度の支援金額の推計(平均月額)と徴収の流れ(イメージ)

おわりに

子ども・子育て支援金制度は、少子化対策を社会全体で支える新たな仕組みです。制度の目的や負担の実態を正しく理解し、自身の生活や社会保障との関係について考えることが重要といえるでしょう。

  • ※1
    ①児童手当の拡充(所得制限撤廃・支給期間を高校生まで延長)、②妊婦のための支援給付(妊娠時・出産時の経済的支援)、③出生後休業支援給付(両親の育児休業取得時の給付上乗せ)、④育児時短就業給付(時短勤務による賃金低下への支援)、⑤こども誰でも通園制度(保育所等に通っていない未就園児の定期的な利用支援)、⑥育児期間中の国民年金保険料免除(自営業者等の育児期の保険料負担軽減)
  • ※2
  • ※3
    公的医療保険制度とは、病気やけがに備えて国民全員が加入する制度で、会社員が加入する健康保険、自営業者等が加入する国民健康保険、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度などがあり、保険料を負担し合いながら、社会全体の医療費を支え合う仕組みである。
  • ※4
  • ※5
    こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度のQ&A「Q7. 支援金を払うのに、実質負担がゼロってどういう意味?」別窓で開く
    • *
      支援金による保険料が0.6兆円増加見込みに対し、2023年度から2026年度にかけての社会保障の歳出改革により0.6兆円の負担軽減が実施されている。
  • ※6
    健康保険料の内訳を給与明細に記載することは法令上義務付けられておらず、記載の有無や方法は各社の方針によって異なる。給与明細に記載がない場合であっても、社内資料等により別途案内されていることがある。

〈参考文献〉

(ニッセイ基礎研究所 乾 愛)

筆者紹介

乾 愛(いぬい めぐみ)

乾 愛(いぬい めぐみ)

株式会社ニッセイ基礎研究所、生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任
研究・専門分野:母子保健・不妊治療・月経随伴症状・プレコンセプションケア等

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